2019年6月に、「日本語教育の推進に関する法律(以下『日本語教育推進法』と言います。)」が国会で成立しました。

この法律ができた背景や今後の課題などについて、詳しくご説明いたします。

なぜ法律ができたのか?

2016年、文部科学省から発表された「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査」によると、全国の公立学校に在籍する児童生徒で、日本語がわからない子どもは、4万3,947人もいるとのことです。

また、そのうちの1万400人は、「日本語教育が必要」だと判断されたにもかかわらず、学校では何も支援を受けていない状態にあるのです。

日本語教育の支援が必要な子どものほとんどは、仕事で外国から日本に来た外国人の子どもや外国にルーツを持つ子どもです。

今後も、このような子どもたちが増加することが見込まれるという事実が、「日本語教育推進法」が成立した背景にあるといえます。

この法律の成立によって、初めて外国人や海外にルーツを持つ子どもたちに対して、日本語教育に関する国、自治体、事業主の責任が示されたことになります。

国等の責務とは?

「日本語教育推進法」では、国、地方自治体、事業主に対するそれぞれの責務が、規定されています。

まず国に対しては、この法律の基本理念に則り、日本語教育の推進に関する施策を総合的に策定した上で、実施するという責務を課しています。

また、地方自治体に対しては、この法律の基本理念に則り,日本語教育の推進に関して,国と適切に役割を分担した上で,その地方自治体の状況に応じた施策を策定して,実施するという責務を課しています。

さらに事業主に対しては、この法律の基本理念に則り,国や地方自治体が実施する「日本語教育の推進に関する施策」に協力し,会社が雇用している外国籍従業員やその家族に対する日本語学習の機会を提供したり、あるいはその他に日本語学習の支援をしたりすることを求めています。

企業のすべきこと

この「日本語教育推進法」では、企業に対して、雇用している外国人やその家族に「日本語教育の機会を提供するような支援に努める」責務があると、規定しています。

これは、日常生活以外に、会社の業務に必要な日本語について、企業が責任をもって教育を行うことを意味しています。 

また、従業員に限らず、その家族に対してまでも支援に努める点も特筆すべきことです。

具体的な社内制度について

大企業であれば、従業員やその家族に対して、日本語教員に来てもらい、日本語を直接教えるような体制をとることは、可能かもしれません。

 しかし、中小企業になると、なかなかそこまでは体制が組めないというのが現状です。

そこで、そのような企業は、外部に委託したり、あるいは日本語を学習できる機関で勉強できるように支援したりして、従業員やその家族をサポートしていくことができるかもしれません。

今後の課題とは?

日本に住む外国人が年々増加することを受け、彼らに対する日本語教育を推進するという目的で、この「日本語教育推進法」が成立しました。

しかし、この法律の内容は、日本に住む外国人に対して、日本語教育の必要性とその理念を述べたもので、具体的な制度設計は、国と地方自治体が策定し、事業主がそれに協力するものとしています。

つまり、どのような体制で、日本在住の外国人に日本語教育を施すのか、まだはっきり見えていません。

また、会社に対しても、雇用している外国籍の従業員やその子どもに、日本語教育の機会を提供する、支援を行うことを努力目標としています。

ただこの点については、会社の規模によって、できる会社と難しい会社との格差が生じる可能性があります。

その結果、就職した会社によって、日本語教育を受けられる人と、受けられない人とが出てくることになります。

このような事態に対して、国や地方自治体がどのように支援できるのか、大きな課題となりそうです。

まとめ

日本に在住する外国人対する日本語教育を推進する法律が成立したことで、やっと日本でも、特に外国人の子どもの支援を行う方向に向かいます。

しかし、会社にとっては、大きな負担になる可能性もあり、今後国は地方自治体が支援できる体制を作ることができるかが、大きな課題となるそうです。