在留資格「特定技能」は、今後の労働人口減少への対策として、人手不足が深刻な産業分に、専門性・技能を持っている外国人労働者を受け入れる制度で、2019年4月1日から運用されています。

この特定技能の中に「漁業」がありますが、この制度が設けられた背景、取得要件、雇用する際の条件などを詳しくご説明いたします。

 

特定技能とは?

日本は、諸外国と違って、「移民政策」を取っていません。
それによって、日本では長らく、原則的に単純労働を行う外国人労働者の雇用は禁止されていました。

しかし、1997年をピークにして、日本での生産人口は減少しています。
このような事態を打開するために、特定の業種に限定して、外国人労働者の雇用を認めるようにしました。


これが、「特定技能」の制度です。
認められている業種は、建設業、造船・船用工業、自動車整備業、航空業、宿泊業介護ビルクリーニング農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、素形材産業、産業機械製造業、電子・電気機器関連産業の14種類です。

 

特定技能「漁業」ができた背景

現在日本の漁業では、年々就業者が減少しています。
農林水産省が公表している「漁業センサス」によると、1998年(平成10年)に27万7,000人であった漁業就業者数は、20年後の2018年(平成30年)には、15万人に半減しています。

また、漁業分野で雇用されている就業者は、この分野うち2割を65歳以上が占めるため、今後の大量の離職が予想されます。


このような状況から、政府は特定技能「漁業」を設けて、漁業分野での人手不足を解消しようとしたのです。
また併せて、作業効率を高めるための方法として、自動給餌機や自動カキ剥き機の導入などによって、生産性の向上を図る方策にも取り組んでいました。


ただ、漁業専門学校の入学者の定員割れが長年続いていたり、漁業関連の機械を整備できる人の高齢化が進んでいたりして、人手不足の解消は厳しい状況です。
農林水産省によると、2023年(令和5年)までの人手不足は、2万人程度になると予想されています。

 

特定技能「漁業」の業務

特定技能「漁業」の業務は、「漁業」と「養殖業」の2種類です。

漁業

まず「漁業」ですが、具体的な業務内容は、次の6つです。

  1. 漁具の製作・補修
  2. 水産動植物の探索
  3. 漁具・漁労機械の操作
  4. 水産動植物の採捕
  5. 魚獲物の処理・保蔵
  6. 安全衛生の確保

 

さらに、漁業に従事する日本人が従事する業務について、特定技能の外国人は、以下の付随的業務を行うこともできます。

  1. 漁具・漁労機械の点検換装
  2. 船体の補修・清掃
  3. 魚倉漁具保管庫、番屋の清掃
  4. 漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積み込み
  5. 出漁に係る炊事・賄い
  6. 採捕した水産植物の生け簀における畜養その他付随的な養殖
  7. 自家生産物の運搬・陳列・販売
  8. 自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
  9. 魚市場・陸揚げ港での漁獲物の選別・仕分け
  10. 体験型漁業の際に乗客が行う水産植物の採捕の補助
  11. 社内外における研修など

 

養殖業

次に、「養殖業」ですが、具体的な業務は、次の4つです。

  1. 養殖資材の制作・補修・管理
  2. 養殖業水産動植物の育成管理
  3. 養殖業水産動植物の収獲・処理
  4. 安全衛生の確保

 

さらに、養殖業に従事する日本人が従事する業務について、特定技能の外国人は、以下の付随的業務を行うこともできます。

  1. 漁具・漁労機械の点検換装
  2. 船体の補修・清掃
  3. 漁倉、漁具保管庫、番屋の清掃
  4. 漁船への餌、氷、燃油、食材、日用品その他の操業・生活資材の仕込み・積み込み
  5. 養殖用の機械・設備・器工具等の清掃・消毒・管理・保守
  6. 鳥獣に対する駆除、追い払い、防護ネット・テグス張ち等の養殖場における食害防止
  7. 養殖水産植物の餌となる水産植物や養殖用稚魚の採捕その他付随的な漁業
  8. 自家生産物の運搬・陳列・販売
  9. 自家生産物又は当該生産に伴う副産物を原料又は材料の一部として使用する製造・加工及び当該製造物・加工物の運搬・陳列・販売
  10. 魚市場・陸揚げ港での漁獲物の選別・仕分け
  11. 体験型漁業の際に乗客が行う水産植物の採捕の補助
  12. 社内外における研修など

 

「特定技能「漁業」の取得要件

在留資格「特定技能」の取得要件は、以下の2つです。

1つは、技能試験である「特定技能評価試験」と日本語試験である「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格することで在留資格「特定技能」を取得する方法です。

まず1つ目は、「特定技能評価試験」と「日本語評価試験」に合格することです。
「特定技能評価試験」は、特定技能14業種それぞれ異なる試験であり、特定技能「漁業」では農林水産省の定める「漁業技能測定試験(漁業または養殖業)」を受験することになります。

「漁業技能測定試験」は、外国人が来日する前に、漁業分野の技能、知識を確認・評価する試験です。
この試験は、2019年4月に在留資格「特定技能」の施行後、農林水産省が選定した機関である「大日本水産会」が実施しています。

この試験には、「漁業」と「養殖業」の2種類で、それぞれ漁業と養殖業の専門性や技能を身に着けているかが確認されます。


2つ目は、「技能実習2号」を修了し、試験を受けずに、在留資格「特定技能」へ移行する方法です。
この方法により、「特定技能」を得ることになり、さらに最長5年日本に滞在でき、在留期間を延長できることになります。
※出典(法務省・農林水産省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領

外国人の雇用条件

特定技能「漁業」の外国人を受け入れには、以下の条件が必須です。

  1. 労働、社会保険及び租税に関する法令を遵守していること
  2. 1年以内に特定技能外国人材と同種の業務に従事する労働者を非自発的に離職させていないこと
  3. 1年以内に受入れ機関の責めに帰すべき事由により、外国人の行方不明者を発生させていないこと
  4. 欠格事由(5年以内に出入国・労働法令違反がないこと等)に該当しないこと
  5. 特定技能外国人材の活動内容に係る文書を作成し、雇用契約終了日から1年以上備えて置くこと
  6. 特定技能外国人材等が保証金の徴収等をされていることを受入れ機関が認識して雇用契約を締結していないこと
  7. 受入れ機関が違約金を定める契約等を締結していないこと
  8. 支援に要する費用を直接又は間接に特定技能外国人材に負担させないこと
  9. 労働者派遣の場合は、派遣先が①~④の基準に適合すること
  10. 労災保険関係の成立の届出等の措置を講じていること
  11. 雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること
  12. 報酬を預貯金口座へ振込等により支払うこと

 

もう一つの条件は、特定技能「漁業」を取得した外国人を雇う場合、外国人の受け入れ事業者である特定技能所属機関が、「漁業分野特定技能協議会」に入会することです。

「漁業分野特定技能協議会」とは、漁業分野における「特定技能制度」が適切に運用されるために水産庁が設置した機関です。

この機関は、農林水産省、学識者、登録支援機関、漁業事業者及び団体、その他の関係者で構成されています。また、受け入れ事業者は、「漁業分野特定技能協議会」に、必要な協力を行わなければなりません。

 

なお、「漁業分野特定技能協議会」では、以下の要件に従うことが義務付けられています。

 

  1. 特定技能外国人材を受け入れた日から4ヶ月以内に協議会の構成員になること
  2. 協議会(分科会を含む)において協議が調った措置を講じること
  3. 協議会及びその構成員に対し、必要な協力を行うこと

※出典(法務省・農林水産省「特定の分野に係る特定技能外国人受入れに関する運用要領


まとめ

漁業分野でも、就業人口が減少しており、今後もあまり増加の見込はありません。

そこで、「特定技能」の新設によって、外国人労働者を確保する政策になったのです。
ただ、要件が厳密ですから、この制度をきちんと理解し、運用することが重要です。