2018/9/14 行政書士 井上通夫
日本で長く働いている外国人の中には、本国の親を日本に呼び寄せて一緒に暮らしたいと希望する人が少なくありません。
特に親が高齢である場合、その思いはより強いはずです。
ここでは、本国に住む親を日本に呼び寄せるための手続きについて、ご説明いたします。
親族を呼ぶ方法
親を含めて、本国の親族を日本に呼び寄せる方法としては、次の2つの方法があります。
家族滞在
この「家族滞在」は、一般的に「家族ビザ」と呼ばれています。
この在留資格は、就労ビザや一般ビザなどを所持していて、日本に長期滞在をする外国人が扶養する配偶者や子どもが所持できる在留資格です。
この在留資格の期間は、5年、4年3ヶ月、4年、3年3ヶ月、3年、2年3ヶ月、2年、1年3ヶ月、1年、6か月、3ヶ月です。
ただ、多くの場合、扶養する外国人のビザの有効期間と合わせる場合が、ほとんどです。この在留資格の趣旨は、日本で扶養されて生活することですから、基本的には就労することはできません。
ただし、資格外活動許可を得ることができれば、アルバイトは可能となります。
特定活動(養老扶養)ビザ
上記の「家族滞在」では、扶養されている配偶者や子どもが対象となる在留資格ですが、それ以外の家族、高齢の両親を日本に呼び寄せたい場合には、「特定活動(養老扶養)ビザ」を取得する必要があります。
例えば、親が高齢なので本国から呼び寄せたい、自分は働いているので親を呼んで自分の子どもの面倒を看てもらいたいなどの理由が考えられます。
この資格の内容や手続きは、次にご紹介いたします。
特定活動(養老扶養)ビザ
要件は?
この資格の要件は、7つあります。
まず、呼び寄せる子どもが帰化をしている、在留資格を有しているなど、日本に違法に滞在していないといった一定の資格が必要です。
次に、日本に呼び寄せる親が高齢であることです。ただ、年齢的な基準は公開されていませんので、一般的に見て高齢であり、子どもの扶養が必要だと判断される必要があります。
3つ目は、呼び寄せる親に配偶者がいないことです。つまり、他に身寄りがないことが要件ですが、結婚していても婚姻関係が実質的に破綻しているなどの事情も、身寄りがないと判断されます。
4つ目は、呼び込む子どもの兄弟の存在です。他に兄弟がいて、本国で親を扶養できる場合は、認められませんが、兄弟が他にいない、いても本国に住んでいないなど、身寄りがない状態であれば、認められる可能性が高くなります。
5つ目は、日本で扶養する子どもが親の生活費を負担できるほどの財力があることです。税金を滞納していない、預貯金が十分ある、収入面で安定しているなどの根拠が必要になります。
6つ目は、日本にいる子どもが親を呼びよせた後、親を扶養し、扶助することです。そのためには、呼び寄せる親が「短期滞在」から「特定活動(養老扶養)ビザ」に代わる際には、「日本にいる子どもの扶養を受け、日本に在留するため」といった理由が必要です。
そして最後は、人道上配慮すべき特別な事情をあることです。例えば、介護が必要なほど日常生活に支障を来している、本国で治療困難な病気にかかり、日本での治療が必要など、様々な事情を考慮して、日本にいる子どものもとで生活する方がいいと判断される場合です。
手続きの流れ
まず押さえておきたいことは、「特定活動(養老扶養)ビザ」は、制度上規定されているビザではないということです。
具体的な方法としては、一度「短期滞在」で本国にいる親を日本に呼び寄せた上で、改めて「在留資格変更許可申請」の手続きを行うことになります。
始めに「短期滞在ビザ」の取得ですが、これは現地の日本大使館や領事館へ申請することになります。このビザの申請には、入国の理由を記載することになりますが、日本に入国した後の「特定活動(養老扶養)ビザ」への変更許可申請の際に、この理由が考慮されてきますので、きちんと記載しておく必要があります。
そして、日本への入国後、管轄の入国管理局へ「短期滞在」から「特定活動(養老扶養)ビザ」の変更申請を行います。ただ、先程ご説明したように、「特定活動(養老扶養)ビザ」は類型化された申請ではないため、始めから直接窓口は提出するのではなく、一度申請書、必要書類などを審査部門に持ち込み事前相談を行った上で、申請のためのチェックを受けることになります。
申請後、許可されれば、入国管理局で「在留カード」を受け取ることになります。
まとめ
本国に親を残しているが、高齢で心配だ、誰も面倒を看てくれる人がいないなどの場合、この「特定活動(養老扶養)ビザ」は便利な制度です。ただし、一定の要件がありますから、注意が必要です。
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