就労ビザの変更申請を怠ったり、在留期限が過ぎていたりした場合、出入国在留管理局から「強制送還」の処分が下されることがあります。

そのような事態にならないためには、どのように対処したらいいのでしょう?詳しくご説明します。

 

強制送還されるケース

日本で就労ビザを持つ外国人に強制送還の措置を取る場合は、次のことが考えられます。

オーバーステイしている

外国人が日本で滞在する際は在留資格が必要です。
そして、永住者を除き、観光でくる外国人でも、就労している外国人でも、勉学に励んでいる留学生でも在留期限が存在します。

更新申請などをせずに期限が超過している状態をオーバーステイと呼び、強制送還の対象になります。
尚、申請の種目によっては審査期間中に期日を経過しても特例期間が適用されオーバーステイにはならないケースも存在します。

働く許可を得ていない

外国人が日本に来て就労する場合は、就労ビザを取得する必要があります。
この許可を得ていない場合、不法就労ということになり、強制送還の対象となります。

また、在留資格は全部で29種類ありますが、そのうちの17種類のみで就労が認められています。

許可された範囲を逸脱している

上で説明した17種類の就労ビザを取得していても、許可された職種以外に仕事をした場合も、不法就労とみなされます。

また、在留中に職種を変えた場合には、在留資格変更許可や資格外許可を申請する必要がありますが、それを怠った場合も、不法就労となります。

 

出国命令と強制送還の違い

ニュースで「出国命令」という言葉を耳にすると思いますが、これは上記でご説明した「強制送還」とは、仕組みが違います。

「強制送還」の場合、不法就労などで、在留する外国人が出入国在留管理局から摘発を受け、身柄を収容され、手続きが取られた上で、本国に強制的に送還されるというものです。

しかし、「出国命令」の場合は、不法滞在している外国人が、自ら出入国在留管理局に出頭し、以下の要件を満たすことを条件として、収容されることなく、本国に出国するという制度です。

  ・速やかに出国することを希望し、自ら出入国在留管理局に出頭したこと
  ・不法残留している場合に限ること
  ・窃盗その他一定の罪により、懲役刑等の判決を受けていないこと
  ・これまで強制送還されたり、出国命令により出国したりしたことがないこと
  ・速やかに出国することが確実であること

 

強制送還の流れ

強制送還をするための「退去強制手続き」は、次のような流れです。
 ※出典(法務省ホームページ:「退去強制手続及びの出国命令手続きの流れ

まず、入国警備官が、不法滞在、資格外活動違反、刑罰法令違反など、退去強制事由に該当する疑いに対して違反事実を調査します。
その違反事実に関して、調査内容に誤りがないか、退去強制の事由に該当するかどうか、入国審査官が審査します。

そして、当事者である外国人に対して、特別審査官が口頭で審理します。
この際に、外国人は、違反審査での認定内容の誤りを主張したり、あるいは在留特別許可を求める場合には請求したりすることができ、それに対して、特別審査官が判定を行います。


この判定に対して、外国人が、誤りを主張したり、あるいは在留特別許可を求めたりする場合には、主任審査官に対して、法務大臣による最終判断を申し出ることができます。
この申し出を受けて、法務大臣は、違反調査、違反審査、口頭審理の事件記録を精査した上で、退去強制処分、出国命令該当、在留特別許可などの最終判断を行います。

退去強制の事由に該当するもの、特別な理由、あるいは事情を考慮されたものは、法務大臣の特例によって、在留特別許可と判断されます。

強制送還となった場合にかかる費用

退去強制(強制送還)となった場合には、かかる費用は、通常外国人本人が負担します(自費出国)。
しかし、自費出国ができないと判断された場合には、国が負担することになります(国費負担)。
また、通常の上陸審査で、上陸を拒否された場合などには、運送業者が負担することになります。

仮放免について

収容されている外国人について、請求や職権によって、一時的に収容を停止し、身柄の拘束を仮に解く措置があります。
これを「仮放免」と言いますが、例えれば、 刑事事件の「保釈」と似た制度です。

仮放免が許可されるには、300万円以下の保証金の納付を行い、さらに住居や行動範囲の制限、呼出しに対する出頭の義務、その他必要と認める条件を満たす必要があります。

 

在留特別許可とは

先程ご説明したとおり、退去強制の事由に該当する外国人のうち、法務大臣の裁量によって、「在留特別許可」が認められます。
この「在留特別許可」が認められれば、引き続き日本に在留することができます。

しかし、認められなければ、強制的に日本を出国することなり、上陸拒否期間内は、日本へ入国することもできません。

「在留特別許可」が認められるか否かは、外国人にとって、かなり重要なことです。
出入国在留管理局に許可の申請を行うことになりますが、審査期間は各事案によって異なります。

取得条件

このような条件であれば、認められるという事項は特にありません。
あくまでも、法務大臣の裁量ということになります。

ただし、認められやすいケースは、以下のとおりです。

  ・日本国籍を持つ者と婚姻した外国人
  ・「永住者」、「定住者」の在留資格をもつ外国人と婚姻した外国人
  ・日本人との間に生まれた日本国籍の子の親である外国人

上記のケースに当てはまっていても、認められないケースもありますから、まさにケースバイケースと思っていた方が良いでしょう。

 

再入国について

退去強制の事由に該当し、日本から退去した外国人は、退去日から5年間は、日本に再入国することができません。この期間を「上陸拒否期間」と言います。
※出典(出入国在留管理庁ホームページ

ただし、この上陸拒否期間を過ぎても、以下の場合は、原則的に半永久的に再入国が許可されません。

  ① 犯罪者(政治犯を除く)
   日本又は外国の法令に違反して、 1年以上の懲役又は禁錮に処せられたことのある者(執行猶予含む)。但し、次の要件を満たしている場合には、法務大臣の裁量で、再入国が許可されることもあります。
    ・執行猶予期間が満了していること
    ・上陸拒否事由が重大なものではないこと
    ・日本人の配偶者など特別な事情があること

  ② 薬物犯罪者

  ③ 売春業務従事者


なお、不法残留、資格外活動又は薬物・売春以外の犯罪(1年未満の懲役又は禁錮などの刑に限る)により退去させられた外国人で、出入国在留管理局の摘発などにより、刑に処せられることなく退去させられた場合は、上陸拒否期間満了後の再入国が必ずし も許可されるというわけではありません。

ただし、上記の場合でも、警察の摘発などにより、1年未満の懲役又は禁錮などの刑に処せられたことのある外国人については、上陸拒否期間満了後は、再入国が許可されることがあります。

 

強制送還を回避するために

会社で働いている外国人が不法就労だった場合、その外国人に強制送還などのペナルティが課されることはもちろん、雇用主にも懲役や罰金などが科されます。

そのような事態を回避する方法は、次のとおりです。

在留カードを確認する

日本に長期滞在するためには、在留カードの所持が大前提です。
在留カードは日本の入国管理局が発行するもので、外国人が日本に長期滞在するための滞在許可証の役割を果たしています。

在留カードには、母国名、氏名、在留資格等を全て確認することができます。
つまり、このカードを確認することで、どのような技能を持っている外国人かがわかるのです。

なお、在留カードの番号を確認する方法として、現在オンラインでも可能です。

在留カードの発行予定はあるか

観光などで日本に滞在している外国人(短期滞在)を除き、在留カードを所持しないで日本に滞在する外国人は、ごくごく少数です。
通常、中長期に渡って日本に滞在する場合は、入国した空港で在留カードが交付されます。

ですが、入国した空港が大きな空港でない場合などは、別途受け取りのための申請が必要になります。
この場合は、在留カード発行の申請手続きを行っているかどうか、確認し、発行された在留カードを確認した上で、正式に雇うようにしましょう。

資格外活動許可を持っているか

日本に留学している外国人は、基本的に働くことはできません。
しかし、資格外活動許可を得ている留学生はアルバイトをすることができます。

従って、留学生が働きたいと言ってきた場合、資格外活動許可の有無を確認する必要があります。

不審に思ったら連絡する

在留カードの提示を求めても、「家に置いている」、「今日は忘れてきた」などの怪しい発言をしたり、偽物らしき在留カードを提示したりした場合は、入国管理局に連絡をしましょう。

曖昧にしたまま、不法滞在の外国人を雇い続けると、結局会社に被害が及びます。

 

まとめ

日本に来る外国人が増えるにつれて、不法に滞在する外国人の数も増えてくるのは、ある意味で仕方のないことです。

しかし、不法滞在の外国人を雇うことで、会社も損害を被ることになりますから、十分注意する必要があります。