深刻な人手不足への対応から特定技能という在留資格(ビザ)ができました。

人材を確保することが困難な「特定産業分野」に外国人材を受入れる為のビザです。その「特定産業分野」の中に飲食料品製造業分野が入っています。


飲食料品製造業分野は、事業所数及び従業者数が製造業の中では第1位で、地域経済の観点からも雇用と生産を支える産業として重要な役割を担っている分野です。

それでは、飲食料品製造業分野の特定技能ビザについてご説明したいと思います。

 

特定技能とは

まずは特定技能についてのご説明です。

上記にもありますが、特定技能は、深刻化する人手不足に対応するため、2019年4月1日にできたビザです。

専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れる為のビザになります。


人材を確保することが困難な、介護ビルクリーニング素形材産業産業機械製造業電気・電子情報関連産業建設造船・舶用工業自動車整備航空宿泊農業漁業,飲食料品製造業,外食業の14分野である「特定産業分野」で外国人材を雇用できるビザで、1号と2号があります。

このうち2分野(建設、造船・舶用工業)のみ特定技能2号の受入れが可能です。


特定技能1号ビザを取得するには、各技能試験と日本語試験に合格する方法か、又は同じ分野の技能実習2号(技能実習との関連性のある業務)を修了する方法がありますが、特定技能試験の受験資格について令和2年4月1日以降の国内試験から拡大されています。
特定技能1号は家族の帯同は基本的に認められません。

【出典】
出入国在留管理庁 : 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
法務省 : 【重要なお知らせ】令和2年4月1日以降の国内試験から受験資格が拡大されます。

 

特定技能「飲食料品製造業」ができた背景

それでは、最初に特定技能「飲食料品製造業」ができた背景について、飲食料品製造業分野の現状や活用具合を見てみましょう。

飲食料品製造業分野の現状と課題

飲食料品製造業分野の現状ですが、飲食料品製造業分野では2023年には73,000人程度の人手不足が見込まれています。

また、飲食料品製造業分野における労働力需給の状況は、他の製造業と比べ雇用人員不足感が高い状況にあります。平成29年度の飲食料品製造業分野の有効求人倍率は2.78倍であり、1.54倍である全体より大きくなっています。

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資料:厚生労働省データを元に農林水産省にて算出

そして、飲食料品製造業分野においては、ある程度目視や手作業に頼らざるを得ない工程もあり機械化の取組にも限界があります。

更に平成30年の食品衛生法改正により、令和2年6月までに全ての飲食料品製造業者にHACCPに沿った衛生管理の制度化への対応が求められています。


今後の課題として、飲食料品の製造現場においてHACCPを含む衛生管理の知識を有する人材を確保していくことが急務ですが、人手不足の状況をすぐに改善することは大変難しい状況です。このため、特定技能外国人を受け入れることが必要不可欠となっているのです。

出典:農林水産省食料産業局「飲食料品製造業分野における外国人材受入れ拡大について

 

実際の活用状況

それでは、実際に飲食料品製造業の特定技能はどのくらい活用されているのでしょうか。

2020年7月末の速報値では、特定技能で働く外国人総数は、6,669人です。

そのうち飲食料品製造業は2,365人で最も多いですが、飲食料品製造業分野での2023年までの受入れ見込数が最大34,000 人ですので7月末時点では、まだ受入れ見込みの10%にもなっていないということになります。

出典:出入国在留管理庁 新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組
 別紙13 - 1 - 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針

 

求められる人材

特定技能「飲食料品製造業」で求められる人材とはどのような人材でしょうか?食料産業局にある技能水準からは以下のような人材となります。

食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識があって、飲食料品の製造・加工作業について、特段の育成・訓練を受けなくても、直ちにHACCPに沿った衛生管理に対応できる程度の業務に従事できる人材ということです。

つまり、飲食料品の製造現場でHACCPを含む衛生管理の知識(一定の専門性・技能)のある、即戦力となるような相当程度の知識又は経験がある人材です。


「飲食料品の製造工程で衛生管理ができる人材」について、もう少し詳しくいうと、

  1. 主な食中毒菌や異物混入に関する基本的な知識・技能がある人材。
    (食中毒菌の繁殖防止や殺菌の方法について正しい知識を身につけ、適切に対応できる)

  2. 食品等を衛生的に取り扱う基本的な知識・技能がある人材。
    (原料の選別・洗浄から製造・保管までの間、食品を常に衛生的に管理できる)

  3. 施設設備の整備と衛生管理に関する基本的な知識・技能がある人材。
    (施設内外の清掃・点検を的確に行い、施設設備の衛生状態を良好に管理できる)



ちなみにHACCPとは?

簡単にHACCPについてですが、Hazard Analysis and Critical Control Pointの頭文字を取っています。

HACCPは衛生管理の手法です。食品等事業者自らが食中毒菌汚染や異物混入等の危害要因(ハザード)を把握した上で、原材料の入荷から製品の出荷に至る全工程の中で、それらの危害要因を除去又は低減させるために特に重要な工程を管理し、製品の安全性を確保する衛生管理手法です。



出典:農林水産省食料産業局 飲食料品製造業分野における 外国人材受入れ拡大について
 飲食料品製造業分野 特定技能1号技能測定試験について
 別紙13 - 1 - 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
 HACCP(ハサップ)

 

具体的な業務内容

特定技能「飲食料品製造業」の具体的な業務内容についてご説明します。
1号特定技能外国人が従事する業務は、飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生管理です。飲食料品製造業分野の対象範囲は以下の7つに分類されます。

  1. 食料品製造業(食料品製造業の内訳は以下にあります)
  2. 清涼飲料製造業(清涼飲料水はアルコール分を含まない飲用で味や香りがある飲料水)
  3. 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
  4. 製氷業
  5. 菓子小売業(製造小売)
  6. パン小売業(製造小売)
  7. 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

 


食料品製造業の内訳と例は以下の通りです。

  1. 畜産食料品製造業(例:部分肉・冷凍肉、肉加工品 等)
  2. 水産食料品製造業(例:水産缶詰・瓶詰、海藻加工 等)
  3. 野菜缶詰・果実缶詰・農産保存食料品製造業(例:野菜漬物 等)
  4. 調味料製造業 (例:味そ、しょう油・食用アミノ酸 等)
  5. 糖類製造業(例:砂糖、ぶどう糖・水あめ・異性化糖 等)
  6. 精穀・製粉業(例:精米・精麦、小麦粉 等)
  7. パン・菓子製造業(例:生菓子、ビスケット類・干菓子 等)
  8. 動植物油脂製造業
  9. その他の食料品製造業(でんぷん、めん類、豆腐・油揚げ、あん類、冷凍調理食品、惣菜、すし・弁当・調理パン、レトルト食品等)

尚、上記の飲食料品(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生管理に加え、上記の業務に従事する日本人が通常従事している関連業務(例えば原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理の作業等)に付随的に従事してもかまいません。

出典:農林水産省食料産業局  飲食料品製造業分野における 外国人材受入れ拡大について
飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

 

取得要件

飲食料品製造業分野において特定技能1号のビザ(在留資格)の取得方法は以下となります。

①試験合格ルート
②2号技能実習を修了ルート

それぞれ見ていきます。

①試験合格ルート

以下の試験に合格すること。

(1)技能水準(試験区分)
「飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験」

(2)日本語能力水準
「国際交流基金日本語基礎テスト」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

②飲食料品製造業分野の第2号技能実習を修了ルート

食品製造関係の技能実習2号からの移行対象職種である以下の1~10は食品衛生の基本的な知識・経験等に基づく製造・加工、安全衛生の点で関連性が認められ、2号技能実習を修了した実習生は技能と日本語の試験が免除されます。

  1. 缶詰巻締
  2. 食鳥処理加工業
  3. 加熱性水産加工食品製造業
  4. 非加熱性水産加工食品製造業
  5. 水産練り製品製造
  6. 牛豚食肉処理加工業
  7. ハム・ソーセージ・ベーコン製造
  8. パン製造
  9. そう菜製造業
  10. 農産物漬物製造


出典:別紙13 - 1 - 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

 

試験について

上記の①試験合格ルートの試験である飲食料品製造業分野の特定技能1号技能測定試験について見ていきます。

受験資格

まず、受験資格です。

国外試験:
試験日において満17歳以上であること
但し、試験験の実施国政府等との合意に基づき引き上げることがある。
(例:インドネシアについては、満18歳以上)

国内試験:
在留資格を有する者で、以下のア及びイを満たすものとする
ア)試験日において満17歳以上であること
イ)退去強制令書の円滑な執行に協力するとして法務大臣が告示で定める外国政府又は地域の権限ある機関の発行した旅券を所持していること(=イラン、イスラム国以外の国)

留意事項として。
試験に合格することができたとしても,そのことをもって「特定技能」の在留資格が付与されることを保証したものではなく、試験合格者に係る在留資格認定証明書交付申請又は在留資格変更許可申請がなされたとしても、必ずしも在留資格認定証明書の交付や在留資格変更の許可を受けられるものではないということです。

 

受験料

次に受験料です。

技能試験実施機関は農林水産省と協議して、試験実施に係る費用、試験実施国の所得・物価水準、他国が行う類似の試験の試験料等を勘案して決定され、試験案内に示されます。

令和元年度の試験実績を見てみましょう。
・国内試験 8,000円
・国外試験(フィリピン、インドネシア) 約3,500円
となっています。

 

合格基準

そして、合格基準です。
学科試験及び実技試験の合計得点の 65%以上を合格基準としていますが、試験問題の難易度等に大きな偏りが生じた場合には補正を行って、農林水産省及び技能試験実施機関が合否の基準を決定します。

 

どのような技術や知識について見られるのか?

試験では具体的にどのような技術や知識について見られるのでしょうか?
内容について触れておきます。

  • 食品安全・品質管理の基本的な知識(食中毒に関する知識等)
  • 一般衛生管理の基礎(5S活動の取組の徹底等)
  • 製造工程管理の基礎(製造工程の管理と注意事項等)
  • HACCPによる製造工程の衛生管理に関する知識(HACCPとは等)
  • 労働安全衛生に関する知識(労働災害に関する知識等)


出典:飲食料品製造業特定技能1号技能測定試験実施要領
農林水産省 飲食料品製造業分野 特定技能1号技能測定試験について
最新の試験情報:特定技能1号技能測定試験 飲食料品製造業国内試験

 

外国人雇用条件について

特定技能「飲食料品製造業」において外国人を雇用する際の条件や注意点などはどうなっているのでしょうか?

雇用側の条件

まず、特定技能「飲食料品製造業」資格を持った外国人材の雇用を検討している受入れ機関(特定技能所属機関)に対して課す条件です。

  1. 特定技能所属機関は、農林水産省、関係業界団体、登録支援機関その他の関係者で構成される「食品産業特定技能協議会」(以下「協議会」という。)の構成員になり、必要な協力を行うこと。

  2. 特定技能所属機関は、農林水産省又はその委託を受けた者が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の聴取又は現地調査その他の指導に対し、必要な協力を行う。

 

注意点

次に注意点ですが、1号特定技能外国人が活動を行う特定技能所属機関の事業所は、日本標準産業分類に掲げる産業のうち、主として次のいずれかに掲げるものを行っていなければなりません。

09 食料品製造業
101 清涼飲料製造業
103 茶・コーヒー製造業(清涼飲料を除く)
104 製氷業
5861 菓子小売業(製造小売)
5863 パン小売業(製造小売)
5897 豆腐・かまぼこ等加工食品小売業

 

任せてよい業務について

1号特定技能外国人が従事する業務は、飲食料品7分類(酒類を除く)の製造・加工、安全衛生管理です。

また、それに加えて飲食料品7分類(酒類を除く)の業務に従事する日本人が通常従事している関連業務(例えば原料の調達・受入れ、製品の納品、清掃、事業所の管理の作業等)に付随的に従事してもかまいません。

上記「特定技能「飲食料品製造業」の具体的な業務内容について」にも詳しく述べていますのでご参考下さい。

 

特定技能「飲食料品製造業」外国人の雇用形態

最後に、飲食料品製造業分野の特定技能外国人の雇用形態については直接雇用のみです。


出典:出入国在留管理庁  新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組 
別紙13 - 1 - 飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針
「飲食料品製造業分野における特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する方針」に係る運用要領

 

まとめ

2020年7月末時点の特定技能1号在留外国人数 6,669人で、その中でも飲食料品製造業の特定技能が2,365人と最も多くなっており、飲食料品製造業分野は特定技能の活用が比較的進んでいる分野と思われます。

また、飲食料品製造業では2018年に食品衛生法改正があったので、それに沿った即戦力である特定技能人材が求められています。今後ますます飲食料品製造業分野の特定技能外国人の需要は高まり、活躍も期待されます。