新在留資格「特定技能」とその影響を元入管の岡村が解説します

入管法改正に伴い、「特定技能」新設

先日国会で入管法が改正され、それに伴って新しい在留資格「特定技能」が制定されます。

特定技能という新しい在留資格によって外国籍人材の就業に関する制約が画期的に緩和されます。本法改正は、日本の外国籍人材の就労問題が解決に向かう転換点として注目されていますが、この資料では、政府が海外人材に門戸を開くに踏み切った人材不足の現状と、日本における外国籍人材の就労について説明し、さらにこの新しい在留資格が日本の社会や世界にどのような影響を与えうるのかを解説します。

 

深刻化する日本の人手不足問題女性・シニアの活躍だけでは追いつかない現実

2030年に不足する労働力は644万人

 

 

日本は人手不足が深刻だと声高に叫ばれていますが、実際にはどれくらいの人手が不足するのでしょうか。

シンクタンクのパーソル総合研究所と中央大学が共同で発表している「労働市場の未来推計2030」によると、2030年にはなんと644万人の労働力が不足することが試算されています。

 

細かい計算方法等に関しては本資料では割愛しますが、 実質GDP 、消費者物価指数 、時間あたり所定内給与を基に労働需要を試算し、将来推計人口、時間あたり賃金 、消費者物価指数 、完全失業率 、大学・短期大学進学率 、有配偶率、出生率を基に労働供給を試算しています。

 

国が子育てと仕事の両立をサポートすることで生み出すことが出来る女性の労働力は約102万人分

労働力が不足している中で、注目を浴びているのが女性の社会進出です。

内閣府男女共同参画局が出しているデータによると、全体的な女性の労働力率は昭和50年から大幅に上昇してきており、特に20代中盤~30代前半での上昇率が顕著です。理由としては晩婚化や共働き家庭の増加が挙げられます。

 

 

それでもまだ結婚・出産を期に仕事を辞めざるを得ない女性が多いのが現実です。

実際、総務省が行っている労働力調査によると、現在女性の労働力率は25歳-29歳の88%をピークに下降し、35歳-39歳で一旦下げ止まり、その後は徐々に職場復帰する様子が伺えます。

 

つまり、一定数の女性が結婚・出産・子育てによって休職もしくは辞職し、子育てが落ち着くと再び働きだすという様子がデータから分かります。

パーソル研究所と中央大学のレポートでは、国が保育所などを充実させ、結婚子育て後も働き続けるための環境を整えることで、女性の労働力率がピーク時の88%のまま推移すると仮定し、最大102万人分の労働力が確保できると見込みを立てています。

 

約8割のシニアが70歳まで働きたい現実。163万人分の労働力をシニアが補う

最近は高水準の医療や充実した食生活のおかげもあり、60歳を超えても若くて元気な方が多いです。

 

内閣府が2014年に60歳以上の男女に対して行った「高齢者の日常生活に関する意識調査」では、80%のシニアが70歳まで働きたいと回答しており、そのうち42%が「働けるうちはいつまでも働きたい」と回答しています。

 

特に女性シニアは、60歳を超えると労働力率が一気に下がっているのが現実です。

 

同レポートによると、男性は64歳の労働力率80%が69歳まで持続することで22万人分の労働力を、女性は60歳〜69歳のうち70%の人が働くと仮定して141万人の労働力を確保できると述べています。

つまり、60歳~69歳の男女で163万人分の労働力は確保できると想定されます。

しかし、男性はともかく60歳を超える女性シニアの大多数が働いておらず、このギャップが埋まるには時間がかかりそうです。

 

自動化による生産性向上で298万人分の労働力を削減

昨今AIが人材需要を奪うという論争が加熱しています。AIに限らず、ITサービスが職場の生産性を高める例は既に実績として現れています。

例えば、人事労務業務を効率化するSmartHRや、勤怠管理などバックオフィス業務を効率化するジョブカン、人工知能で工場の検品作業の自動化に取り組むスタートアップ企業などがあります。

 

OECDが2016年に発表している「OECD諸国における職業の自動化リスク」という調査によれば、自動化可能性が70%を超える労働者は全体の7%に上るようです。

「労働市場の未来推計2030」は、このデータを引用し、2030年までにこの7%の労働者が担っている業務を自動化によって効率改善し、4.9%分の工数を削減することで298万人分の労働需要を減らす事ができる、と述べています。

 

しかしこの対策では、工数削減によって浮いた労働力を配置転換によって埋め合わせる必要があります。

以下業界別の労働需給のグラフを見てみましょう。

 

 

 

サービス業では、644万人の労働力不足が見込まれているうち6割強となる400万人の不足、また、介護を含む医療福祉でも187万人の不足が予想されています。

ホワイトカラーの特定産業で業務効率改善による人材余剰がおこる場合、それまでホワイトカラーとして働いてきた人たちが深刻な人材不足を抱えるサービス業や医療福祉業界で働くことを希望するかどうかが問題として残りそうです。

 

女性・シニアの活躍、自動化による業務効率の改善それでも労働力が足りない現実

ここまで紹介してきた通り、女性の社会進出やシニアの活用、業務効率の改善だけでは補いきれないほどの労働力不足が目前に迫っています。

そこで政府として、足りない分の労働力を海外から補う意図で、今回一定の専門性や経験を有する外国籍の人材に「特定技能」という新しい在留資格を与えることを決定しました。2025年までに最大34万人の受け入れを予定しています。

 

しかし、皆さんは普段の生活の中で、街で働く海外の方をよく目にされるのではないでしょうか。また、「技能実習」とは、どう異なるのでしょうか。

次の章では、日本国籍を持たない人々の就労についてお話します。

 

 

非日本国籍の人々の就労と技能実習制度の現状

コンビニや飲食店では就労ビザが下りない

まず、原則からお話すると、日本国籍を持たない場合日本で働く条件は非常に限られます。

配偶者が日本人だったり、永住権を持つ人など、身分に関する在留資格を持つ人は、日本での活動に制限がなく日本人と同様に働くことができます。

 

またそれ以外にも、高度人材と呼ばれるエンジニアやデザイナー、通訳・翻訳、外交官、教授など計17種類の頭脳労働に従事する場合は、就労が可能な在留資格を取得できます。

細かくお話すると頭脳労働かどうかの分類が難しいものもあるのですが、原則として、日本国籍を持たない人は非頭脳労働(単純労働という言葉を好んで使用したくないため、本資料では非頭脳労働という言葉を使用)に分類されるホテルのベッドメイキングや清掃、コンビニの店員などの労働力として来日することはできないのです。

 

街で見かける「働く外国籍の人」は留学生

都心では普段生活していると海外からやってきた人たちがコンビニでレジ打ちをしていたり、飲食店で働いていたりするのを頻繁に目にします。彼らは不法就労者なのでしょうか。実は、彼らは留学生なのです。

 

留学生は「留学」という在留資格を保持していますが、資格外活動許可というものを申請すると、1週間に28時間までアルバイトをすることができます。そして長期休暇期間中は許可時間が週に40時間まで延長されます。

 

しかし、留学生は留学を終えると母国へ帰らなくてはいけません。アルバイト先の店舗で仕事を覚えて、戦力になっていたとしても、飲食店や小売店では就労を許可する在留資格を取得することができないため、日本に居続けることができない制度になっています。

 

「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」

技能実習という制度の名前を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。

先に述べたとおり、現状日本では永住者や日本人の配偶者など、身分に紐づく在留資格を持つ人を除いて、頭脳労働以外の職種での就労は認められていません。

 

しかし、日本国籍でなくても、実質的に非頭脳労働に従事できる制度があります。

それが技能実習制度です。

技能実習制度とは非常に国際貢献色の強い制度です。技能実習生として海外から来日する人々は、日本の技術を学んで自国へ持ち帰り、自国の発展に寄与することを目的としています。

 

厚生労働省のHPによると



“外国人技能実習制度は、我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う「人づくり」に協力することを目的としております”

 

と定義されています。

 

基本理念として

 

「技能実習は、労働力の需給の調整の手段として行われてはならない」(法第3条第2項)

 

と定められていることからも、非頭脳労働に従事する労働力としてではなく、あくまで”先進国としての役割を果たすため”という位置づけの制度であることが分かります。

 

先に”実質的に非頭脳労働に従事できる”と記載したのは、本制度が現在では労働力の調整弁として機能している一面があるためです。

 

技能実習制度では本人の経済負担が大きい

 技能実習生が低賃金で働いていたり、「外国人だから最低賃金で安く雇える」と謳っているような悪質な業者が存在することもまた事実です。

 

一方、外国籍人材本人も「日本に行けば稼げる」といった、本来の趣旨から外れた意識が強いことも確かです。

しかし、技能実習制度は本人に大きな経済負担がかかります。彼らは日本に行く際に、研修費用や渡航費用として最低でも35万円程度、最大で100万円にも及ぶ費用を支払う必要があります。

国によって、技能実習生から徴収できる手数料の上限を設けられてはいるものの、実態としては様々な名目で上乗せされて徴収されています。(金額は国や業者によって異なります)

 

貯金がある人は貯金を切り崩し、貯金がない人は借金をして来日することになります。

その初期投資を超える報酬を回収できるかは受入企業の条件と期間次第ですが、借金を背負ったまま帰国する人も少なからず存在しています。

 

しかし、この文脈において、必ずしも業者(送り出し機関・管理団体)を責めることはできません。

技能実習制度は先に述べたように本来は人材紹介制度ではなく、また営利を目的としてはいけないこともあり、構造的に本人から費用を徴収せざるを得ない上に、日本語の教育や書類の作成、渡航後のケアなどには相応の負担がかかります。また、多くの送り出し機関では寮を設置し、住み込みで研修を行っていますので、そうした費用も必要です。

 

メディアでは悪質業者がボロ儲けしているような報道が多いですし、必要以上の費用を徴収している悪徳な業者も存在していますが、実際は、真摯に取り組まれている業者も多いのです。しかし、どれだけ誠実に運営しても本人からの費用徴収は現在の制度では避けることができず、その費用は非先進国の人材にとっては借金をせざるを得ないほど高額なのです。

 

新在留資格「特定技能」とは

今回新設される特定技能ビザは、ここまで述べてきた問題点を解決するものになると私は期待しています。当然、懸念点や課題もセットで考えなくてはなりませんので、後述します。

 

「特定技能」とは、日本国籍を持たない人がこれまでよりもより広い業種で働けるようになる”就労が可能な”在留資格です。就労可能な業種に関しては現在も協議中ですが、最大14業種で検討されており、これまで一貫して就労不可だった非頭脳労働を含みます。

 

特定技能は1号と2号があり、それぞれ累計の在留可能期限は5年とされています。

累計となっているのは、実際の在留期限は原則1年で交付される予定で、1年ごとに更新申請が必要になると想定されます。

 

1号を取得して満期の5年が経過すると、2号の申請ができます。2号の在留資格を取得するには、各省庁が定めた試験に合格する必要があります。

 

そして、この特定技能1号を取得するには日本語能力と受け入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識または経験を有することが求められています。

 

日本語能力に関しては、日本語能力検定試験の4級程度が必要です。

日本語能力検定試験は1級から5級まであり、1級にいくほど難しくなります。4級は日常の簡単な会話が理解できる程度とされており、300時間程度の学習が必要と言われているレベルです。

 

受け入れ分野で即戦力として活動するために必要な知識に関しては、各省庁が定める試験などで認可を得る必要があります。

 

一方で、技能実習2号を修了した人、つまり技能実習を5年間行い帰国した人に関しては上述の条件を免除されます。

就労可能業種が拡大

私は、いくつかの点で「特定技能」は画期的で、現在発生している矛盾や問題点を解決する糸口になるのではないか、と期待しています。

 

一つ目は、就労が可能な在留資格として、非頭脳労働への就労を許可するという点です。

 

技能実習制度は、本来日本の技術を海外に移転するという先進国としての役割を果たす文脈で存在している制度です。従って、ホテルのベッドメイキングやコンビニのレジ打ちなど、技術移転が必要ではない職種での受け入れは不可能でした。

 

しかし、特定技能は国際貢献とは一線を画した、明確に人材不足を補うための在留資格であるため、特に深刻な人材不足に悩むサービス業界も検討のテーブルにのっています。

日本国籍を持たない人に、非頭脳労働の門戸を開放するというのは非常に大きな転換点です。

 

同一業界内であれば転職が可能に

2点目として、「特定技能」では転職ができることが条件に盛り込まれていることも見逃せません。

技能実習では原則として転職が認められておらず、本人の意思で実習場所を変えたりすることはできません。

つまり、職場でいじめにあったり、違法な低賃金で働かされてしまうケースでも、職場を変えることが難しく、結果として失踪が発生してしまったり、帰国を余儀なくされたりと問題が発生しています。

 

転職が認められるようになることで、職場で不当な扱いを受けた場合に逃げ道ができます。

一方で、職場で不当な扱いを受けていない場合でも、日本で仕事をするというのは多くの国の人達にとっては大変なことですから、安易な転職による定着問題が発生する可能性が高く、対策が必要です。

 

特定技能での雇入れでは本人の経済的負担が軽減するか

3点目、特定技能はその構造的に人材本人の経済的な負担をへらすことが出来るのではと考えています。

 

前述のように、技能実習制度で実習生は来日するために35万円~100万円程度の研修費・渡航費を支払う必要がありました。これは、技能実習という制度上、現地で研修や送り出し業務を行う送り出し機関を運営するため、構造上仕方がない費用だと説明をしました。

 

一方で、特定技能は従来の就労ビザに近い形であるため、構造がよりシンプルになります。

企業が募集をかけて人材が応募をし、要件を満たしていれば採用をすることができます。

この場合の人材の経済負担は0です。

 

また、間に仲介会社が介在する場合でも、仲介会社は企業から紹介料を貰えばよく、日本で日本人が転職活動をするのと同じ構造が実現可能です。

このスキームであれば、就労を希望する人材が重い経済負荷を負わされる必要はありません。

 

給与は日本人と同水準での雇用が必要

また、特定技能で海外人材を雇用する場合、給与は日本人と同水準で雇用をする必要があります。勘違いされがちですが、実はこの点に関しては技能実習も同様です。当然ですが、日本国籍でなければ安く雇い入れていいわけではないのです。

 

メディアでよく技能実習生の低賃金が話題になりますが、これは明確に違反行為であって、低賃金で雇うことを認めているわけではありません。

 

また、日本人と同水準というのは最低賃金で雇えるというわけでもありません。

日本人と同様の作業を行う場合、その職場にいる日本人スタッフと同水準の給与を支払う必要があるということを意味します。

例えば、レジ打ち業務で、日本人スタッフの給与が時給1,000円だとすると、どんな国籍であろうと1,000円で雇用する必要があります。

前述の来日前に送り出し機関に支払う必要がある費用がなくなり、給与水準に関して従来より厳しく運用されることで、「借金を背負って来日」「安く買い叩かれる」といった問題が改善されることが期待されます。

 

海外人材の流入が招く懸念点

ここまで、新しい在留資格「特定技能」がもたらすメリットを中心に説明してきました。

しかし、海外から人材がたくさんやってくることでの懸念点も存在しています。懸念点に関しては概ね以下4点にまとめられると考えています。

 

日本人の雇用への影響

海外人材受入に関して最もよく聞く反対意見が「日本人の雇用を奪うのではないか」というものです。もしくは、海外人材が流入すると賃金が下がる、というものです。

 

私は海外人材の流入が日本人の雇用状況に与える影響は非常に限定的だろうと考えています。

以下のデータをご覧ください。こちらは、厚生労働省の一般職業紹介状況(平成30年4月分)の職業別一般職業紹介状況から抜粋した、今回受け入れが想定されている業界別の有効求人倍率のデータです。

 

 

今回受け入れが検討されている業界では軒並み有効求人倍率が高くなっており、検討に入っている14業種の平均有効求人倍率*1は2.5倍です。特に建設・採掘の職業では4.27倍、サービスの職業では3.23倍となっております。ちなみに全体の有効求人倍率は1.35倍です。

一方で、事務的職業では0.46倍となっております。

 

つまり、労働力需要の中でも明らかに不人気な業界が存在しており、今回特定技能で受け入れ検討されている業界はそうした”日本人から不人気な”業種に限定されているのです。

また、前述の通り特定技能では転職が認められていますが、許可が下りた業界外への転職は認められない予定です。

これはあくまで日本人の雇用を奪わないための配慮だと言えるでしょう。

 

結論として、既に求人を出しても日本人が集まらない業界に限定して受け入れを実施する予定であるため、海外人材の流入で日本人の雇用が失われることは少ないのではないかと言うのが私の見解です。

 

*1一般職業紹介状況は業界別ではなく職業別であり、有効求人数、有効求職数の実数を加味すると現実に則さないため、14業種の倍率を平均したもの

*2一般職業紹介状況は業界別ではなく職業別であるため、受け入れ業種に近い職業を以下のように分類

清掃の職種:宿泊業とビルクリーニング、

農林漁業;農業

生産工程の職業;飲食料品製造業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業、造船業

建設・採掘の職業;建設業

機械整備・修理の職業:自動車整備業、航空業(空港グランドハンドリング・航空機整備)

介護サービスの 職業:介護

飲食物調理の職業:外食

接客・給仕の職業:外食

 

犯罪の増加

また、外国人が増える=治安が悪化するという話もよく耳にします。

これに関して、明確に間違いだと思っています。

以下のグラフは警察庁刑事局組織犯罪対策部国際捜査管理官が出している来日外国人犯罪の検挙状況から抜粋したグラフです。

海外から来日する人の数は年々増加しているのに対して、検挙数、検挙人員ともに横ばい、むしろピーク時より減ってきています。

つまり、外国人が増える=犯罪が増加する、は現在日本では起こっていないと言えます。

 

保険制度の悪用

保険制度の悪用という文脈で懸念されることは、外国籍の人でも3ヶ月以上の長期滞在をする場合、一部の在留資格を除いて国民健康保険への加入が義務付けられますが、この保険の不正利用が増え、医療費の負担が増大するという説です。

 

保険制度の悪用に関しては論点が3つあります。

1つ目はなりすましによるもの、2つ目はメディカル・ツーリズムに関するもの、3つめは扶養家族の問題です。

 

なりすましは本人確認の厳格化で対応

1つ目はなりすましによる医療費のタダ乗り問題です。

 

なりすましとはつまり、他人の健康保険証を使って本人ではなく家族や知り合いが3割負担で医療を受けることを指しています。

現状、健康保険証には顔写真がなく、病院の受付で本人確認をするのが困難なため問題となっています。

 

海外から日本に入国する人が増えれば増えるほど、その知人友人は増えますので、旅行などの短期滞在の在留資格で入国してきた人たちが医療費のタダ乗りをするという懸念があります。

医療費の増大は国にとって死活問題であるため、これは対策が必要です。

 

この問題に関して、政府は既に保険証と一緒に写真付きの在留カードの提示を求める方針を固めたと発表しています。これで少なくとも従来よりは悪用がしづらくなると思われます。

 

特定技能の新設によるメディカル・ツーリズムの懸念

メディカルツーリズムとは、医療目的で国外に渡航することを指します。

通常、メディカルツーリズムでは医療費を100%負担し、国外のより良質な医療を求めます。この場合は何も問題ありません。

 

ただ、一部在留資格を不正に取得し、健康保険を使って医療を受ける人が存在しており、これが問題となっております。

 

例えば、「経営管理」という日本で起業する人向けの在留資格がありますが、この資格は資本金500万円を用意すればペーパーカンパニーであっても取得が可能です。

 

また、資本金は登記時に必要ではあるものの、無くなるわけではないため、一部の国ではこの資本金を貸し出す専門の業者が存在し、在留資格を不正に取得する手助けをしているケースがあるようです。これは非常に問題があると感じますし、対策が必要です。

 

一方で、特定技能はお金を借りてペーパーカンパニーを作れば比較的簡単に不正が成立する経営管理のような在留資格とは異なり、日本語能力を証明する資格を取り、受け入れ業界が定めるテストに通過し、更に受入企業をなければ在留資格が下りないため、既に存在している他の在留資格からの条件緩和ではありません。

従って、医療を受けるためだけに在留資格を申請するという可能性は低いでしょう。

国民健康保険は外国籍でも家族を扶養に入れることが可能

前述のように、医療目的のために特定技能の在留資格を取得する人はほぼいないだろうと考えていますが、現状の保険制度には一点盲点があります。それが扶養家族の問題です。

 

日本の健康保険は、扶養家族に対しても適用されます。兄弟姉妹、配偶者、子、孫、父母など三親等内の親族に関しては、同居が扶養適用の条件に入っておらず、母国に住んでいても申請をすれば保険の対象内になります。

 

扶養対象には収入制限があり、書類を提出する必要もありますが、書類の偽造や捏造があった場合に実態を確認するのは困難ですし、非先進国の場合は年間130万円という基準は実質フリーパスでしょう。

つまり海外人材の家族は制度上、日本の税収を増やすことなく来日して日本の保険制度を享受することが出来てしまいます。

 

また、日本で就労している外国籍人材本人も、扶養している家族の分税金が控除される点においても、日本人と同様なのも問題です。

 

誤解されがちですが日本国籍を持っていない人たちも日本人と同様、日本に税金を納めています。従って、正規の労働者が健康保険を利用して医療機関にかかることには何ら問題はなく、不正利用者以外の部分では原則税収は増えるのですが、扶養家族の認定基準が甘いと所得税の控除が発生し、被扶養者の人数によっては所得税が非課税になるケースもあります。

 

実は、日本国外に居住する控除対象扶養親族に関しては明らかに基準が甘いことが調査で分かっています。2014年の会計検査院の調査では、2012年の所得税の確定申告において扶養控除の合計申告額が300万円以上で且つ国外在住の扶養親族を申告している1296人をサンプルとして検査しています。

 

報告によれば、国外の扶養親族の人数の平均は10.2人で、なかには26人以上も申告しているケースがあるなど、明らかに扶養家族の認定が甘いことが露呈されています。ちなみに、2012年の納税者全体の扶養親族の平均人数は1.34人です。その結果、68.8%の所得税が非課税になっていた、ということですので問題は深刻です。

 

その後、扶養家族の認定には送金の実態を示す書類の提示が必要になるなど厳格化されていますので、多少の改善は期待できますが、最新の実態はわかりません。

 

尚、1296人のサンプルの内、扶養者が外国籍だと確認できたのは542人とのことですので海外人材にのみ発生している問題というわけでもありませんが、構造的に外国籍人材に発生しやすい問題であることは事実であるため、扶養家族と控除の問題は受け入れ強化においては無視できない論点でしょう。

 

出典;会計検査院:日本国外に居住する控除対象扶養親族に係る扶養控除の適用状況等について(2014年)

 

失踪問題

度重なるメディアの報道で、外国籍労働者の失踪問題に関心が強い方も多いでしょう。

これは、技能実習制度最大の問題とも言える部分です。政府の発表では、失踪理由の67.2%が低賃金、12.6%が指導が厳しいことを理由としています。何故そうした理由で失踪してしまうのか、これを解説します。

 

法外な低賃金から逃げ出す術がない

低賃金に関してですが、技能実習生は前述のように来日前に経済的な負担を背負っており、借金をしている人も少なくありません。

そんな中で悪質な受入企業に最低賃金を下回る法外な賃金で雇用された場合、彼らは在留期間が終わり帰国する事になった際、家族を援助するどころか借金を背負って帰国することになります。

 

また、技能実習制度では問題があった場合でもなかなか受入企業を変えることができません。

 

本来、問題があった際には監理団体がトラブル処理をすることが定められています。

しかし、問題が発生した際にトラブルを嫌って”本人の意志で途中帰国”という体で強制帰国させる監理団体が少なからず存在しています。(私が見聞きしたケースだけでも相当数あります)

監理団体に窮状を訴えると、訳も分からず書類にサインをさせられ強制帰国させられてしまうのです。

 

そのような情報は外国籍労働者同士のネットワークですぐに出回ります。失踪をそそのかし、その後の日本での仕事を仲介するブローカーも存在しています。このように、技能実習制度の失踪問題は、制度それ自体が構造的に孕む非常に根の深い問題なのです。

特定技能は転職が可能。来日前に経済負担を負わせない仕組みが必要。

新設される特定技能は、既に述べたように転職が可能なので逃げ道があり、善良な企業が参入することで人材本人の来日前の経済負担を減らすことができるのではと期待しています。

 

12月10日に弊社が発表したモデルスキームでは、受入企業がone visaに手数料を支払い、one visaは日本語や業務に関するトレーニングを人材に無償で提供します。

 

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このような形であれば、人材は借金を背負う必要がなくなりますし、今回の在留資格で労働力の中心として期待されているのは物価が比較的安価な非先進国が多いため、現地で十分な給与を支払って教育施設を運営したとしても、経済的に誰にもしわ寄せが行かない仕組みが構築できると考えています。

 

このように、技能実習の形式を引き継ぐのではなく、従来の就労ビザに近い形の制度づくりになると見られていますので、失踪問題は大幅に改善されるのではないか、と見ています。

 

当然ですが、これらに加えて弱い立場にある外国籍人材を守る第三者のサポートは必須です。

認定支援機関がその役割を担うと見られていますが、実際の運用を通して改善を進めていく必要はあるでしょう。

 

「特定技能」は人材不足に悩む業界の救世主となりうるのか

外食やホテルなどサービス業界や、介護業界など人材不足に苦しむ企業にとって、これまで留学生のアルバイトなど限定的にしか活用できなかった海外人材を全面的に受け入れ可能になることは非常に大きなメリットです。

一方で、海外人材受け入れは魔法の杖ではなく、受け入れ側にも相応の覚悟が必要です。

 

不慣れな土地での生活は想像以上にストレスがかかるものです。

食事が口にあわないかもしれませんし、家族に会いたくなるかもしれません。

 

来日前に日本語は勉強しますが、それでも言語の壁は大きいものです。

これは求められる日本語レベルがN4だから、という単純なものではありません。

日本人に置き換えるなら、仮にTOEIC900点レベルの人でもネイティブに混ざれば会話についていくのは大変ですし、言いたいことが言えないストレスは尋常ではなく孤独を感じるものです。

 

そうした環境のなかで、より長く楽しく働いてもらえるよう、一人一人のメンタルに気を配る必要があります。間違っても罵倒したりせず、忍耐強く職場の環境に慣れて貰うことが重要です。

 

特に特定技能では人材に転職が認められていることもあり、劣悪な職場環境に人は集まりません。噂はすぐに出回りますので、過去に従業員へのいじめが発覚した職場や、法外な低賃金で働かせたことが発覚した企業には誰も行きたがりません。

 

「海外から人材を受け入れ」という表現から、あたかも日本が人材を選ぶような立場と錯覚しますが、働く環境や待遇をしっかりしなければ、たとえ新しい在留資格を作って条件を緩和したところで人は集まらなくなってしまいます。最近は新興国の伸びが凄まじく、日本以外にも働き口が選べるのが現状です。

 

今はまだ、過去数十年で築き上げた車や家電など日本製品のブランド知名度や、サブカルなどのソフトパワーで日本のことが好き、日本で働きたいという人は一定数いるかもしれません。

 

一方で、ベトナムのように一部の国では技能実習経験者が国へ戻り、残念ながら悪い評判が立ってしまっているのもまた事実です。(本記事の主題からそれるため、詳細は割愛します)

 

門戸を開けば何もせずとも向こうからやってきてくれる、という時代はそう長くは続かないと私は思います。

 

当たり前のことですが、受け入れる企業が国籍関係なく、よりよい職場づくりを実現することで、日本が魅力的で誰もが行きたい国となり、本当の意味で世界から国境が消え、みんなが幸せになれる世界が実現することを心から願っております。

弊社も微力ながら、その下支えが出来るようなサービスを提供してまいります。

 

株式会社one visa 代表取締役社長

岡村アルベルト

 

 

株式会社one visa 代表取締役 岡村アルベルト

南米ペルー産まれ。 日本人とペルー人のハーフで小学校の時に来日、ビザで困る。 日本人に帰化したタイミングでビザの問題を無くす為に起業を決意。 大学を卒業後に入国管理局の業務を委託されている民間企業に就職。東京入国管理局の窓口にて現場責任者として年間2万件のビザに携わる。 その後、「世界から国境を無くす」をビジョンに株式会社 one visa を設立。

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