近年、日本に対する関心の高まりに加え、東京オリンピックの影響などで、日本を訪れる外国人の数が大幅に増えています。
それに伴い、日本で就業を希望する外国人も、政府の外国人雇用対策とも相まって増加傾向にあります。

こうした中で、外国人を雇用する際、注意しなければならない点も多く見受けられます。
日本人を雇用する場合とは違った注意が必要です。以下、外国人雇用上の注意事項をいくつか挙げておきます。

 

外国人雇用における法令上の注意事項

外国人の雇用に際して関係する法律は入国管理法(以下、「入管法」)です。
次に労働基準法や雇用保険、労災保険、健康保険、年金保険といった、医療・年金保険関連法です。

外国人雇用と社会保険の関係についてはこちら
外国人雇用と労働保険の関係についてはこちら

外国人雇用と入管法

入管法では、在留目的により、29種類の在留資格が規定されています。
これらを就労や雇用の面から大まかに分けると、以下のようになります。

就労が認められる在留資格

在留目的の範囲内、かつ在留期間内で認められるものです。
違反すると退去強制処分、不法就労助長罪などの罰則が科せられるので、細心の注意が必要です。

主な資格に「経営・管理」、「技術・人文知識・国際業務」、「企業内転勤」などがあります。

就労が認められない在留資格

原則、就労が認められない在留資格として、「文化活動」「短期滞在」「留学」「研修」「家族滞在」などがあります。

これらの在留資格は、原則就労が認められませんが、「資格外活動の許可」を得ることで、制限付きで就労が可能になる場合があります。

就労活動に制限がない在留資格

在留資格による制限がなく、職種、条件面でも制限のないものです。
主な資格に「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」などです。

内容により就労の可否が判断される在留資格

在留資格のうち、特定活動がこれに該当します。
アルバイトをしながら海外旅行するワーキングホリデーなどが代表的なものです。

 

外国人の雇用とその他の法令

外国人雇用に際して関係する入管法以外の法律としては、労働基準法、最低賃金法、雇用保険、労災保険、健康保険、年金保険などの医療・年金保険関連法です。

これらの法律は、原則日本人雇用と同様に適用されるものです。
これらの注意すべき点としては、賃金については、日本人と同等以上の賃金が義務づけられること、雇用関連の助成金については外国人も対象であることです。

また、年金については、日本と諸外国との間における社会保険協定の有無などです。

 

外国人採用時の確認事項

外国人は、在留資格によって就労可能かどうか、就労可能な場合、どのような仕事内容が就労可能かが決まってきます。
外国人採用をする際の注意点は、まずは外国人の在留資格を確認することです。

在留資格の確認方法

日本に3か月以上滞在している外国人は、在留カードを持っています。

在留カードには、在留資格、在留期間、資格外活動許可等が記載されています。
外国人にとっては、パスポートと同じくらい重要な身分証明書です。

在留カードで、在留期限は過ぎていないか、就労可能な在留資格かどうか、就労不可の資格の場合、資格外活動許可が付されているかを確認します。

在留カードの見本が出入国在留管理庁のホームページに掲載されていますので、一度確認しておくことをお勧めします。
出典:出入国在留管理庁「在留カードとは?


在留カードとともに、パスポートも確認しておきましょう。
パスポートと在留カードの内容が一致しているか、有効期限は切れていないかをチェックします。

さらに、すでに就労ビザで働いていて転職しようとする外国人を採用する場合は、就労資格証明書で就労可能か確認します。
これは、取得している在留資格と転職先の仕事内容が一致しており、そのままの在留資格で働くことができる、という証明です。
これがなければ働けないということはありませんが、万一のため、確認しておいた方がよいでしょう。

外国人採用時に新たに在留資格を取得させる場合の注意点

留学生を新規採用し、留学ビザから就労ビザに変更する場合や、新たに就労ビザを取って雇用する場合、採用する外国人の学歴や職歴と仕事内容が一致していなければ、就労ビザをとることができません。

せっかく採用しても就労ビザが取れなければ、働くことができないので、就労可能な在留資格が取得できそうかどうかも注意して確認する必要あります。

資格外活動許可で就労する外国人を雇用する場合の注意点

留学生などは、学費や生活費のため、資格外活動許可でアルバイトをしていることが多くあります。

また、他の在留資格でも資格外活動許可を得て働こうとしているケースがあります。
そんな外国人を採用する際には、在留カードで資格外活動許可の有無を確認する他、労働時間を確認しなければいけません。

資格外活動許可では、原則週28時間以内であること、風俗営業でないこと、が条件になっています。
いくつか仕事を掛け持ちしている場合、合計で週28時間を超えてしまう場合があるので、他で働いているかどうかも確認が必要です。


また、留学生を採用する際の注意としては、留学生が学校を卒業してしまっている場合は、本来の在留資格の留学ではなくなった状態であるため、資格外活動許可で働くことはできません。
留学生であれば、在学中かどうかを確認する必要があります。

学校を卒業後、就職活動中にアルバイトを行いたい場合は、留学の在留資格から、就職活動のための在留資格「特定活動」に変更した上で、新たに資格外活動許可を得る必要があります。

 

外国人雇用の手続き

外国人を雇用する場合、日本人と同様に雇用内容によって各種保険の手続きが必要になります。
ただし、外国人雇用の場合は、日本人と違って、雇用保険未加入であっても、ハローワークへの届出が必要です。

届出をする際には、在留カードやパスポート、資格外活動許可書などを確認してから届出をしましょう。

雇用保険の対象となる場合

会社が雇用保険の適用を受けており、外国人の雇用内容が、雇用保険適用となる場合、日本人と同じように「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所を管轄するハローワークに提出します。
この取得届が外国人雇用の届出と一体化されています。

雇用保険の対象とならない場合

外国人の雇用内容が、雇用保険適用とならない場合には、「外国人雇用状況届出書」を管轄のハローワークに提出します。

 

外国人雇用における契約上の注意事項

一般に日本人は契約に対しての意識が低く、日常口約束で済ませてしまう場面も多いものです。

一方、外国人は契約に対する意識が高い傾向にあります。
特に近年は、外国人雇用の多様化から、高度な技術、知識を持った権利意識の高い外国人が増えています。

そのため、雇用契約書の作成交付は、最低限必要な事項です。
その際、注意すべき点としては、雇用契約書、就業規則などは、母国語による書面を交付、逐一説明したあと同意を得ておくことです。


また、就労ビザと呼ばれる在留資格では、仕事内容が問われますので、採用した外国人本人が、自分の仕事内容をきちんと理解しておく必要があります。
仕事内容を分かっていなければ、ビザ申請の際に、入国管理局からの質問に答えることができず、ビザを取得できなくなる可能性もあります。

大まかなの仕事内容ではなく、具体的にどんな仕事をするのか、例を出して細かく説明すると本人も理解しやすくなります。


さらに、外国人が働く上で、ビジネス慣習の違いも説明しておくとよいでしょう。
日本では当たり前だと思っている長期雇用や社会保険加入も海外ではそうではありません。

そのため、雇用契約書を提示して説明することで、雇用期間や社会保険加入などを理解させることができます。
社会保険は、パートやアルバイトであっても、事業所の形態や本人の労働時間や賃金等によって適用となる場合があります。
社会保険が適用となる場合には、保険についても説明しておく必要があります。

 

不法就労が判明した時の対応

外国人採用の時には、在留カードで在留資格、在留期限、資格外活動許可を確認し、不法就労させないことが一番です。

しかしながら、仕事を掛け持ちし、資格外活動許可された労働時間を超えていたり、在留資格の内容が本来の目的と違っていた場合など、不法就労が判明してしまったら、入国管理局に通報し、外国人本人にも入国管理局へ出頭するように促さなければなりません。

在留期限が切れてオーバーステイであったり、働けない在留資格で働こうとしている外国人を雇用した場合、事業者も「不法就労助長罪」として処罰されることがあります。

処罰をされないためにも、きちんと在留カードやパスポートを確認し、働ける外国人であるかどうか確認した上で雇用することをおすすめします。

 

その他の外国人雇用における注意事項

その他にも、外国人採用の際の注意点がいくつかあります。

言葉・習慣について

当然のことですが、外国人は日本人と異なった文化、習慣、言語を持っています。
特に言語の違いは、コミュニケーションをとる上で大きな課題です。

ある程度日本語能力のある外国人を雇用するか、雇用したあと日本語教育を受けられるよう十分な配慮をすることも必要です。
特に注意すべき点は、日本人の価値観を押し付けるような言動は、慎まなければならないということです。

外国人は、自分の国の価値観や文化に誇りを持っています。
日本人が価値観を押し付けるということは、彼らの価値観や文化を否定することにつながります。

相互の違いを前提としつつも、相手の言い分に耳を傾け、一定のルールのもと、職務を遂行するといった姿勢が必要です。

インターンシップを受け入れる場合

海外の大学に在学中の外国人学生が、教育の一環として、日本で職業体験のために働くことです。

インターンシップでは、学生が在籍する大学との間の契約に基づいて行われます。
期間は1年を超えない期間で、在留資格としては、特定活動(告示9号)と呼ばれるものになります。
これは通常の就労ビザとは異なっているため、注意が必要です。

インターンシップに従事する時間が週28時間を超える場合は、資格外活動許可を受ける必要があります。
インターンシップを受け入れる場合、外国の大学との日本の受入れ機関との契約書、日本での活動内容、本人の履修内容などの書類が必要になります。

インターンシップであっても、事業所や労働時間によっては、社会保険の適用になるため、注意が必要です。

中途退学の大学院留学生を雇用する場合

大学と違って、大学院では、学位取得が難しく途中退学するケースは多々あります。
そうした途中退学の大学院留学生を雇用する場合も、大学卒業の留学生を採用する際と同様に、在留資格変更許可申請を行います。

さらに、中途退学の場合は、申請書類の他に、在籍していた大学が発行する「退学見込証明書」や「今後一切の学生活動を行わせない旨の念書」を入国管理局から求められることがあるようです。

業務委託契約や請負契約を結ぶ場合

外国人採用の際には、雇用契約での労働が多いですが、業務委託委契約や請負契約での労働も可能です。
業務委託契約で就労ビザを取得する場合は、ある程度長期的、安定的な業務委託契約、請負契約であることが必要です。

さらに、業務委託契約や請負契約の内容は、実質上も労働契約と見なされないものであり、関係する法令において適法なものであることが必須です。

専門学校の卒業予定者を採用する場合

日本の専門学校の卒業予定者を採用する場合、「専門士」が付与されていることが必要です。

さらに、専門学校で履修した専門的な内容と仕事内容が一致していることが必要です。
専門学校卒業予定の外国人を採用する際には、具体的な履修内容まで細かくチェックし、仕事内容と一致しているか確認します。

また、海外の専門学校卒業では、専門学校卒として扱われないため、注意が必要です。

 

まとめ

今後、外国人の雇用はますます増加していくと予想できます。

政府は、高い知識や高度な技術を持った優秀な外国人は、優先的に受け入れる方針を取っています。
その一方で、人材不足に悩む日本の労働力として外国人材を受け入れる政策も取り始めています。
多種多様な業種で、外国人雇用が進んでいくことでしょう。

外国人雇用の際には、在留資格による仕事の制限など、日本人雇用とは違った注意点が多々あります。

まずは、在留カードやパスポートで在留資格や在留期限を確認し、本人の学歴・職歴と仕事内容、会社の状況などを確認することが大切です。