4つの観点からみる就労ビザが失効した場合の注意点〜雇用契約編〜

優秀な外国人と雇用契約を交わし、就労ビザ(在留資格)を申請して許可され、ようやく雇用できたからといって、それで安心していてはいけません。

 

就労ビザ(在留資格)には「5年、3年、1年又は3月」というような有効期間が定まっており、その期間が到達する前に、就労ビザ(在留資格)の更新をしなければならないからです。

 

更新を怠ると、就労ビザ(在留資格)は失効してしまいます。このような場合における雇用契約上の注意点を、確認してみましょう。

 

就労ビザ(在留資格)申請における雇用契約の注意点

就労ビザ(在留資格)失効時の雇用契約上の注意点を確認するには、まずは就労ビザ(在留資格)申請時における雇用契約をしっかりと確認しておく必要があります。

就労ビザ(在留資格)取得前に雇用契約を交わす

就労ビザ(在留資格)を申請するには、先に雇用契約を交わしておかなければなりません。その理由は、入管法上の手続きは、①雇用契約、②就労ビザ(在留資格)の申請という順番になっているからです。②の就労ビザ(在留資格)の申請では、必ず①の雇用契約に基づく書類を提出しなければなりません。

雇用時におけるリスクとは

通常、就労ビザ(在留資格)を持たない外国人と雇用契約を交わすということは、雇用主は以下のようなリスクを負うことになります。

 

 ㋐職場環境配慮義務に基づく、安全な職場の提供義務

 ㋑賃金支払義務

(労働基準法第2条2項、労働契約法第5条、労働安全衛生法第3条)

 

雇用契約は成立していますから、就労ビザ(在留資格)が取得できなかった場合でも、雇用主は職場を提供する義務が生じます(㋐)。しかし就労ビザ(在留資格)が取得できない以上、現実には日本国内で就労できません。

 

その結果、雇用主は、外国人の方から契約違反で訴えられる可能性も否定できないのです。契約上の労働力の提供という義務を果たせないのは、雇用主側の責任ということで、賃金相当額の損害賠償請求になる可能性があります(㋑)。

このように雇用する側は、外国人の労働の提供なくして賃金を払わざるを得ないというリスクを負う可能性が生じてしまうのです。

雇用時におけるリスク回避方法

 

就労ビザ(在留資格)持たない外国人と雇用契約を結ぶというリスクは、雇用契約時に想定しやすいのも事実です。そこで、就労ビザ(在留資格)を持たない外国人の方と雇用契約を交わすリスクを回避するために、一般的に取られている方法があります。

 

それは、雇用契約書に必ず「本雇用契約は、日本で就労可能となる在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として、効力を有する」という条項を入れておくのです。ここが一番肝心な注意点です。

 

つまり就労ビザ(在留資格)が取得できるまで、当該雇用契約書は効力を持ちません。また在留期間の更新がなされなければ、その時点で雇用契約は効力を失うのです。

 

したがって、先ほどの㋐職場環境配慮義務に基づく、安全な職場の提供義務や、㋑賃金支払義務は発生しなくなるので、雇用主は安心できます。

 

まとめ

雇用する外国人の就労ビザ(在留資格)が失効したときに備えて、雇用契約書に「本雇用契約は、日本で就労可能となる在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として、効力を有する」という条項を備えておくべきです。このことによって、雇用主が無用なリスクを抱えるリスクを回避できます。

 

しかし大事な注意点は、就労ビザ(在留資格)の有効期間の管理を外国人任せにするのではなく、雇用する側も一緒になって管理していくことではないでしょうか。いつ就労ビザの期間が終了するのか、いつからビザ(在留資格)の更新を申請することができるのかを、人事・総務の担当者が把握しておく必要があります。

 

またそれだけではなく、雇用する側が更新の申請に必要な書類などを積極的に用意し、ビザの更新申請がしやすい環境を整えることが大事です。

 

外国人を雇用する場合には、"不法就労者"にしない努力も必要になってくるのです。

 

 

行政書士齊藤学

千葉県行政書士会会員・葛南支部船橋幹事。 25年間の会社勤務経験を経て2016年に行政書士として独立。市民法務と国際業務を中心に活動し、ビザの申請取次業務にも従事。

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