日本人配偶者と離婚した場合の在留資格は?

日本人と離婚した外国籍の方はすぐに帰国しなければいけないかというとそうではありません。

離婚後も何等かの理由により引き続き日本で暮らすことを希望する外国籍の方に関しては、適当と認めるに足りる相当の理由があると認められれば在留資格変更が許可されることがあります。(出入国管理及び難民認定法(以下「入管法」といいます。)第20条)

今回のように「日本人の実子を監護・養育する」場合も「相当の理由がある」として「定住者」の在留資格変更が認められる場合があります。詳しく言うとこの場合「公示外定住ウ 日本人実子扶養定住」となります。

「公示外定住」とは一言でいえば「公示」に挙げられていないものの、それぞれの活動内容や日本に在留する必要性、今までの在留状況等を考慮し、「相当の理由」があると判断された場合に限り「定住者」の在留資格を許可しましょう、というものです。

「日本人の実子を養育監護する」ために「定住者」へ在留資格変更を行うためにはご自身の住所を管轄する地方出入国在留管理局に在留資格変更許可申請を行う必要があります。

 

「定住者」申請の要件と審査のポイント

「定住者」への在留資格変更許可申請を行うためにはいくつかの要件があります。

・申請人(日本人の実子を養育監護する外国籍の方)と養育される日本人の実子との間に親子関係があること。

ただ必ずしも日本人と法的な婚姻中に出産していなければいけないわけではありません。日本人と申請人が未婚でも構いません。

実子が日本人である場合は、申請人が親であることを証明する書類として実子の戸籍謄本を提出すると良いでしょう。

日本国籍を有していない場合は出生証明書等の添付が必要です。

日本人の実子が未成年で未婚であること。

申請の前提として「監護養育する必要性」がありますから既に成人して自身で給料を得ることができる能力がある場合は該当しません。

実子の出生年月日が記載されている戸籍謄本や出生証明書等を提出することで未成年が否かの証明が可能です。

申請人が親権を有していること

申請人が日本人の実子の親権者であることが必要です。日本人と婚姻関係にあった場合、協議離婚届けのコピーや親権者の記載がある子供の戸籍謄本を提出すると良いでしょう。

申請人が日本人の実子を養育監護している実績があること

申請人が親権者であれば良いのではなく、養育監護の実績も重要な要件です。日本人の実子と同居し、実際に養育監護していなければなりません。実子を本国の両親に預けていた、等という場合には「実際に養育監護をしていた」とは認められませんので、注意しましょう。

子供の通っている学校等から保護者欄に申請人の名前を記載した在学証明書を出してもらうのも良いでしょう。

また同居を証明する書類として世帯全員が載っている住民票を提出しましょう。

申請人に一定の収入があること

子供を実際養育していくためにはある程度の収入が必要です。そのため申請人の在職証明書、源泉徴収票、直近年度の課税納税証明書を提出し、申請人の生活能力を証明することが必要です。

しかし、必ずしも申請時に安定した収入がないと許可がおりないわけではありません。子供が小さい間は長時間働きに出ることも難しいかもしれませんし、今まで専業主婦だった方がすぐに就職先を見付けるのは難しい場合もあるかもしれません。必ずしも申請人本人に収入がないからという理由で許可がおりないわけではなく、離婚した日本人から養育費をもらっても、本国の家族から生活費の送金を受けていても良いのです。生活保護のような公的扶助を受けていても良いのです。

そのような場合には、貯金の残高証明や通帳のコピーを提出する、求職中や公的扶助を受けている場合には、今後は自身で仕事を得て生活をしていく旨を説明書等に記載すると共に今後の収入の見通しについても証明すると良いでしょう。

 

「日本人の実子」とは

養育される子供の要件についても見ていきましょう。

今回の相談のように子供自身が日本国籍を有する日本人であれば問題ありません。

子供が日本国籍を有していない場合は日本人の親から「認知」されている事が必要です。

認知の記載のある日本人の親の戸籍謄本を提出すると良いでしょう。

 

「定住者」申請の注意点(不許可事由)

「定住者」は法務大臣が特別な理由を考慮し一定の在留期間を指定して居住を認める者とされています。

そのため日本に在留する特別な理由がないと判断され、不許可になることも当然あり得ます。

上記の要件に合致しないような場合には当然不許可になります。

例えば、親権者が日本人の元配偶者がもっている、申請人が育児放棄をしている、申請人が本国に帰国していてほとんど日本にいない、等が認められた場合には不許可になります。

法務省のホームページでは「定住者」への在留資格変更が認められた事例と認められなかった事例が出ています。

もちろん「定住者」への在留資格変更における審査は個別のケースによりますので、許可のケースに似ているからといって自身が必ず許可になるわけではありませんが、参考にしてみるのもよいでしょう。

 法務省:「日本人の配偶者等」又は「永住者の配偶者等」から「定住者」への在留資格変更許可が認められた事例 及び認められなかった事例について

 

また今回の「日本人実子扶養定住」は在留資格認定証明書交付申請は認められません。

日本に居住し、現状何らかの在留資格を有している場合に在留資格変更許可申請が可能です。

つまり、申請者が現状在留資格を有してなく、海外に居住している場合は上記の要件が充たされていたとしても申請は出来ないことに注意が必要です。

もし、そのような場合は申請人が短期滞在で来日し、在留資格変更許可申請を行うことになります。

 

「定住者」の在留資格期間更新は可能なのか?

もちろん、期間更新時に上記要件が継続していれば期間更新は可能です。

しかし、親権が日本人の元配偶者にうつった、育児放棄をしている等が認められた場合には期間更新が不許可となる可能性があります。また更新の審査時に子供を監護・養育している証明書類の提出を求められることもあります。

もし申請時に入管から追加資料提出通知が来た場合には、必ず期日までに提出するようにしてください。

万が一期日に間に合わない場合には、その理由といつなら提出可能なのか、等を説明した書類を提出するようにしてください。

 

まとめ

上記の通り、「定住者」については地方出入国在留管理局の裁量によるところが大きいので、申請には不安があるかもしれません。しかし、子供を守り、監護養育していくのは外国人の親しかいないということをきちんと書類で立証していくことで許可が下りる可能性が高くなります。

申請に至った理由や定住者に変更したい理由などを記載した理由書を添付するなどして説明不足にならないよう留意して準備をすすめていきましょう。