初めて外国人を雇用することになった場合、専門用語や周辺知識の複雑さに悩まされることが多いと思います。

「外国人を採用する際にはビザが必要だ」とよく言われますが、実はこの場合は「在留資格」のことを指しているケースが多いといえます。
本記事では外国籍人材を雇用する際の基礎知識として、ビザと在留資格の違いに関してわかりやすく説明していきます。

 

ビザと在留資格の違いとは?

外国人が日本で滞在することを許可するのがビザだと思っていませんか?

実は、日本国内の外国人に滞在を許可しているのはビザではなく在留資格なのです。
ビザとは日本語の正式名称を査証といい、入国する前の段階で”上陸する際に必要なもの”です。

パスポートとは

パスポートも入国するために必要なものですが、パスポートは世界で通用する身分証明書です。
日本で言えば、身分証明書として使用される運転免許証やマイナンバーカードと同じようなものです。
しかし、海外では、運転免許証やマイナンバーカードは通用しませんので、パスポートが唯一身分を証明できるものになります。
それゆえ、海外では、パスポートが何より大切だと言われる理由です。

ビザ(査証)とは

そして、ビザ(査証)は、そのパスポートが有効なものであるという確認をした、という証明です。
パスポートが無効なものであれば、そもそも入国できません。
そのため、入国しようとする国が、その人のパスポートが有効だと事前に確認することが必要です。それがビザ(査証)です。

ビザは、外国にある日本大使館や日本公館で発行され、パスポートに印字されます。
尚、短期滞在ビザ相互免除国からの入国者や再入国制度を利用する場合免除されており、パスポートにビザは印字されません。

在留資格とは

一方在留資格は外国人が日本に滞在するためのもので、在留資格で許可された活動を日本国内で行うことが可能です。

ⅰ. ビザ(査証)=外国から日本の空港に上陸し、入国審査を受けるためのもの → 外国で発行

ⅱ. 在留資格=ビザ(査証)や入国管理局が独自に定める基準を満たした外国人が日本に入国して在留することを許可するもの。 → 日本で発行

ビザサンプル画像

one visa編集部作成

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出典:入国管理局ホームページ


また、ビザは外国で審査・発給されるため関係省庁は外務省ですが、在留資格は日本国内で審査・発給するため関係省庁は法務省となります。

 

ビザ(査証)の意味~ビザは特定の国への上陸するための申請書類~

海外旅行を頻繁に経験している方であれば、ビザがないために飛行機に乗れなかった、もしくは空港から出れなかったという話を聞いたことはないでしょうか?
そうした事象が発生する理由は、ビザ(=上陸許可)がおりていない状態で飛行機に乗ってしまったからなのです。

また、ビザ(=上陸許可)がある場合でも必ず入国できる訳ではありません。

日本の場合、入国希望者が要件を満たしていれば外務省が上陸許可に当たるビザを発給するわけですが、最終的に入国の可否を判断するのは入国管理局であり法務省なのです。

ビザの有効期限は3ヶ月間

ビザは原則として1回の入国に限り有効で、有効期間は発給の翌日から起算して3か月間です。
この期間内に来日して日本での入国審査を受ける必要があります。

1回限りのビザで入国審査を受けた場合、又は有効期間が満了した場合のどちらか早いときに失効します。
入国審査が終われば「ビザ」の役割はなくなります。ビザの有効期間の延長は原則できません。

 

在留資格の意味~在留資格は日本国内で行う事が許可された内容を証明するもの~

在留資格を取得する場合は、関係省庁が外務省ではなく法務省(入国管理局)であるため、日本国内で申請を行う必要があります。

申請書類の作成添付書類の選定など、申請に関しては別の記事で詳しく紹介しますが、日本国内には29種類の在留資格が存在し、それぞれ許可されている活動が異なります。

例えば、日本に観光に来ている外国人は短期滞在の在留資格を所持しています。
短期滞在という在留資格においては親族訪問や観光は許可されていますが、就労は許可されておらず、アルバイトなどを行うと不法就労となってしまいます。

在留資格で許可された範囲外の活動を行う場合は別途申請を行い、原則として許可を受けるまでは資格外の活動は出来ません。

 

在留カード

在留カードの存在をご存知でしょうか?
日本で中長期の滞在をする場合に外国人に交付される在留資格を証明するものが在留カードです。

在留カードは短期滞在の場合は発行されず、就労や留学などの適法な在留資格を所持している場合に発行されます。(不法滞在者等には発行されません)

在留カードは新千歳空港,成田空港,羽田空港,中部空港,関西空港,広島空港及び福岡空港(2018年4月現在)では空港にて交付されます。その他の出入国港ではパスポートに上陸許可の証印がされ「在留カード後日交付」の記載がなされます。

この場合、中長期在留者が市区町村の窓口に住居地を届出たあと、在留カードが入国管理局から当該住居地あてに簡易書留で郵送されます。

 

在留資格認定証明書

在留資格認定証明書とは、日本に入国をしようとする外国人が、日本で予定している活動が在留資格の条件に適合しているかどうかを入国前に審査して、適合している場合に交付されるものです。

入国前に在留資格認定証明書を取得することで、入国時の手続きがスムーズに行えます。
在留資格認定証明書は、本人が海外にいて、日本に呼び寄せる人が入国予定地の入国管理局に申請します。

例えば、採用する会社や配偶者などの親族が申請をします。
在留資格認定証明書が発行されたら、海外にいる本人に送り、日本大使館などでビザを発給してもらった後、在留資格認定証明書を持って、日本に入国します。
すると、入国時点で、許可された在留資格が付与され、在留カードが発行されます。

在留資格認定証明書の有効期間は3か月ですので、在留資格認定証明書が発行されてから、3か月以内に入国することが必要です。

 

在留資格の大枠

各在留資格の詳しい説明は別の記事でさせていただきますが、大枠としては以下のように分類できます。

・定められた範囲の就労が可能な在留資格(就労系)
・就労制限がない在留資格(身分系)
・学校での勉学を行うための在留資格(留学系)
・日本への観光や親族訪問などが可能な在留資格(短期滞在系)
・技能実習生などが就労するための在留資格(技能系)

 

在留資格の種類

在留資格は、日本での活動内容によって種類が分けられており、全部で29種類(令和元年11月現在)あります。
29種類の中には、就労できない資格、地位に基づく資格、就労可能な資格があります。

就労できない資格とは、例えば、留学などです。(但し、入国管理局から「資格外活動の許可」を得ていれば、週28時間以内の範囲内でアルバイトをすることが可能です。)
地位に基づく資格は、日本人の配偶者や永住者など、身分系と呼ばれる種類の在留資格で、制限なく就労することができます。

就労可能な資格は、就労を目的とする在留で、就労系と呼ばれ、仕事内容によって種類が分かれています。
これら三つの大枠を少し細かく分けると、下記のような在留資格になります。


▼留学系
 留学

▼身分系
 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等など

▼就労系
 高度専門職、経営・管理、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤など
上記以外にも、外交、公用、教授、報道、研究、医療、介護など職種に応じて様々な在留資格があります。

 

在留資格の取得要件

在留資格は、それぞれの資格にあった活動ができるのかどうか、がポイントになります。

例えば、就労系であれば、雇用する会社の状況や雇用契約、本人の経歴とやろうとする仕事の関連性など、取得しようする資格に応じて必要な条件が違ってきます。

就労系の高度専門職では、保有する資格や学歴によってポイント制で計算され、ポイントによって取得可能かどうかが決まってきます。
また、身分系の在留資格であれば、家族関係や扶養状態を確認できるものがあるかどうか、が要件になってきます。

 

■在留資格の手続き

在留資格を得るためには、二つの方法があります。
本人が海外にいる場合に、日本に呼び寄せる人が在留資格認定証明書を申請して取得する方法と、本人が日本にいる場合に、本人が在留資格変更許可申請を行って在留資格を取得する方法です。

在留資格認定証明書については、前述の通りですが、在留資格変更許可申請については、例えば、短期滞在で入国し、短期滞在の期限である3か月以内に、在留資格変更申請をして在留資格を得たり、留学などですでに在留資格があって、就職するなどして資格内容が変わる場合に、在留資格変更許可申請を行います。

また、在留資格には在留期限があり、期限後も引き続き同じ条件で日本に滞在する場合には、在留資格更新許可申請を行います。
在留資格の更新を続けると、長期間日本に住むことができます。

申請に必要な書類

申請に必要な書類は、各種申請書の他、パスポートや在留カード、日本での活動内容に応じた書類が必要になります。
例えば、一般的に多く申請される技術・人文知識・国際業務の在留資格では、会社の税務関係書類や雇用契約書、本人の経歴書や学歴証明書などです。

在留資格認定証明書の申請用紙は、こちらのページからダウンロードできます。 : 法務省「在留資格認定証明書交付申請

在留資格変更申請の申請用紙は、こちらのページからダウンロードできます。 : 法務省「在留資格変更許可申請

申請取次とは

申請書作成や必要書類の収集、入国管理局へ申請に行く困難などがある場合は、申請取次という制度があります。
これは、入国管理局へ届け出た弁護士または行政書士のみが行える制度で、申請人に代わって、申請書類の作成や必要書類の収集、入国管理局への申請を行うことができます。

 

まとめ

・ビザとは日本語での正式名称を査証といい、外国の日本大使館/領事館(外務省管轄)が入国を妥当と判断した場合に発給する上陸許可書であり、必ずしも入国を許可するものではない。

・日本国内に入国する場合には空港にある入国管理局(法務省)が発給する在留資格が必要。発給された在留資格に応じて国内で行える活動内容に制限がある。

・短期滞在を除く中長期間の在留資格を所持している場合は在留カードが交付される。

・本人が海外にいる場合は、呼び寄せる人が在留資格認定証明書を申請し、本人が日本にいる場合は、本人が在留資格変更許可申請を申請する。

・在留資格には様々な種類があり、就労系では、会社の状況や本人の経歴や仕事内容などの要件が必要。

・在留資格には期限があり、期限後も引き続き滞在する場合には、在留資格更新許可申請が必要。