4つの観点からみる就労ビザが失効した場合の注意点〜有給の取扱編〜

就労ビザには有効期間があります。もっとも一般的な「技術・人文知識・国際業務」の就労ビザを申請した場合であれば、「5年、3年、1年又は3月」のどれかになっているはずです。

 

この期間を超えて日本で就労するためには、就労ビザの更新申請が必要です。しかし更新申請を怠り、有効期間を過ぎてしまった場合には、就労ビザは失効し、その外国人の方は日本で就労することができなくなってしまうのです。

 

このような事態において、有給休暇をどのように取り扱わなければならないのか、その注意点を確認しておきましょう。

 

就労ビザと退職との関係

退職が就労ビザの失効の前なのか後なのか、その点を区別した上で、注意点を確認していきます。

就労ビザ失効による退職

就労ビザの有効滞在期間が過ぎてしまうと、不法滞在となってしまいますから、もはやその外国人を雇用し続けることができません。


やむを得ず、退職手続をせざるを得ないのです。ただし、「特別受理」というものが実務上、例外的に認められています。入管法上の根拠はありませんので、本当に例外的な措置です。


この「特別受理」が認められるための注意点は、以下の要件を持たす必要があるために、就労ビザの場合、申請が受理されるケースが相当限定されてしまうということです。


①在留期間が経過している
②確実にビザが許可となる事情があると思われること
③a)在留資格取得事由が発生してから60日以内になされた在留資格の申請またはビザの変更申請

b)ビザの更新申請であり、かつ申請が遅延した理由が天災、事故、疾病などの申請人
の責めに帰すことのできない事由によると認められること
c) その他申請の遅延の事情、その他の情状から入国管理局長が申請を受理して差し支
えないと認められること

就労ビザ失効前の退職

就労ビザを取得して働いている外国人が、会社を退職したからといって、即、就労ビザが失効することにはなりません。

 

「5年、3年、1年又は3月」という許可された有効期間内は、日本に滞在することができます。当然、退職後に再(転)就職することができます。

 

この場合の注意点は、再(転)就職後14日以内に入国管理局に「所属機関の変更の届け出」を提出しなければならないということです(雇用していた会社も、「離職した外国人労働者の氏名等」をハローワークに届け出る必要があります)。


しかし、退職した外国人が3か月以上も就労していないような状況がある場合には、就労ビザを失効させられることもありえます

 

退職に伴う有給休暇の取り扱いについて

日本人従業員と外国人従業員とで、有給休暇の扱いに違いがあるのかないのか、その点を先ず確認し、退職時における有給休暇の問題を整理しましょう。

有給休暇の扱いの原則と就労ビザ特有の注意点

大前提として、従業員が外国人であろうと日本人であろうと、有給休暇の取り扱いについて区別はありません。

しかし外国人従業員の場合には、必ず事前に取り決めておくべき注意点が一つあります。

それは、ビザ更新の手続きのために要する一日を有給休暇とするのかどうか、という点です。トラブルにならないよう最初の雇用契約の時点で、事前にしっかりと確認し合っておかなければなりません。

退職時の有給休暇の注意点

退職時の有給休暇の扱いについては、「有給休暇をすべて消化し終わった日をもって退職日とする」というのが、基本的な対応です。この点は日本人も外国人も、全く同じです。

 

しかし就労ビザの失効による退職の場合には、そのようなのんきな対応ができる事態ではありません。

 

このようなケースにおいては、消化できない有給休暇を買い取ることができます。有給休暇の買い上げは違法ですが、退職の場合に例外として認められています。ただ買い取ることは会社の義務ではありません。そのため、やはり事前にしっかりと契約書で確認し合っておくことが、注意点として重要なのです。

 

まとめ

退職によって、直ぐに就労ビザが失効するケースは多くはありません。しかし就労ビザが失効しての退職は、外国人が不法滞在となりますから、速やかに対応する必要があります。

 

有給休暇については、買い取りをすべき義務はありません。しかし今後外国人を雇用し続ける必要性があるのならば、そして「どうしても、当該外国人を採用したい」という採用理由書を書いたならば、会社としてできるだけの対応を取られることをお勧めします。

 

また、このような問題で頭を悩ませないよう、雇用契約の段階でしっかりと確認しておくことが注意点として挙げられます。せっかく申請して取得した就労ビザなのですから、外国人本人だけでなく、会社も就労ビザの有効期間の管理を怠らないよう、配慮していくことが必要ではないでしょうか。

 

 

行政書士齊藤学

千葉県行政書士会会員・葛南支部船橋幹事。 25年間の会社勤務経験を経て2016年に行政書士として独立。市民法務と国際業務を中心に活動し、ビザの申請取次業務にも従事。

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