2019年4月1日より人手不足が深刻な産業分野において新たに「特定技能」という在留資格で外国人材の受入れが可能となりました。今回はその産業分野のうち、「航空業」における特定技能外国人雇用について解説していきます。

特定技能とは

平成30年(2018年)12月8日、「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律」(以下「改正入管法」と呼びます。)が成立し、同月14日に公布されました。

「特定技能」はこの改正入管法で創設された新たな在留資格で、2019年4月から受入れが始まりました。少子高齢化による深刻な人手不足の救世主として外国人材の労働力は大いに期待されています。

 

「航空業」が産業分野に加えられた理由

特定技能はどの業種でも受入れが出来るというものではありません。
企業や業界内で生産性の向上や国内人材の確保のための取組を行なってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業分野において受入れが可能です。

現在その産業分野は14あり、そのうちの一つが今回取り上げる「航空業」です。では、実際航空業の人手不足はどれほど深刻なのでしょうか。

 

航空需要の増大

国土交通省 新たな外国人材の受入れに係る制度説明会資料より抜粋(平成31年2月8日時点)
近年の訪日外国人旅行客増加や企業活動の国際化等を背景とし、航空機を使用した人の移動が増加しています。

実際、国内空港における国際線着陸回数の推移を見ても国際線旅客数は5年間で約1.6倍、国際線着陸回数は5年間で約1.5倍に増加しています。


また政府は訪日外国人旅行者数の目標を2020年に4,000万人、2030年に6,000万人としていました。この目標達成の観点から更なる国際線旅客の増加が予想され、この増加に対応するための人員が不足することが懸念事項とされました。

 

航空分野の人手不足感と対応する取組とは

国土交通省「新たな外国人材の受入れに係る制度説明会資料」によると、航空分野の代表的な職種である陸上荷役・運搬作業員の有効求人倍率は4.97倍(平成29年度数値)にもなっています。

全業種の有効求人倍率が1.54倍ですから、航空業の人手不足感がいかに深刻かお分かりいただけることと思います。
平成30年1月30日に国土交通省から発表された資料からも航空旅客数の増加に対し、航空運輸業就業者数が増加していないことが分かります。


またこれに加えて航空機整備分野における整備士の高齢化も深刻であり、今後就労人数が多い60代、50代の大量退職が予想され更なる人手不足が懸念材料となっています。

以上のことから、国土交通省としてもIT技術や新型機器導入による作業の効率化及び新型航空機導入による作業工数の縮減等による生産性向上のための取組や職場環境改善を行い新規雇用の増加及び若年離職者の抑制による国内人材確保のための取組み等を行っていますが、人手不足を補うまでには至らず航空分野において特定技能外国人の受入が必要であるという結論になりました。

航空分野では2023年までに2,200人を上限として受入れを計画しています。

 

特定技能「航空業」の具体的な業務内容

具体的にどのような業務において特定技能外国人の受入が可能なのかについてみていきます。

航空業の業務内容は2区分となります。それぞれの区分ごとに具体的な業務を見ていきましょう。なお、これらの業務は資格所持者等の指導者やチームリーダーの指示のもと業務を行っていきます。

空港グランドハンドリング業務

【航空機地上走行支援業務】
航空機の駐機場への誘導や移動を行う業務です。

【手荷物・貨物取扱業務】
手荷物や貨物の仕分け、貨物輸送コンテナへの積み降ろしやコンテナ解体を行う業務です。

【手荷物・貨物の搭降載取扱業務】
手荷物や貨物を航空機まで移送し搭載する、積み荷を降ろす業務です。

【航空機内外の清掃整備業務】
客室内の清掃、遺失物等の検索、機内用品の補充や機体の洗浄等を行う業務です。

 

航空機整備業務

【運航整備】
空港に到着した航空機に対して次のフライトまでの間整備を行う業務です。

【機体整備】
1週間から2週間かけて機体の隅々まで整備を行う業務です。これは通常1年から1年半毎に行います。

【装備品・原動機整備】
機体から取り下ろされた脚部や動翼部分、機内の計器類やエンジンの整備を行う業務です。

 

特定技能「航空業」で求められる人材と取得要件

特定技能外国人は18歳以上であり、受入れ時において「産業上の分野に属する相当程度の知識又は経験を要する技能」を有している即戦力である事が条件となります。

具体的には資格者や現場リーダーから出される指示を理解しなければなりませんので、ある程度の日本語能力が必要となります。


また指示を理解したうえで、空港グランドハンドリングや航空機整備の業務を遂行しなければなりませんので、業務を遂行できる知識又は技能を有している人材でなければならないのです。

では、「ある程度の日本語能力がある」、「相当程度の業務知識がある」と認められ、航空業の特定技能外国人として働くことができるのでしょうか。

 

特定技能「航空業」分野で働く方法

特定技能の在留資格を取得するためには2つの方法があります。

 

空港グランドハンドリング職種の技能実習2号(または3号)を良好に修了する

現在空港グランドハンドリング職種の技能実習生として日本で働いている、又は以前実習生として日本で働いていた方は下記の技能評価試験及び日本語能力試験を受けずに特定技能外国人として働くことができます。

「良好に」という条件は技能実習2号で受験する技能評価試験に合格するか、不合格の場合又は受験していない場合は実習実施者や監理団体から評価調書を出してもらうことでクリアできます。「良好に修了」ですから途中で失踪した技能実習生や現在技能実習中の外国人は対象外となります。


しかし、「空港グランドハンドリング」職種の技能実習を経験していれば誰でも航空分野で働けるわけではなく、「航空機地上支援」作業の技能実習を経験した外国人に限られます。
残念ながら「航空貨物取扱作業」及び「客室清掃作業」に従事している実習生は試験免除の対象とはなりませんので、ご注意ください。

 

航空分野技能評価試験に合格する

技能実習未経験者及び技能実習とは異なる産業分野又は業務区分で特定技能として働きたい場合には、働こうと考えている業務区分の技能評価試験と日本語試験に合格する必要があります。

日本語は日本語能力試験N4以上を取得するか国際交流基金日本語基礎テストA2レベル以上を取得する必要があります。
航空分野の業務は上記のとおり「空港グランドハンドリング業務」と「航空機整備業務」ですが、「航空機整備業務」に対応する技能実習職種がありません。

そのため「空港グランドハンドリング」職種の技能実習経験者の方でも、上記の通り「航空機地上支援」作業以外の作業に従事していた方、または「航空機整備業務」の特定技能業務に従事したい方は技能評価試験を受験する必要があります。ただし、この場合、日本語試験は免除されます。


技能評価試験は「空港グランドハンドリング業務」と「航空機整備業務」があり、筆記と実技が行われます。
試験は原則日本語です。ただし、専門用語等については一部注釈として他言語での表現がされていることもあります。


筆記試験は両業務とも概ね30問程度の○×式であり、実技試験は写真やイラスト等を用いた判断試験とされており、業務を行うにあたっての基本事項が問われるとされています。

「空港グランドハンドリング業務」では航空機の誘導、牽引保佐、貨物や手荷物の荷崩れを起こさないような積み付け等が出来る基本的な知識があるかどうかが問われます。

「航空機整備業務」では国家資格保持者の整備士の指示のもと、航空機の簡単な点検や部品の交換作業等ができる整備の基本技術を有しているか否かが問われます


「空港グランドハンドリング」の評価試験は令和元年度東京で2回、フィリピンの3都市(メトロ、マニラ、マカティ)で行われました。合格率は36.1%(東京1回目)、58.4%(東京2回目)、77.7%(フィリピン)となっています。


「航空機整備業務」の評価試験は令和元年度モンゴルのウランバートルで行われ合格率は23.5%でした。
両業務とも、学科及び実技試験においては正答率65%以上が合格とされました。


受験料は日本で受験する場合は4,000円、海外で受験する場合は日本円で2,000円でした。
試験要項、結果等は国土交通省のホームページに掲載されていますので、参考にしてください。



以前は日本において評価試験を受験できるのは「中長期在留者及び過去に中長期在留者として在留していた経験を有する方」等に限られていましたが、2020年4月1日以降、国内での評価試験受験資格が拡大され、「在留資格を有する者」として在留資格をもって在留する方については一律に受験が認められました。

これにより、試験を受ける目的で「短期滞在」の在留資格で入国し受験することが可能になりました。
ただし、在留資格を有していない外国人は日本での受験はできませんので、不法残留者の受験はできません。

試験についての情報は随時法務省のホームページや経済産業省のホームページ等に掲載されていきますので、こまめに確認しておくと良いでしょう。

 

特定技能「航空業」において外国人を雇用する際の注意点

航空業分野において特定技能外国人を雇用する際には直接雇用でなければなりません。
特定技能では派遣が認められているのは農業と漁業分野のみだからです。


受入れ企業は空港管理規則に基づく構内営業承認等を受けた事業者又は航空法に基づく航空機整備等に係る認定事業場を有する事業者である必要があります。

また空港グランドハンドリング業務で特定技能外国人を受入れる場合は空港グランドハンドリング業務を営む者でなければなりませんし、航空機整業務で特定技能外国人を受入れる場合は国土交通大臣により航空機整備等に係る能力について認定を受けた者でなければなりません。


当然労働、社会保険や租税に関する法令を遵守している事なども求められます。
また特定技能外国人を受け入れた機関又は当該機関から支援計画の全部の実施を委託された登録支援機関は、特定技能外国人受入れから4ヶ月以内に航空分野特定技能協議会に加入し、必要な協力等を行っていかなければなりません。


その他にも国土交通省又はその委託を受けた者が行う調査や指導に対し、必要な協力を行う事が求められています。
なお航空業分野においては常勤職員数に対し、雇用する特定技能外国人受入れ人数の上限等は特に定められていません。

 

任せて良い業務、だめな業務

航空業分野の特定技能外国人はできる業務、出来ない業務が決められています。

主には上記に記した業務に従事することとなりますが、それに従事している日本人が通常従事するような付随業務を行うことは差し支えありません。例えば日報を作成したり、備品を発注したりするような事務作業、業務の前後の整理整頓、清掃作業、作業場所の除雪作業等です。


しかし、これらの作業が主となってしまい、例えば整備業務をほとんどやっていないという状況にならないようにしてください。特定技能外国人は従事できる業務区分が決められています。
「航空機整備業務」の区分で採用した外国人を「空港グランドハンドリング業務」に従事させるなどしないよう注意してください。

 

まとめ

航空業は訪日外国人の増加やLLCの事業拡大に伴い国際線旅客数及び着陸回数が増えており、航空需要は拡大しているにもかかわらず、航空専門学校への入学者数の定員割れが常態化したり、整備士の高齢化による退職問題があったりと人材の確保が非常に困難な業界です。

特定技能外国人は一定レベルの専門性・技能を有しており即戦力としての活躍が期待されています。法令を遵守して雇用することで我が国における航空輸送の基盤を支える頼もしい存在となってくれるでしょう。