外国人の方が日本国籍を取得する方法の一つである「帰化」を申請するには、七つの条件をクリアしなければなりません。この七つの条件全てをクリアしても、必ず「帰化」が許可されることにはなりませんが、条件クリアが最低限必要です。そのためには様々な書類を用意して、自ら条件クリアを証明しなければならないのです。
そこで、どのような審査手順なのか、どのような書類を用意する必要があるのかを確認していきましょう。
帰化と永住権の違いについては以下の記事をご覧ください。
「帰化」申請の審査手順
「帰化」の申請の流れを以下に記載しました。手順が多い上に、申請書類の点検の段階で法務局に複数回足を運ばなければならないこともあり、非常にわずらわしいだけでなく、申請期間も長くかかるのが特徴です。そもそも事前相談の予約が、一か月以上先になることもあります。追加資料を求められ、その申請書類を集めるためにも時間がかかります。事前相談をしてから「帰化」の許可が下りるまで、審査期間はおおよそ一年だと思っておいた方が無難です。
また事前相談の段階から様々なヒアリングが行われ、話した内容はすべて記録に残ります。そのため後から整合性がつかないことなどがあると、「正直な人ではない」、「隠しごとをしている可能性がある」という疑いをかけられ、審査に余計な時間を費やすことになったり、そもそも「帰化」の許可が下りる可能性がないとして、「帰化」申請を受け付けてくれなくなったりします。申請を受け付けてくれなかったり、不許可になったりした場合にも、相談内容の記録などは保管されるため、以後改めて「帰化」申請する際に不利に働きます。事前相談に行く前から、しっかりと準備をしておくことが肝心です。
- ①住所地を管轄する法務局に事前相談の予約をする
- ②事前相談
- ③必要書類の収集
- ④帰化申請書類の作成
- ⑤帰化申請書類の点検
- ⑥帰化申請受付
- ⑦面接
- ⑧家庭訪問・職場訪問
- ⑨法務省での審査
- ⑩帰化の許可・不許可
「帰化」申請書類
「帰化」申請書は、「帰化」申請者が15歳未満の場合と15歳以上の場合の二種類ありますが、必要なのは「帰化」申請者一人につき一枚です。
ただし問題は、「帰化」申請に必要な添付書類です(以下、申請書と添付書類を合わせて、「帰化」申請書といいます)。問題というのは、「帰化」条件をすべてクリアしていることを証明するために、様々な書類を用意しなければならないからです。逆に言えば、とにかくいろんな書類を用意して、七つの「帰化」条件をクリアしていることを証明すればよいのです。
母国の書類
「帰化」申請者の身元を明らかにするための申請書類です。明らかにすべき血縁関係などが、「帰化」申請者毎に異なりますし、母国の制度によっても様々な書類がありますので、用意すべき書類は「帰化」申請者毎に異なってきます。
- ①国籍証明書
- ②出生証明書
- ③婚姻証明書
- ④死亡証明書
- ⑤離婚証明書
- ⑥親族関係証明書
- ⑦国籍離脱(放棄)宣誓書
- ⑧本国書類の翻訳文 ・・・など
日本での書類
日本における「帰化」申請者の身元・財産等を明らかにするための申請書類です。こちらの申請書類も「帰化」申請者毎に異なります。
- ①出生届記載事項証明書
- ②婚姻届記載事項証明書
- ③離婚届記載事項証明書
- ④死亡届記載事項証明書
- ⑤日本の戸(除)籍謄本
- ⑥住民票(世帯全員・同居者含む)
- ⑦閉鎖外国人登録原票記載事項証明書
- ⑧出入国履歴(パスポート(旅券)の写し)
- ⑨在勤及び給与証明書
- ⑩源泉徴収票
- ⑪都道府県・市区町村民税納税証明書
- ⑫課税(非課税)証明書
- ⑬預貯金残高証明書
- ⑭技能及び資格証明書
- ⑮賃貸借契約書(賃貸の場合)
- ⑯土地・建物登記事項証明書(所有の場合)
- ⑰年金保険料の領収書などの写し
- ⑱在学証明書・成績証明書
- ⑲運転免許証・運転記録証明書
- ⑳在留カード
- ㉑写真(縦5cm×横5cm)2枚 ・・・など
「帰化」申請者が個人事業主・会社役員の場合
自らの事業において、安定した生活を送るだけの財政基盤があることを証明しなければなりません。事業年度2期にわたって赤字決算というのでは、難しくなります。
- ①事業の概要書
- ②営業許可証
- ③決算書一式
- ④会社・個人確定申告書の写し
- ⑤法人税・所得税納税証明書
- ⑥法人・個人事業税納税証明書
- ⑦固定資産税納税証明書
- ⑧自宅・事務所付近の略図 ・・・など
その他の「帰化」申請書類
「帰化」申請をするにあたって、親しい日本人や家族からの上申書や嘆願書、「帰化」申請する理由書などを用意することは、日本国籍を取りたいという積極的な理由付けとしての効果をもたらします。また日本での活動が表彰されたり、地域活動に勤しんだりする姿は、「帰化」することへのプラス判断材料となります。
- ①上申書・嘆願書
- ②理由書
- ③表彰状
- ④地域活動の写真 ・・・など
まとめ
「帰化」申請書類は非常に数が多くなりますし、数多く提出すべきです。その際、日本国内で集める申請書類よりも、母国の書類の方が入手するのに時間がかかりますから、先ずはそちらを先に集めるべきでしょう。何を集めればよいのかは事前相談でアドバイスをしてもらえます。しかしそのときに言われる書類は、最低限のものだと理解しましょう。
それらの書類をみながら、「これではよくわからないので、〇〇〇の書類も用意してください。」と、追加提出を求められることが普通です。このような手順を踏んでいく以上、「帰化」申請期間は非常に長くなるのです。仕事をしながら「帰化」申請書類を集め、提出書類の点検を何度も受けるのは、かなり大変です。専門家の活用を検討されるのも、一考に値するのではないでしょうか。