時々、ニュースで話題になる技能実習生ですが、外国人技能実習制度とはどのような制度でしょうか。
制度の仕組みから現在の問題点までをわかりやすく解説します。

 

1. 技能実習制度の概要

技能実習制度とは

技能実習制度は、

  • 開発途上国等の人材を一定期間受け入れ、技能・技術・知識を修得させること
  • それらの人材が帰国後に日本で得た知識等を活用する事で、開発途上国の発展に寄与すること

が目的となっており、「人づくり」に主眼が置かれた制度となっています。
1960年代後半頃から、海外の現地法人の社員教育として研修制度が行われ、これを原型として、1993年に外国人技能実習制度として制度化されました。


1997年には、実習期間が3年へと延長されました。この当時の新規受け入れ研修生の数は約5万人でした。

その後、外国人技能実習制度の見直しとともに、入管法に規定されていた多くの部分を移す形で、2016年に「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が公布され、2017年に施行されました。
この新しい外国人技能実習法によって、それまで生じていた問題に対し、実習計画の認定や監理団体の許可などが新設されました。


令和元年末時点の技能実習生の数は、約41万人となっており、20年程で8倍増加したことになります。急増したのではなく、景気変動で増減を繰り返しながら徐々に人数が増えていったのが実情のようです。

 

技能実習生を受け入れるメリット

技能実習生を受け入れるメリットは、大きく分けて次の5つがあります。

1 向上心旺盛な若者を受け入れることで企業が活性化する
  技能実習生として日本に来る若い外国人は、概して素直であり、真摯な姿勢で仕事に取り組みます。
  そのような技能実習生を受入れることは、企業の従業員のみならず、アルバイトやパートにも良い影響を与えるまずです。そのことが、企業の活性化につながります。


2 既に基礎技術を習得しているため、入社後の教育が容易である
  技能実習生は受け入れ企業の職種について、既に基礎技術を習得しています。
  また、入国前に、日本語(日常会話・専門用語)、日本の生活習慣について、最低3ヶ月間の教育を受けています。従って、入社後の教育が比較的容易となります。


3 職場の改善や生産性が向上する
  技能実習生を受け入れ、技能等を指導することで、他の従業員が刺激を受けることになります。
  これによって、職場の改善、安全衛生、コンプライアンスに対する意識が向上することになります。


4 企業の国際化、販路の拡大を実現することができる
  技能実習生が本国に帰国した後に、現地で雇用すれば、新たな人材を海外で雇用する手間を省くことができます。
  これによって、海外進出のための人材確保で悩む必要がなくなります。


5 安定して優秀な人材を受け入れることができる
  技能実習生を希望する外国人は多数いる一方、募集人はかなりの少数です。
  つまり、実際に受け入れる技能実習生は、少数精鋭であり、優秀な人材が多いということになります。

 

技能実習生のメリット

技能実習生のメリットは、2つあります。

1 日本で生活することができ、働く対価として給与がもらえる
  技能実習生の多くは、開発途上国の人です、そのような人達にとっては、先進国である日本は、あこがれの国です。
  その日本で生活ができるだけでなく、働いて給与がもらえることは、開発途上国の若者にとって、大きな喜びであり、一つの目標でもあります。


2 本国に比べて稼げる
  先程ご説明したように、技能実習生の多くは開発途上国の若者ですから、日本の給与水準は本国の給与よりも高くなります。また、本国よりも日本の貨幣価値が高いため、日本で働いた給与は、本国で働くよりもかなり高くなります。

  従って、本国に比べて、短い時間で多くの給与がもらえる技能実習は、技能実習生にとって、大きな魅力です。

 

技能実習生制度の対象職種

技能実習生制度で、対象となる職種は次のとおりです。

 

農業関係(2職種6作業)

  • 耕種農業(施設園芸、畑作・野菜、果樹)
  • 畜産農業(養豚、養鶏、酪農)

 

漁業関係(2職種10作業)

  • 漁船漁業(かつお一本釣り漁業、延縄漁業、いか釣り漁業、まき網漁業、引き網漁業、刺し網漁業、定置網漁業、かに・えびかご漁業、棒受網漁業)
  • 養殖業(ほたてがい・まがき養殖作業)

 

建設関係(22職種33作業)

  • さく井(パーカッション式さく井工事、ロータリー式さく井工事)
  • 建築板金(ダクト板金、内外装板金)
  • 冷凍空気調和機器施工(冷凍空気調和機器施工)
  • 建具製作(木製建具手加工)
  • 建築大工(大工工事)
  • 型枠施工(型枠施工)
  • 鉄筋施工(鉄筋組立て)
  • とび(とび)
  • 石材施工(石材加工、石張り)
  • タイル張り(タイル張り)
  • かわらぶき(かわらぶき)
  • 左官(左官)
  • 配管(建設配管、プラント配管)
  • 熱絶緑施工(保温保冷工事)
  • 内装仕上げ施工(プラスチック系床仕上げ工事、カーペット系床上げ工事、銅製下地工事、ボード仕上げ工事、カーテン工事)
  • サッシ施工(ビル用サッシ施工)
  • 防水施工(シーリング防水工事)
  • コンクリート圧送施工(コンクリート圧送施工)
  • ウエルポイント施工(ウエルポイント施工)
  • 表装(壁装)
  • 建設機械施工(押土・整地、積込み、掘削、締固め)
  • 築炉(築炉)

 

食品製造関係(11職種18作業)

  • 缶詰巻締(缶詰巻締)
  • 食鳥処理加工業(食鳥処理加工業)
  • 加熱性水産加工食品製造業(節類製造、加熱乾製品製造、調味加工品製造、くん製品製造)
  • 非加熱性水産加工食品製造業(塩蔵製品製造、乾製品製造、発酵食品製造、調理加工製造、生食用加工製品)
  • 水産練り製品製造(かまぼこ製品製造)
  • 牛豚食肉処理加工業(牛豚部分肉製造作業)
  • ハム・ソーセージ・ベーコン製造(ハム・ソーセージ・ベーコン製造)
  • パン製造(パン製造)
  • そう菜製造業(そう菜加工)
  • 農産物漬物製造業(農産物漬物製造)
  • 医療・福祉施設給食製造(医療・福祉施設給食製造)



繊維・衣服関係(13職種22作業)

  • 紡績運転(全紡工程、紡績工程、巻糸工程、合ねん糸工程)
  • 織布運転(準備工程、製織工程、仕上工程)
  • 染色(糸浸染、織物・ニット浸染)
  • ニット製品製造(靴下製造、丸編みニット製造)
  • たて編ニット生地製造(たて編ニット生地製造)
  • 婦人子供服製造(婦人子供服既製服縫製)
  • 紳士服製造(紳士服既製服製造)
  • 下着類製造(下着類製造)
  • 寝具製作(寝具製作)
  • カーペット製造(織じゅうたん製造、タフテッドカーペット製造、ニードルパンチカーペット製造)
  • 帆布製品製造(帆布製品製造)
  • 布はく縫製(ワイシャツ製造)
  • 座席シート縫製(自動車シート縫製)



機械・金属関係(15職種29作業)

  • 鋳造(鋳鉄鋳物鋳造、非鉄金属鋳物鋳造)
  • 鍛造(ハンマ型鋳造、プレス型鋳造)
  • ダイカスト(ホットチャンバダイカスト、コールドチャンバダイカスト)
  • 機械加工(普通旋盤、フライス盤、数値制御旋盤、マニシングセンタ)
  • 金属プレス加工(金属プレス)
  • 鉄工(構造物鉄工)
  • 工場板金(機械板金)
  • めっき(電気めっき、溶融亜鉛めっき)
  • アルミニウム陽極酸化処理(陽極酸化処理)
  • 仕上げ(治工具仕上げ、金型仕上げ、機械組立て仕上げ)
  • 機械検査(機械検査)
  • 機械保全(機械系保全)
  • 電子機器組立て(電子機器組立て)
  • 電気機器組立て(回転電機組立て、変圧器組立て、配電盤・制御盤組立て、開閉制御器具組立て、回転電機巻線製作)
  • プリント配線板製造(プリント配線板設計、プリント配線板製造)



その他(16職種29作業)

  • 家具製作(家具手加工)
  • 印刷(オフセット印刷、グラビア印刷)
  • 製本(製本)
  • プラスチック成形(圧縮成形、射出成形、インフレーション成形、ブロー成形)
  • 強化プラスチック成形(手積み積層成形)
  • 塗装(建築塗装、金属塗装、鋼橋塗装、噴霧塗装)
  • 溶接(手溶接、半自動溶接)
  • 工業梱包(工業梱包)
  • 紙器・段ボール箱製造(印刷箱打抜き、印刷箱製箱、貼箱製造、段ボール箱製造)
  • 陶磁器工業製品製造(機械ろくろ成形、圧力鋳込み成形、パッド印刷)
  • 自動車整備(自動車整備)
  • ビルクリーニング(ビルクリーニング)
  • 介護(介護)
  • リネンサプライ(リネンサプライ仕上げ)
  • コンクリート製品製造(コンクリート製品製造)
  • 宿泊(接客・衛生管理)



社内検定型の職業・作業(1職種3作業)

  • 空港グランドハンドリング(航空機地上支援、航空貨物取扱、客室清掃)

 

出典:厚生労働省「外国人技能実習制度について(令和2年10月21日一部改正 技能実習法・主務省令等の周知資料)

技能実習生の受け入れ可能人数

技能実習生を受け入れる際は、申請者(受け入れ機関)の規模によって、受け入れの人数が制限されています。具体的には、次のとおりです。
※出典:厚生労働省「外国人技能実習制度について(令和2年10月21日一部改正 技能実習法・主務省令等の周知資料)


(基礎人数)

 

申請者の常勤の職員の総数

技能実習生の数

301人以上

申請者の常勤の職員の総数の1/20

201人以上300以下

15人

101人以上200人以下

10人

51人以上100人以下

6人

41人以上50人以下

5人

31人以上40人以下

4人

30人以下

3人


ただし、上記の人数は「基礎人数」です。
実際の受け入れ人数は、団体監理型、企業単独型で異なります。

 

団体監理型

第1号(1年間)

基本人数枠

第2号(2年間)

基本人数枠×2倍

 

優良基準適合者

第1号(1年間)

基本人数枠×2倍

第2号(2年間)

基本人数枠×4倍

第3号(2年間)

基本人数枠×6倍

 


(企業単独型)

企業

主務大臣の認定企業

左記以外の企業

第1号(1年間)

基本人数枠

常勤職員数総数の1/20

第2号(2年間)

基本人数枠×2倍

常勤職員数総数の1/10



 【優良基準適合者

企業

主務大臣の認定企業

左記以外の企業

第1号(1年間)

基本人数枠×2倍

常勤職員数総数の1/10

第2号(2年間)

基本人数枠×4倍

常勤職員数総数の1/5

第3号(2年間)

基本人数枠×6倍

常勤職員数総数の3/10

 

技能実習生を企業が受け入れる場合

技能実習制度を採用し、技能実習生を受け入れる場合、

 

①企業単独型:

海外の支店等、受入企業と関係を有する企業から労働者を受け入れるもの

 

②団体監理型:

協同組合等、営利を目的としない監理団体が技能実習生を受け入れ、傘下の企業にて技能実習を実施するもの

 

のどちらかの方法を通じて技能実習を行う必要があります。


技能実習生は、後述する各ステップを経て日本へ入国した後、在留資格「技能実習1号」として、座学の講習を受けます。この講習は、実習実施者(企業単独型)又は監理機関が、原則2ヶ月間実施することになっています。その後、受け入れ企業に於いて実習が開始されます。


1年間の実習の後、基礎級と呼ばれる実技試験及び学科試験に合格すると、「技能実習2号」として更に2年間滞在する事ができます。これら3年間の実習の後、一旦帰国する必要が生じます。


優良な監理団体・実習実施者では実習期間の延長があり、技能実習生が実技試験に合格した際には、「技能実習3号」として更に2年の実習が認められます。


また、入国直後の講習期間以外は、雇用関係の下、労働関係法令が適用されます。


この制度には、外国人本人・受け入れる監理団体・受入企業(機関)・それらの企業(機関)の役員に係る詳細な要件や欠格条項が定められており、在留資格の中で異色の存在となっています。


2. 外国人技能実習機構とは

「外国人技能実習機構(OTIT)」は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」という法律によって、設立された機関です。


「外国人の技能、技術又は知識の修得、習熟又は熟達に関し、技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能等の移転による国際協力を推進すること」が目的になっています。


この組織は、  技能実習計画の認定や、 実習実施者・監理団体への報告要求、実施検査を業務内容としており、技能実習実施に於いて、重要な役割を果たしています。


外国人技能実習機構のその他の詳しい情報については、以下の記事をご参照ください。

【外国人技能実習機構とは?】 4つのポイントからみる技能実習制度


3. 送出機関とは

前述の通り、技能実習制度の実施形態は、企業単独型と団体監理型に分けられます。このうち、団体監理型に関わるのが送出機関と監理団体です。


送出機関とは、簡潔に言えば、実習生の母国で人員を募集して日本に派遣する組織です。新制度(2017年)では、「監理団体に対して求職の申込みを取り次ぐか否か」で、


  • 外国の送出機関
  • 外国の準備機関

の2つにカテゴリー分けしています。それぞれの特徴は以下の通りです。


外国の送出機関

技能実習生が国籍また住所を有する国に於いて、技能実習に係る求職の申込みを日本の監理団体に取り次ぐ機関を指します。また、外国の送出機関のうち、認定申請を行おうとする技能実習生の求職の申込みを実際に監理団体に取り次ぐ送出機関を「取次送出機関」とも呼称します。


外国の準備機関

技能実習生になろうとする者の外国における準備に関与する外国の機関を指します。例えば、外国で技能実習生になろうとする者が所属していた会社、技能実習生になる事を希望している人々を対象とした日本語学校を経営する法人やビザの取得代行を行う機関までが含まれます。


新制度においては、日本政府と外国政府の間で二国間協定が締結される事になりました。この二国間協定が締結された場合、政府によって認定を受けた送出機関でなければ、技能実習生を送り出すことが出来なくなりました。悪質な送出機関を排除するのが狙いです。


送出機関の詳しい情報については、以下の記事をご参照ください。

送り出し機関について


4. 監理団体とは

技能実習生を受入れ,傘下の企業等で技能実習を実施する組織です。技能実習制度を利用する企業は、先ず監理団体と契約しなければなりません。


「団体監理型」では、監理団体が海外の「送出機関」と提携し、現地での人材募集、入国に関する手続きなどを日本の会社などに代わって行うことになります。つまり、監理団体を利用する事で、海外に拠点を持たない会社などでも、実習生を受け入れることが可能となります。


監理団体は営利を目的としてはいけません。以下の様な組織が、外国人技能実習機構から監理団体許可を受ける事により、監理事業を開始する事が出来ます。


(1)  商工会議所又は商工会

(2)  中小企業団体(事業協同組合など)

(3)  職業訓練法人

(4)  農業協同組合、漁業協同組合

(5)  公益社団法人、公益財団法人

(6)  法務大臣が告示をもって定める監理団体


現状では、協同組合が監理団体としての許可を受けて監理事業を行なっているケースがほとんどです。


監理団体は、送出機関との折衝や、技能実習計画の作成指導、入国管理局へ技能実習生の在留資格の申請などを行います。


監理団体の詳しい情報については、以下の記事をご参照ください。

【監理団体とは?】4つのポイントからみる技能実習制度


5. 技能実習生受け入れまでの流れ

団体監理型にて、技能実習生を受け入れる為には、以下のようなステップを踏む事が必要です。


①技能実習生の受入れを希望する企業(以下、「受入企業」)が、監理団体へ技能実習生の受け入れを申し込み

②監理団体と契約を結んでいる送出機関、現地で現地で募集・選考・人員の決定

③受入企業と技能実習生、雇用契約締結

④受入企業、監理団体の指導に基づき、技能実習計画を作成し、外国人技能実習機構へ提出

⑤外国人技能実習機構、技能実習計画を認定

⑥監理団体、技能実習生毎の在留資格の認定を、入国管理局へ申請

⑦地方入国管理局、入国を許可

⑧技能実習生、入国

⑨監理団体、集団講習実施

⑩受入企業にて技能実習開始


その他、受入れに関する詳しい流れに関しては、以下の記事をご参照ください。

技能実習生受入れまでの流れ


6. 技能実習計画について

技能実習制度では、技能実習を実施する機関が技能実習生ごとに「技能実習計画」を作成しなければなりません。


作成後は、主務大臣の認定を受けることになります。認定は、「外国人技能実習機構」が担当します。この技能実習計画については、厚生労働省がモデル例を公開しているので、それに沿って作成するのがベターです。(厚生労働省ホームページ:「技能実習計画審査基準・技能実習実施計画書モデル例・技能実習評価試験試験基準」)


技能実習計画では、次の基準を満たしておかなければなりません。


  • 技能実習の目標・内容が技能実習の区分に応じて定めた基準に適合すること
  • 第2号・第3号に関する場合は、その前段階(1号・2号)の試験合格等の目標が達成されていること
  • 技能実習を修了するまでに、技能検定・技能実習評価試験等により評価を行うこと
  • 事業所ごとに技能実習の実施責任者を選任していること
  • 団体監理型技能実習の場合は、申請者が監理団体の実習監理を受けること
  • 技能実習生の待遇(報酬が日本人従事者と同等以上であることその他)が省令で定める基準に適合していること
  • 第3号企業単独型・団体監理型の場合は、申請者の実習実施能力が省令で定める基準を満たしていること
  • 複数の技能実習生に技能実習を行わせるときは、その数が省令で定める数を超えないこと

技能実習の対象となる職種・作業について、以下に掲げる業務区分に応じて、それぞれの条件に適合している必要があります。

 

(1)  必須業務

技能実習生が修得等をしようとする技能等に係る技能検定、またはこれに相当する技能実習評価試験の試験範囲に基づき、技能等を修得等するために必ず行わなければならない業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の2分の1以上です。

 

(2) 関連業務

必須業務に従事する人によって、当該必須業務に関連して行われることのある業務であって、 修得等をさせようとする技能等の向上に直接、または間接に寄与する業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の2分の1以下です。

 

(3) 周辺業務

必須業務に従事する人が当該必須業務に関連して通常携わる業務です。全実習時間における作業時間の割合は、実習時間全体の3分の1以下です。

 

なお、それぞれ、従事させる時間のうち10分の1以上を安全衛生に係る業務に充てなければなりません。


技能実習計画に関わるその他の詳しい情報については、以下の記事をご参照ください。

【技能実習計画とは?】4つのポイントからみる技能実習制度


7. 受入機関が準備すべき人員

外国人技能実習生を受け入れて実際に実習を行うために、受入企業が適切な人員を配置する事が必要です。具体的には、技能実習責任者、技能実習指導員、及び生活指導員を配置する必要があります。


技能実習責任者

技能実習責任者とは、実習を管理・運営する責任者です。技能実習責任者は、技能実習指導員、生活指導員など、技能実習に関わる職員を監督し、技能実習の進捗状況を管理する役目があります。

 

また、以下の事項を統括・管理します。

 

  1. 技能実習計画の作成
  2. 技能実習生が修得等をした技能等の評価
  3. 法務大臣及び厚生労働大臣若しくは機構又は監理団体に対する届出、報告、通知その他の手続
  4. 帳簿書類の作成・保管、実施状況報告書の作成
  5. 技能実習生の受入れの準備
  6. 監理団体との連絡調整
  7. 技能実習生の保護
  8. 技能実習生の労働条件、産業安全及び労働衛生
  9. 国及び地方公共団体の関係機関、機構その他関係機関との連絡調整

技能実習指導員

技能実習を実施する際には、実習生に直接指導する人が必要です。これが「技能実習指導員」が呼ばれている人で、技能実習を実施する事業所に所属して勤務していなければなりません。

 

技能実習指導員は、技能実習生が習得する技能に関して、5年以上の経験が必要です。なお、この5年以上という経験は、技能実習機関以外の他の機関での経験も含まれます。これは、技能実習生に対して十分指導できるために、実習内容を充実させることが目的となっています。

生活指導員

技能実習機関は、申請者またはその常勤の役員、もしくは職員で、しかも技能実習を実施する事業所に所属している人の中から、実習生の生活を指導する人を選任しなければなりません。これが、「生活指導員」と呼ばれるもので、事業所には1名以上を置かなければなりません。


生活指導員は、技能実習生に対して、日本における生活上の注意点を指導し、実習生の生活状況を把握しておかなければなりません。また、技能実習生の相談に乗ることで、問題の発生を未然に防止しなければなりません。


技能実習を実施する機関には、技能実習が効率よく行われ、なおかつ技能実習生が安心して知識が修得できるように、技能実習責任者、技能実習指導員、及び生活指導員を置かなければなりません。またそれぞれの役割は、明確に規定されている為、確認が必要です。


各人員に必要とされる条件や、欠格事由に関する詳しい情報は、以下の記事をご参照ください。

技能実習責任者 技能実習指導員 生活指導員とは? 4つの観点からみる技能実習制度

 

8. 受け入れにかかる費用

技能実習制度を導入しようとしたときに、検討しなければならない問題が、コストです。技能実習生を受入れるとして、一人あたりにどのくらいのコストがかかるのでしょうか。

 

以下の記事では、この受入れ費用について、監理団体型技能実習をモデルとして、3人の技能実習生を採用するケースをシミュレーションしています。ぜひ、ご覧ください。

【技能実習生の受け入れ】にかかる費用 まるわかり!

 

9. 技能実習生の再雇用

外国人が、技能実習制度を利用して日本に来る場合、基本的に実習終了後は、本国に帰国しなければなりません。それでも、外国人本人が引き続き日本に在留して、働きたいと思った場合、認められるのでしょうか? 

 

引き続き日本で就労する事が認められる場合もあります。
新しい在留資格である「特定技能」で引き続き就労する方法や、条件はかなり厳しいですが、「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で就労する方法もあります。

 

詳しくは以下の記事をご覧ください。

【技能実習 再雇用】技能実習終了後の技能実習生は再び雇用可能?


10. 注意すべきポイント

送出機関を見極める

これまで、失踪防止等を名目として技能実習生本人やその家族等から保証金の徴収等をしている不適正な送出機関が散見されていました。前述の通り新制度では、二国間取り決めにおいて適正であると認定された送出機関のみが技能実習制度に関わる事が出来るようになりました。

 

適正な送出機関は、法務省及び厚生労働省のホームページのほか、国毎に外国人技能実習機構のHPに掲載されます(詳しくはこちら)。リスクを回避する為にも、利用している又は利用を検討している送出機関に関して、外国人技能実習機構が公開している情報等を利用してチェックするのが良いかもしれません。

 

監理団体を見極める

監理団体の中には、適切に対応しないところもあります。そうしたところについては、費用を徴収しているにも関わらず、実習計画書や報告書などをいい加減にされてしまったりする場合もあります。そのため、本当にその監理団体に任せていいのかどうか、詳細を聞き、よく見極めることが必要です。


正確で最新の情報をチェックする

2017年の調査では、全国の労働局や労働基準監督署が監督指導を実施した5,966事業場(実習実施者)のうち、労働基準関係法令違反が認められた事業所が、70.8%に上ったようです。罰則を回避し、首尾よく技能実習を行う為にも、技能実習を実施する企業は、引き続き正確で最新の情報を入手していく必要がありそうです。

 

技能実習制度の課題

技能実習制度の課題は、次のとおりです。

理解に乏しい

技能実習制度の理念は、外国人に日本で技術を学び、本国に持ち帰って、産業の発展に寄与させることです。

しかし、受け入れ側の中には、人手不足を解消するための手段と捉える所もあります。
さらには、日本人よりも安い賃金で働かせることができると誤解している所もあります。そうした技能実習制度を理解せずに受け入れようとする企業では、トラブルが起こる可能性があります。

 

賃金が低い

技能実習制度に対する理解不足から、日本にやってきた外国人にとって劣悪な職場環境の下で、働かせている場合があります。
最も顕著に表れるのは、日本人従業員よりも、かなり低い賃金しか支給しないケースです。本来であれば、日本人と同等の賃金にしなければならないのですが、そうした扱いをしている受入企業もあります。

最も顕著に表れるのは、日本人従業員よりも、かなり低い賃金しか支給しないことです。

 

セクハラ、パワハラ

技能実習制度への理解不足や外国人に対する差別意識などから、職場で嫌がらせ(セクハラ、パワハラ等)が起こる可能性があります。

嫌がらせを受けた外国人は、誰に相談したらよいかわからず、泣き寝入りの状態になることが少なくありません。

 

職場環境の違い

技能実習生にとって、日本の文化や慣習は本国とは違っており、戸惑いを覚える人も多いはずです。
受け入れる側にとっても、ビジネス面での文化の違いに戸惑うことは多々あります。

言葉が上手く通じないことも相まって、そうした職場環境の違いに強いストレスを感じたり、受入側の社員とうまくいかなかったりする外国人も多いことでしょう。

その結果、定着率の低さにもつながるはずです。

まとめ

入管法に技能実習制度が規定されていた頃、低賃金や劣悪な環境で働かされていた技能実習生がたくさんいました。そのため、そのようなことのないよう、新たに外国人技能実習法が作られました。

技能実習生に適切に日本で技術を取得してもらえるよう、受入側にも厳しい条件が課されています。それらをしっかりと理解し、技能実習生に技術を習得させることで、受け入れ側も様々なメリットを受けることができます。