4つの観点からみる就労ビザが失効した場合の注意点〜給与編〜

就労ビザ(在留資格)を申請し許可され、ようやく雇用できた外国人なのに、就労ビザ(在留資格)の管理を任せきりにしていたら、いつのまにか就労ビザ(在留資格)の有効期間が過ぎてしまったということは、少なからず起こり得ます。

 

仕事熱心な外国人であればあるほど、日本での仕事に専念するあまりに、ついうっかりビザの更新を忘れるということは起こり得るのです。就労ビザ(在留資格)の更新申請を怠ると、就労ビザ(在留資格)は失効してしまいます。このような場合における、給与に関する注意点を、確認してみましょう。

 

就労ビザ(在留資格)が失効してしまうということ

就労ビザ(在留資格)の有効期間が過ぎてしまうということは、当該外国人は、不法残留者ということになります。

 

しかし天災、事故、疾病などの事情が認められるような場合の「特別受理」や、日本人や永住者と密接な身分関係にあり、日本への定住性や人道上の在留の必要性がある「在留特別許可」が認められれば、正規の在留資格者となることができます。どちらにしても、申請している間は正規の在留資格者ではありません。つまり、就労はできないのです。

就労ビザの有効期間内での労働に対する給与の支払い

就労ビザ(在留資格)の有効期間が過ぎてしまったことに気付いた後に、給与の支給日を迎えたとしましょう。雇用契約書には、「本雇用契約は、日本で就労可能となる在留資格の許可及び在留期間の更新を条件として、効力を有する」という条項を備えています。


このような状況で、当該外国人に給与を支給しても問題がないのでしょうか。そもそも既に雇用契約はその効果を失っているのですから、給与を支払う必要があるのでしょうか。

 

この問いに対する答えは「YES」です。給与の支給日が、就労ビザの有効期間を過ぎてしまっていても、就労ビザの有効期間内に働いた分の給与は必ず支払わなければなりません。このようなケースでは、不法残留者に対して賃金を支払ったということになりますが、だからといって、即、不法就労助長罪に問われる可能性は低いと思われます。就労ビザの有効期間を過ぎたのが、本当にうっかりミスのような事情であればという前提です。

 

ただし、就労ビザ(在留資格)が失効したことに気付いたら、すみやかに当該外国人を解雇しなければなりません。

就労ビザの有効期間外での労働に対する給与の支払い

外国人が、就労ビザ(在留資格)が失効したことに気付かずに労働を提供し、雇用する側もそのことに気付いていなかったときは、どうなるのでしょうか。

 

この場合でも、雇用主には当該外国人に労働した分の賃金を支払う義務があります。逆に支払わなければ労働基準法第24条違反に問われます。

 

しかしこのようなケースでは、不法残留者に対して労働をさせ、更に賃金を支払ったということになり、余計に不法就労助長罪に問われるか心配になるところです。

 

このような場合においても、不法就労助長罪に問われる可能性は低いと思われます。不法残留者と認識して給与を払い続けているような場合でなければ、大丈夫です。ただし、就労ビザ(在留資格)が失効したことに気付いたら、すぐに当該外国人を解雇しなければなりません。

 

まとめ

就労ビザ(在留資格)で雇用している外国人に対しては、労働の対価としての賃金を全額支払わなければなりません。就労ビザ(在留資格)の有効期間内の労働はもちろんのこと、就労ビザ(在留資格)の有効期間を過ぎた後の労働であっても、支払義務を免れることはありません。

 

就労ビザ(在留資格)が失効した以上は、当該外国人は不法残留者です。だからといって、労働の対価である給与を支払わなくてよいとする考えは違法です。雇用主は労働基準法にしたがって給与を支払うべき義務を負います。当然、不法残留者と知って雇用し続け、給与を払っていれば、不法就労助長罪に問われる可能性はあります。

 

したがって、就労ビザ(在留資格)が有効期間を過ぎていると知ったならば、直ぐに解雇するようにすべきでしょう。

 

外国人を雇用するということは、日本人を雇用するのとは異なる配慮が必要です。外国人は、日本人のように「いる」ことが前提ではありません。「いる」ためには、就労ビザ(在留資格)が必須条件だということを再確認しましょう。そして、就労ビザ(在留資格)の有効期間を雇い主も外国人と一緒になって管理・対応していく必要があります。

 

 

行政書士齊藤学

千葉県行政書士会会員・葛南支部船橋幹事。 25年間の会社勤務経験を経て2016年に行政書士として独立。市民法務と国際業務を中心に活動し、ビザの申請取次業務にも従事。

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