日本では、徐々に労働人口が減少しています。
そうなれば、自ずと外国人労働者の手を借りることになります。

しかし、安易に外国人の雇用を認めると、治安が悪化したり、日本人労働者の職場を奪ったりすることになりかねません。

そこで、外国人を雇用する際には、厳密なルール、手続きが必要になってきます。
ここでは、外国人を雇用する際に必要な手続きをご説明します。

 

就労が可能な在留資格とは?

外国人が日本に来て、就労するためには、就労の為に「在留資格」を取得する必要があります。
「在留資格」には29種類があり、その中には就労できるものがあります。

その在留資格は、
「外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能実習」
の19種類です。

また、家族関係の「在留資格」である“永住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等・定住者”の4種類は、身分・地位に基づく在留資格で、活動に制限がなく就労することができます。

 

外国人雇用の流れ

日本の企業が外国人を雇用する流れは、次のようになります。

 

募集と確認事項

まず、母国にいる外国人を募集します。この方法については、後で詳しくご説明します。

そして、応募があった外国人に対して次に行うことは、学歴の確認です。
日本では、専門性のない単純労働での就労は認められず、大学や専門学校で習得した専門知識を活かす分野での就労が基本です。

従って、大学や専門学校の証明書を確認する必要があります。
方法としては、卒業証明書や成績証明書のコピーを郵送やメールで送ってもらい、翻訳した上で、募集した部門と合致しているかを確認するというやり方です。


一方で、大学や専門学校を卒業していなくても、採用する分野の仕事を10年以上続けていれば、技術・人文知識・国際業務の在留資格が取得できます。

また、通訳や語学教師であれば、3年以上の実務経験で取得できます。
この場合、過去の勤務先がわかる在職証明書や職歴などの資料を送ってもらうことになります。(※出典 法務省ホームページ:技術・人文知識・国際業務

面接

学歴、職歴などをクリアすれば、実際に会って面接をすることになります。
ただ、外国に住んでいますから、面接の方法は限られてきます。

方法としては、現地に企業の支店の職員が面接を行ったり、応募が多数であれば、日本から担当者が現地に赴いて、面接を行ったりするなどの方法があります。

採用が決まったら

採用が決まったら、外国人との間で「労働条件通知書(ない場合は『雇用契約書』」を作成しなければなりません。
これは、認定申請する場合に必要な資料になりますから、申請前に行います。
そして最後に、認定申請を行います。

外国人雇用の助成金について

外国人を正規社員として雇用し、「雇用管理改善計画」に1年以上取り組めば、助成金が交付されます。2019年に作られた制度で、1人あたり最大月額4万円×3カ月分が支給されます。
他にも、「人材確保等支援助成金」などがあります。(※参考URL : 厚生労働省 人材確保等支援助成金

 

外国籍人材の募集方法

募集方法ですが、外国の人材を採用することになりますから、外国人向けに募集をし、実際に面接を行う必要があります。
しかし、言葉の問題や渡航にかかる費用の問題などがあり、なかなか簡単には行きません。

そこで、比較的手軽な方法として、日本での就職を希望している外国人を紹介するコンサルタント会社に登録するというやり方があります。
日本で働きたい外国人は多数いますから、その外国人と日本の企業とを結び付けてくれる役割を果たしてくれるはずです。

また、フェイスブックやツイッターなどのSNS(ソーシャルネットワークサービス)によって、海外にいる人材に広くアピールする方法もあります。

 

採用決定後の雇用契約について

採用が決まったら、会社と外国人と間で、雇用契約を結ぶ必要があります。
雇用契約を締結する意味は、3つあります。

まず1つ目は、雇用後のトラブルを回避するためです。
日本の商習慣は、決してスタンダードではありません。外国人が生まれ育った国の商習慣と違う場合、トラブルが発生する可能性があります。

そこで、あらかじめ労働に関する細かなルールを決めて、書面に残すことが必要になってくるのです。


2つ目は、外国人に安心感を与えるためです。
海外の多くの国々では、権利、義務をきちんと決めておく習慣があります。
そこで、雇用に関するルールを前もって決めておけば、日本で働いてもらう外国人に安心感を与える役割を果たすことになるのです。


3つ目は、会社のリスク回避のためです。
会社と外国人労働者との間でもしトラブルになり、解雇せざるを得ない場合、あらかじめ契約書でその規定を決めておけば、外国人が会社を訴える可能性が低くなり、リスクが回避できるのです。

特に、母国にいる外国人を採用する場合や留学生を採用する場合は、日本の会社で働いた経験がありませんから、契約内容を十分に説明して、納得してもらった上で、契約を締結する必要があります。

雇用契約書作成時の注意点

雇用契約書を作成する際には、日本語の書面と併せて、母国語の書面も準備する必要があります。
なお、雇用契約の基本は、契約期間、就業時間、給与・賞与、解雇理由などですが、これらの事項を外国人労働者に示し、合意の上で「労働条件通知書」を作成することになります。

外国人を雇用する際には、厚生労働省から「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が講ずるべき必要な措置」という指針が提示されています。
例えば、適正な労働条件の確保として、日本人と同等の待遇を行う、労働条件を明示する、日本人と同等の賃金を支払う等です。  

この時、休息・休憩・休日、有給休暇、社会保険に関することも決めておく必要がありますが、このような細かな事柄については、別に「就業規則」を作成することになります。

 

入社後の雇用管理について

日本には、様々な在留資格で就労し、それぞれの期間で在留する外国人がいます。
そこで、それらの外国人の適正な在留の確保のために、外国人の在留状況を一元的に把握する必要が出てきました。

そこで、2012年(平成24年)7月から始まった在留管理制度により、対象者には、住所、氏名などの「基本的身分事項」、在留資格、在留期間が記載され、顔写真が添付されている「在留カード」が交付されるようになりました。

外国人を雇用する会社は、この「在留カード」を確認した上で、管轄するハローワークに届け出をしなければなりません。
外国人労働者の雇入、離職の際には、該当する外国人の氏名・在留資格などをハローワークに届けることになります。
在留資格が「外交」または「公用」の人、さらに「特別永住者」は、届け出る必要はありません。

なお、この届出を怠った場合には、その事業者に30万円以下の罰金が科されます。
届け出には、2通りあります。

「雇用保険」の被保険者となる外国人労働者の場合

まず、「雇用保険」の被保険者となる外国人労働者の場合は、以下の届出事項を事務所管轄のハローワークに届け出ます。

届出期限は、雇い入れが翌月10日まで、離職が離職日翌日から10日以内です。

 《届出事項》
  氏名
  在留資格
  在留期間
  生年月日
  性別
  国籍
  地域
  資格外活動許可の有無
  雇い入れに係る事業所の名称・所在地
  賃金その他の雇用状況に関する事項
  住所
  離職に係る事業所の名称・所在地

「雇用保険」の被保険者の対象でない外国人労働者の場合

次に、「雇用保険」の被保険者の対象でない外国人労働者の場合は、以下の届出事項について、該当する外国人が勤務する事業施設(店舗、工場など)を管轄するハローワークに届け出ます。

届出期限は、雇い入れ・離職ともに、翌日末までです。

 《届出事項》
  氏名
  在留資格
  在留期間
  生年月日
  性別
  国籍
  地域
  資格外活動許可の有無(雇い入れ時のみ)

 

技能実習制度の利用について

会社での雇用ではなく、技能実習生として、日本に在留する外国人も増えてきました。
技能実習制度」とは、外国人が在留資格「技能実習」で日本に在留する際に、行う実習に対して報酬を支払う制度のことです。

なおこの制度には、会社などの実習実施機関が海外の会社などの職員を受け入れて、技能実習を実施する「企業単独型」と、商工会などの営利を目的としない監理団体が技能実習生を受け入れて、傘下の実習実施機関で実習を行う「団体監理型」に分けられます。

技能実習生は、日本に入国後、まず日本語の教育や実習生自身が法的な保護を受けるために必要な講義を受けます。
その後受け入れ先の機関に雇用され、現場で機能を習得するための活動を開始します(「技能実習1号」1年間)。

その後、習得した技能が一定水準に達すると、「技能実習2号」の在留資格への変更が許可され、最長3年間の実習が可能となります。
さらに、「技能実習3号」の在留資格を得ると、優良性が認められる監理団体や実習実施機関に限り、最長5年間技能実習が認められます。

 

外国人雇用の注意点

外国人を雇用する際に、最も注意したいことは、不法就労です。
不法就労には、3通りあります。

不法滞在者

まず、「不法滞在者」です。
外国人が日本に観光目的で滞在する場合、15日以内であれば、旅券のみで入国、滞在ができます。

また、90日以内であれば、短期滞在ビザがあれば可能です。
しかし、この日数を超えても、日本から出国せず、そのまま滞在し続けた場合には、「不法滞在者」となり、働くことで、不法就労となるのです。

就労ビザの不携帯

2つ目は、就労ビザを持たずに働いた場合です。

認められた範囲外での就労

3つ目は、就労ビザを持っていても、認められている仕事の内容の範囲を超えて働いた場合、あるいは職種を変えたにもかかわらず、在留資格変更許可や資格外活動許可の手続きを行っていなければ、不法就労になります。

不法就労が発覚した場合の罰則について

不法就労が発覚した場合、「不法就労助長罪」によって、雇用主は「3年以下の懲役または300万円以下の罰金、もしくはその両方」が科されます。

会社の人事関係者は、外国人を雇用する際の「在留資格」の確認はもちろんのこと、定期的に「在留資格」の期間なども確認する必要があります。
なお、外国人の雇用について不明な点などがあれば、ハローワークや外国人雇用センターに相談をしましょう。

まとめ

日本では、労働人口が減少し、今後ますます外国人労働者の需要が見込まれます。
不法就労となれば、会社や外国人本人にペナルティーが科されることになりますので、雇用の流れ、ルールを理解し、遵守する必要があります。