2018年12月8日、「出入国及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」が成立しました。これにより新しい在留資格「特定技能」が新設され、2019年4月より受入れが開始されました。
この「特定技能」の受入対象職種は14職種となっています。今回はその14職種のうち、「宿泊」の分野について解説していきます。

 

特定技能「宿泊」

交通網の発達や国際化の波で、日本に訪れる外国人が増え、昨今「インバウンド」という言葉がよく聞かれるようになりました。平成31年2月28日付観光庁発表の観光統計によると外国人延べ宿泊者数は前年度比11.2%増となっています。日本人宿泊客も含めた全体宿泊者数としては若干減少しているものの、外国人宿泊者数の増加により宿泊施設の稼働率も高く推移しています。しかし、宿泊と飲食サービス業は日本標準産業分類16大産業中、離職率が最も高い職種であるという結果が出ています。(出典:「厚生労働省平成30年8月9日付 平成29年雇用動向調査結果の概況」https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/koyou/doukou/18-2/dl/gaikyou.pdf)


この結果、宿泊業界では深刻な人手不足に悩まされており、この問題を打開するため、「特定技能」外国人の活躍に大きな期待が寄せられています。

「特定技能」は1号と2号に分かれていますが、宿泊分野に関しては1号のみの受入が可能です。この場合、最長5年間日本で働けるという事になります。

「特定技能1号」の在留資格を取得するためには「技能実習2号を良好に修了」するか、「日本語の試験と各産業分野で行われている技能試験に合格する」必要があります。技能実習「宿泊業」の場合、現状技能実習2号の移行対象職種となっておらず技能実習1号しか認められていませんので、「技能実習2号を良好に修了」したものに該当しません。したがって「宿泊」の分野で「特定技能」の在留資格を取得するためには日本語能力試験と技能試験に合格することが必要となります。

 

技能試験を受験する際、特に受験資格はありません。

受験を希望する人は、ホームページなどで告知している「実施要領」を確認し、申し込みを行い、受験することになります。


さらに、「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」あるいは「日本語能力試験(JLPT)N4以上」も、「実施要領」を確認した上で、受験します。
ただし、既に「日本語能力試験N4」以上を取得している人は、受験する必要はありません。


技能測定試験と日本語試験に合格した人は、受入れ企業(特定技能所属機関)と直接に「雇用契約」を結ぶことになります。
そして、受入れ企業と雇用契約が成立した後は、在留資格の申請を行います。
申請の際には、次の資料が必要です。

 

  • 特定技能所属機関の概要を明らかにする資料
  • 活動の内容、期間、地位及び報酬を証する文書
  • 日本語能力を証する資料
     ※「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」合格証または「日本語能力試験認定結果及び成績に関する証明書」(N4以上)
  • 従事する業務に関して有する技能を証する資料
     ※「技能測定試験」合格証
  • 特定技能雇用契約の締結を仲介し登録支援機関等がある場合には、当該仲介機関の概要

 

特定技能「宿泊」の5年間における最大受入れ見込み数は22,000人とされています。宿泊分野において特定技能外国人が従事する業務としてはフロント、企画・広報、接客、レストランサービス等の宿泊サービスの提供となっていますが、特定技能外国人に風俗営業関連の接待を行わせてはいけません。


特定技能外国人を受け入れる機関は「旅館・ホテル営業」の許可を受けた者でなければならず、風俗営業関連施設であってはいけません。特定技能外国人を雇用する際は直接雇用のみとなっており、派遣社員を雇用することはできません。特定技能外国人を雇用した機関は国土交通省観光庁において設置されている宿泊分野特定技能協議会に参加し、調査や指導に必要な協力を行わなければなりません。


特定技能外国人を雇用する機関には、当該外国人が適正に「特定技能1号」の活動が行えるように職業、日常生活、社会生活上の支援をどのように行っていくかの支援計画を作成し、実施する義務がありますが、この支援計画の全部または実施を他の者に委託することも出来ます。


特定技能外国人に対する支援計画部分は他の産業分野と同様ですが、特定技能外国人が従事する業務や受け入れ機関の要件等宿泊分野独自の定めがある部分については所轄官庁である国土交通省観光庁のホームページ(http://www.mlit.go.jp/kankocho/page06_000162.html)等で情報収集をすると良いでしょう。

業界テストの特徴

宿泊分野において特定技能の在留資格の申請を行うためには、現状は技能試験と日本語能力試験に合格する必要があります。技能試験は一般社団法人宿泊業技能試験センターが行っており、試験内容としては宿泊業界で働くために必要とされる技能や知識を問う問題となっています。


具体的には「フロント業務」、「広報・企画業務」、「接客業務」、「レストラン・サービス業務」及び「安全衛生・その他基礎知識」の5つのカテゴリーから出題され、筆記試験と実技試験により宿泊業界で働くための技能を評価する試験です。宿泊分野の技能試験は日本国内7か所において2019年4月に第一回目が行われました。2019年秋ごろから技能試験を開始する業種が多い中、かなり早く試験が行われた業種になります。


また他業種がフィリピンやベトナム等の海外で技能試験を行う予定であるのに対し、宿泊分野は日本国内で試験を行ったという面においても特徴的だと言えるでしょう。ちなみに第一回目の技能試験の結果は受験者数391名、合格者数280名、合格率は71.6%という結果でした。(一般社団法人宿泊業技能試験センター発表(https://caipt.or.jp/download/result_20190525.pdf))

 

所属機関の条件

特定技能「宿泊」の所属機関には、次のような条件が課されます。

 

  1. 対象となる機関
     ・旅館業法第2条第2項に規定する「旅館・ホテル営業」の許可を受けた機関であること
     ・風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(以下「風俗営業法」と言う。)第2条第6項第4号に規定する「施設」に該当しないこと
     ・特定技能外国人に対して、風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」を行わせないこと
  2. 国土交通省が設置する「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になること
     所属機関は、「宿泊事業者団体」の加盟の有無に関係なく、「宿泊分野特定技能協議会」の構成員にならなければなりません。ただし、「宿泊分野特定技能協議会」の構成員になることで、宿泊事業者団体の加盟が義務づけられるわけではありません。

  3. 所属機関は、協議会に対して必要な協力を行うこと

  4. 所属機関は、国土交通省あるいはその委託を受けた機関等が行う調査、または指導に対して、必要な協力を行うこと

  5. 所属機関は、登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の実施を委託する場合は、上記2~4の条件を全て満たす登録支援機関に委託すること

 

雇用後の手続き

特定技能「宿泊」の申請の際に、以下の書類を準備する必要があります。

 

  1. 特定技能所属機関の概要を明らかにする資料

  2. 活動の内容、期間、地位及び報酬を証する書面
      ※申請人との間で結んだ労働契約書等

  3. 日本語能力を証する資料(技能評価試験合格証)
  4. 従事する業務に関して、申請人が有する技能を証する資料

  5. 特定技能雇用契約の締結に関して、仲介した機関がある場合の仲介の概要


上記のうち、1、2、3及び5は、基本的に受け入れ機関が準備します。
なお、3の合格証は、就職が決定した後で、受験者本人、受け入れ機関の双方から申請があり、承認されて、宿泊業技能試験センターから、受け入れ機関に郵送されます。

 

今後の展望について

宿泊業界は「特定技能」の在留資格取得に向けていち早く動いた業界の一つです。それだけ業界内の人手不足に対する危機感が大きいということの現れなのかもしれません。


既述の通り、今後5年間における特定技能「宿泊」の受入上限人数は22,000人ですが、国土交通省の試算だと令和5年までに全国で10万人程度の人手不足が生じる見込みとなっていますので、業界の動きが活発なのは当然なのかもしれません。2024年時点において22,000人受け入れたものの、業界の人手不足感が解消されなければ受け入れ人数を増やすかもしれませんが、それまでに上限に達してしまうと特定技能外国人を雇用することができなくなるかもしれません。


特定技能外国人を雇用したいとお考えであれば早目の対応が必要かもしれません。また現状技能実習2号の移行が認められていない技能実習「宿泊」ですが、現在技能実習2号への移行対象職種に追加する動きがあります。技能実習2号への移行対象職種となれば、技能実習2号修了者は無試験で特定技能への在留資格変更申請が可能となります。また技能試験も第一回目は国内で行われましたが、今後は海外でも技能試験が行われるかもしれません。

まとめ

宿泊業界は人手不足感が強い業界という事もあり、他業種に先駆けて動きが活発な業界です。そのため技能実習2号への移行対象職種への追加等、制度自体も変化が激しい業界と言えるかもしれません。国土交通省観光庁や法務省出入国在留管理局庁等のホームページをチェックするなどして最新の情報を得ておくことをお勧めします。