平成30年9月13日、外国人労働者受け入れのための新在留資格の検討会初会合が、法務省で行われました。
この会合は、新しいビザ(在留資格)である“特定技能”を創設して、外国人労働者の受け入れ窓口を拡大していく具体策を話し合うものです。

そこで、“特定技能”というビザ(在留資格)は一体どのようなものなのか、詳しくみていきましょう。

 

“特定技能”というビザ(在留資格)の内容

2019年4月からスタートした “特定技能”というビザ(在留資格)は、就労ビザ(在留資格)の一つとして創設され、これまで認められなかった現場作業となる職種について、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材について、就労を認める新たな在留資格です。

しかし、全ての業種で認められるわけではないようなのです。またいろいろと制約もあるようなので、どのようなビザ(在留資格)なのか、その内容を明らかにしていきましょう。

 

認められる業種

“特定技能”というビザ(在留資格)は、人手不足が著しいとされる業種に限られています。
つまり指定された業種については、外国人の方が単純労働の担い手となることができます。

業種数は、制度開始後、徐々に拡大され、2020年2月現在では、介護、建設、宿泊、農漁業、食品製造業、外食業などの14分野が認められています。

出入国在留管理庁「新たな外国人材の受け入れ及び共生社会実現に向けた取組

 

制限

移民政策の転換を行うわけではないので、“特定技能”というビザ(在留資格)では、定住を認めません。
特定技能1号では、家族の帯同は認められず、上限は5年間です。1号終了後に2号に移行することも可能で、2号は、要件を満たせば家族帯同も認められ、上限年数はなく、長く日本で働くことができます。(注1)

(注1)現時点では、特定技能ビザから永住許可の申請は不可。

 

“特定技能”と“技能実習”との違い

特定技能ビザと技能実習ビザは、同じような内容の仕事ができるビザですが、その目的や制度に大きな違いがあります。どのような違いがあるのか、比べてみましょう。

 

目的の違い

“技能実習”ビザ(在留資格)とは、発展途上地域の経済発展を担う人造りに、日本における技術・技能・知識を移転させることで寄与する制度です。
労働力不足を補う制度ではありません(外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律第3条2項)。

しかし、“特定技能”というビザ(在留資格)は不足する労働力を補充する制度です。
この点において、“技能実習”ビザ(在留資格)と“特定技能”というビザ(在留資格)は決定的に異なっています。

技能実習と特定技能、どちらが適しているか?

技能実習

技能実習では、日本で技術を覚えさせることが目的であるため、技術を習得したら、帰国しなければなりません。
また、あまり日本語ができない状態で入国してくるケースも多く、日本語や技術を一から教える必要があります。

技能実習は、1号から3号まであり、まず1号から始まり、1年経過後に試験を受け、合格できれば、2号へと進み、最長2年さらなる技術習得を目指します。

その後、試験を受けて合格すれば3号となり、最長2年継続することができます。
1号から3号まで、最大通算5年間働くことができます。
そして、帰国して自分の国でその技術を生かすという役目を果たします。

特定技能

一方の特定技能は、すでに技能を持っている状態で、その技能を生かして働くことを目的としています。
さらに、日本語能力も一定程度必要ですので、最初から全部教える必要はなく、労働力として雇うことができます。

短期間での入れ替えを考えているのであれば、技能実習が向いていますが、技能を身につけ、長期間安定して働いてもらいたいと考えるのであれば、特定技能が向いているでしょう。

ただし、特定技能の制度新設によって、技能実習から特定技能への移行も可能になったため、技能実習で技能を習得させた上で、特定技能で雇用するということもできます。
それぞれの良さを生かして、活用することができます。

 

特定技能1号と2号の違い

特定技能には、2020年4月現在、1号と2号があります。
どのような違いがあるか、それぞれの内容をみてみましょう。

特定技能1号

業種や期間など様々な制限があります。

 ・業種
  介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・船用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の14分野

 ・在留期間
  1年、6か月又は4か月ごとの更新。ただし、通算5年まで。

 ・技能水準
  特定産業分野に関する相当程度の知識又は経験

 ・日本語能力
  日本語能力試験N4以上(試験での確認が必要)

 ・家族の帯同
  基本的に認められない

 ・受入れ機関又は登録支援機関
  支援の対象

 

特定技能2号

1号に比べて、比較的制限が緩くなりますが、業種は1号に比べて制限されます。
2019年4月から開始した制度のため、現在は1号しかいませんが、1号の更新上限の5年経過後に、順次2号になる人がいると想定されています。
そのため、現在は2業種のみに限定されていますが、今後、2号の業種も拡大される可能性があります。

 ・業種
  建設、造船・船用工業

 ・在留期間
  3年、1年又は6か月ごとの更新。更新の上限はなし。

 ・技能水準
  特定産業分野に関する熟練した技能

 ・日本語能力
  試験での確認は不要

 ・家族の帯同
  要件を満たせば可能

 ・受入れ機関又は登録支援機関
  支援の対象外

 

“特定技能”というビザ(在留資格)取得のための2つのルート

外国人の方が、“特定技能”というビザ(在留資格)を取得する方法は、以下の2通りになるようです。

 

特定技能試験合格

試験を受けて合格することで、特定技能ビザを取得することができます。
試験は、国内と国外で行われ、日本入国前に国外試験を受けて、ビザを取得するための資格を得ることもできます。

また、国内で別のビザで滞在していて、特定技能ビザに変更したい場合は、国内試験を受けて資格を取得することができます。
試験合格で資格を得るためには、下記の条件が必要です。

受験資格(国内試験の場合)

18歳以上で、在留資格を有していて、日本に滞在している外国人の方。
2020年4月1日から、3か月の短期滞在ビザでも受験可能となりました。
ただし、ビザが切れるなどして不法滞在している方は、対象外になります。

特定技能試験の合格

国が要求する水準にある試験を業界団体が作成、実施し、外国人の方がその試験に合格すれば、“特定技能”というビザ(在留資格)が認められる資格を得ます。
この試験は各分野における実際の技能レベルを測ります。

日本語能力試験の合格

技能試験合格の他、日本語能力試験の合格が必要です。
国際交流基金日本語基本テストまたは日本語能力試験N4以上の合格が条件となっています。

ただし、介護の分野においては、上記の日本語能力試験の他、介護における日本語が必要となる介護日本語評価試験に合格する必要があります。


日本語能力試験とは、N1からN5まであり、N1が一番高いレベルです。
N4は、基本的な語彙や漢字を使って書かれた日常生活の中でも身近な話題の文章を読んで理解できるレベルです。いわば、日常生活に必要な簡単な日本語が読めて、聞ける、というレベルです。

留学などで長期間日本に滞在している外国人であれば、日本語能力についていは、それほど困難なレベルではないでしょう。

技能実習修了生

技能実習生については、技能実習1号から技能実習2号の計3年間が終了していることを条件として、特定技能試験が免除されます。また、日本語能力試験についても免除されます。

つまり、技能実習生として3年間が終了したら、“特定技能”というビザ(在留資格)が認められる資格を得ることができるのです。

ただし、技能実習ビザから特定技能ビザに変更する場合は、技能実習で行っていた産業分野でしか変更をすることができません。

 

特定技能ビザの申請方法・必要書類

すでに別の在留資格で国内に滞在している場合は、他のビザの場合と同じように、住居地を管轄する入国管理局へ在留資格変更許可申請を行います。
あるいは、海外で試験を受験し、入国しようとする場合は、呼び寄せて雇用しようとする会社が在留資格認定証明書申請を行います。

必要書類は、申請書と本人の写真の他、雇用条件書など、雇用する会社によってそれぞれ必要書類があります。

 

特定技能所属機関(受け入れ機関)と登録支援機関

特定技能1号では、特定技能外国人に対して、居住の確保など日常生活の支援があることが条件になっています。
外国人を雇用する会社(受け入れ機関)は、支援計画を作成し、計画に沿ってそれを実施しなければなりません。

支援計画は、入国時の送迎から住居確保、日常生活の支援、相談者の確保など、10項目必要です。

しかし、受け入れ機関が支援をすべてできるとは限らないため、外国人の支援のみを登録支援機関に外部委託することができます。
登録支援機関は、特定技能ビザで働く外国人の支援を行う機関で、出入国在留管理庁への届出を行って登録している機関です。
雇用する会社内で支援が難しい場合は、こうした登録支援機関を利用することができます。

 

特定技能ビザの外国人を雇用する時の注意点

雇用時に必要なこと

報酬額が日本人と同等など、適切な雇用契約の合意が必要です。
社会保険についても、日本人の採用時と同じです。それに加えて、会社が、労働法令に違反していないことも必要です。

さらに、外国人に対する支援体制や支援計画が適切であることが求められます。
支援については、社内で支援が難しい場合は、登録支援機関に委託する必要があります。

雇用契約の注意点

特定技能ビザでは、雇用契約において満たすべき基準があります。
他の日本人従業員と同等の所定労働時間、報酬等、日本人と同じようにする必要があります。

加えて、原則直接雇用です。
例外的に派遣可能な場合もありますが、その際でも、契約時に派遣先や派遣期間が定められていることが必要です。このように様々な基準があるため、雇用契約を行う場合には注意が必要です。

支援計画の注意点

支援については、生活支援など省令で定める10項目を満たす必要があります。
計画だけではなく、実際に計画に沿って支援を行い、出入国管理庁に定期的に報告をする必要があります。

また、支援計画を変更する場合などは、随時入国管理庁に届け出が必要になります。

二国間取決め(MOC)の有無の確認

特定技能には、二国間取決め(MOC)と呼ばれるものがあり、高額な保証金を徴収するなどする悪質な仲介業者(ブローカー)対策のため、日本と相手国が取決めを行い、情報共有や対策など行っています。

2020年2月4日現在では、フィリピン、カンボジアなど12か国が署名しており、二国間取決め(MOC)がある国では、ブローカー等の問題に対して国として対策していると確認することができます。

業種によって必要とされるもの

特定技能は、各分野の技能試験と日本語能力試験の他、業種によっては、雇用する会社が協議会などに参加することが条件とされているものがあります。
その業界の業界団体への所属を求められることがあり、その条件をクリアしているかどうか、確認が必要です。

 

特定技能ビザの柔軟性

特定技能は、技能実習と違って、働くための在留資格(就労ビザ)であるため、転職も可能です。
ただし、身に着けた技能をもとに働いているため、働いていた業種と同じ業種に限られます。

まだ制度が始まったばかりのため、転職に関する話題は出ていませんが、今後、特定技能の数が増えると話題になってくるかもしれません。

特定技能は、雇用する会社(受入れ機関)と雇用契約をし、支援を受けることになります。
特定技能の目的から考えて、資格外活動許可を取得してダブルワークなどをすることは認められないでしょう。

 

まとめ

深刻な労働力不足を補うために、特定技能ビザという新たな就労ビザが作られました。
特定技能ビザは、1号と2号があり、1号のあと、2号に移行することが想定されています。現在は14分野の業種で働くことができます。

国内外で行われる各業種の特定技能試験に合格し、N4以上の日本語能力で、特定技能ビザを取れる資格を得られます。
国内での受験対象者も、短期滞在を含めた在留資格がある外国人とされ、外国人の方も受験しやすくなっています。

一方で、雇用する会社(受入れ機関)では、外国人が不当な扱いを受けないよう、雇用契約や支援計画などの様々な条件があります。
人材不足を担う制度として、今後ますます注目されます。