外国人技能実習制度は、日本で技能を習得した外国人が、母国に戻って習得した技能を伝達し、母国の発展に寄与することを最終的な目標にしています。日本の技能等の移転を通して、日本が諸外国への国際協力を行う制度です。

これらの技術移転を実現するためには、きちんとした仕組みが必要です。

その仕組みを定めたものが「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」です。今回は、この仕組みについてご説明いたします。

 

外国人技能実習制度とは?

「外国人技能実習制度」とは、外国人が「技能実習」の在留資格で日本に滞在し、定められた期間、報酬を受けながら実習を行う制度です。
この制度で働く外国人のことを、外国人技能実習生と言います。


この制度では、受け入れ可能な業種や体制など、外国人がきちんと技能を習得できるようにするために、様々な制約があります。

受け入れは大変ではありますが、受け入れ態勢が整えば、毎年新しい外国人を実習生として受け入れることも可能で、受入れ企業にとっては、人材の確保という点で大きなメリットがあります。

また、外国人技能実習生が帰国後、母国で起業し、成功した場合、実習していた会社との取引を行うこともあり、会社としても海外へのコネクションを作るきっかけにもなります。


さらに、新設された就労可能な在留資格「特定技能」では、「技能実習」のビザからも変更可能で、技能実習終了後も同じ会社で働くことが可能になりました。
そのため、実習後も長期間働いてもらえる可能性もあり、受入れ企業側のメリットも大きくなりました。

 

技能実習生の受け入れ方式

技能実習生を受け入れる際には、二つの方式があります。
企業単独型と団体監理型と呼ばれるものです。それぞれの特徴について説明します。

企業単独型

企業単独型では、受入れ企業の海外子会社等からの受入れ、1年以上取引実績のある海外企業からの受入れ、1年間に10億円以上の取引実績のある企業からの受入れなどの場合で、実習生の送り出し元が定められています。

企業単独型では、受入れ企業が実習予定者と雇用契約を結びます。
受入れ企業は、認可法人外国人技能実習機構へ実習計画を申請して認定を受け、その後受入れ企業が入国管理局へ在留資格認定証明書を申請することになります。


企業単独型では、受入れ企業がすべてやらなければなりませんが、監理団体を通さない分、監理団体の費用などが抑えられます。また、派遣元が海外子会社や取引先などのため、受入れ企業に直結する人材育成ができます。

 

団体監理型

事業協同組合や商工会等の非営利の監理団体が技能実習生を受け入れ、その組合等に加入している企業で技能実習を行う方式です。
現在行われている技能実習の多くがこの団体監理型で実施されています。


団体監理型では、受入れ企業は、参加する協同組合等を通じて受け入れることになるため、手続きに関しては、監理団体と行うことになります。

認可法人外国人技能実習機構への実習計画申請や入国管理局への在留資格証明申請は監理団体が行い、監理団体は受入れ企業に対し、実習計画の作成指導、支援を行います。


監理団体型は、監理団体となる組合等への加入が必須となり、技能実習生への支払いなど以外に、組合の費用などが必要になってきます。
費用面では負担が増えますが、限られた企業しかできない企業単独型と違って、多くの企業が技能実習生の受け入れをすることができます。

また、手続きは監理団体が行うため、受入れ企業の手続きの負担は軽減されます。

 

技能実習制度の区分

技能実習制度には、1号から3号まで区分があります。それぞれの条件や在留資格について説明します。

技能実習1号

外国人が日本へ入国後、最初の1年目が、技能実習1号です。

1号では、入国してすぐに実習を始めるのではなく、入国後、原則2ヵ月間は、座学での講習があります。
これは、日本で働いて生活するための基本的な知識を学びます。

講習の間は、雇用関係はなく、講習終了後、受入れ企業で実習を開始します。
その時点で、受入れ企業との雇用関係が発生します。

技能実習2号

1年目が終了した外国人技能実習生は、その技能が身についているか確認するため、所定の技能評価試験を受験します。

その試験に合格した人が、2年目も実習することができます。その2年目が、技能実習2号です。

2号では、2年目を経過した後、さらに1年更新することも可能です。
つまり、技能実習2号は、2年目、3年目が該当します。

ただし、1号から2号に進めるかは、対象職種が決められており、指定された移行対象職種以外は2号に進むことができません。(出典:法務省『外国人技能実習制度について』)

技能実習3号

技能実習2号で3年目が終了した後は、一旦、1か月以上帰国します。
その後、所定の技能評価試験に合格した外国人技能実習生で、監理団体や実習先の受入れ企業が優良の条件を満たした場合、技能実習3号として再び日本に入国し、技能実習を継続することができます。

3号の対象職種は2号と同様で、1年更新することができます。
つまり、技能実習開始から数えて4年目、5年目まで技能実習を行うことができます。

 

技能実習生の入国から帰国まで

技能実習の入国前の準備、入国後、実習が始まり、帰国までの流れを説明します。

技能実習生の入国

技能実習生を入国させるためには事前準備が必要です。
技能実習生の候補生は、入国前に、本国で4か月以上入国前講習を受けます。

また、技能実習生の選考などにも時間を要するため、技能実習開始予定の半年から7か月以上前から準備を行った方が良いでしょう。


技能実習生を入国させるには、まず、受入企業で技能実習計画の作成が必要になります。
実習計画の他、役員に関する書類や実習責任者に関する書類、報酬に関する書類などを揃え、実習計画を認可法人外国人技能実習機構に認定申請します。

実習計画が認定されたら、入国管理局へ在留資格認定証明書申請を行い、証明書交付後、外国人技能実習生へ送付し、本国で査証を取得し、日本に入国します。

技能実習生の入国後から帰国まで

外国人技能実習生は、入国後に原則2か月間、日本で生活し、働くための様々な講習を受けます。
その後、受入れ企業にて技能実習第1号が開始されます。

入国から1年後、所定の技能試験に合格した場合は、技能実習第2号として引き続き技能実習を行うことができます。
2号は、その後もう1年更新することが可能で、2号の技能実習としては、最大2年間行うことができます。


2号の実習が終了後、再び所定の技能試験等に合格し、受入れ機関等が優良要件を満たした場合、3号に進むことができます。

ただし、2号から3号へ変更する場合には、一旦1か月以上の帰国をする必要があります。
3号も、2号と同じく1年間更新することがで、3号として最大で2年間実習することができます。

 

技能実習計画とは

技能実習計画は、団体監理型では、組合の指導を受けて、受入れ企業が策定します。

計画書は実習生ごとに作成する必要があり、計画の認定を受けるために必要な書類は数十種類にも及びます。
雇用条件書や報酬に関する説明、徴収費用の説明書など、実習をどのように行うのか、資料を作成していきます。

 

実習実施者とは

実習実施者とは、外国人技能実習生が実習をする受入れ企業のことです。

実習実施期間は、毎年、実習報告書を作成し、認可法人外国人技能実習機構に提出しなければなりません。さらに、実習生の名簿や履歴書、雇用契約書などの書類を管理保管します。

 

監理団体の許可

団体監理型の外国人技能実習を行う場合、許可を受けた監理団体が実習生の受け入れを行います。

監理団体は、実習生を受け入れる企業が参加して作られた協同組合などが許可を得て、実習生を受け入れることができるようになります。


監理団体として許可を受けるためには、営利目的でない法人、事業を適正に行う能力、財産的基礎などの許可基準を満たす必要があります。

さらに、監理団体には、二つの区分があり、区分を間違えると、後々監理できなくなることもありますので、注意が必要です。

一般監理事業

技能実習1号から3号までを監理することができる監理団体です。

技能実習3号までの実施を予定している場合は、一般管理事業になります。
許可の有効期間は、5年または7年です。

特定監理事業

技能実習1号と2号のみ監理できる監理団体です。
3号は監理できませんので、注意が必要です。許可の有効期間は3年又は5年です。

 

優良な実習実施者、監理団体とは?

外国人技能実習3号に進むためには、実習実施者や監理団体が優良であることが要件とされています。
優良な実習実施者、監理団体とは、どのような場合にあてはまるのか、説明します。

 

実習実施者の場合

外国人技能実習生の技術習得実績や、実習生の待遇、法令違反、問題発生、相談、支援体制、地域社会との共生対応で点数化され、いずれも点数が満点の6割以上であれば、優良な実習実施者として適合します。

監理団体の場合

実習の実施状況の監査やその他の業務を行う体制、実習生の技術取得実績、法令違反、問題発生、相談、支援体制、地域社会との共生対応で点数化され、実習実施者の場合と同じく、満点の6割以上で優良な監理団体に適合します。

 

技能実習生の受入れ上限枠

技能実習生の受入れ人数には上限があり、受入れ企業である実習実施者の常勤の職員数によって変動します。

常勤の職員総数が30人以下の場合は3人、31人から40人までは4人、というように基本人数枠が細かく定められています。


技能実習1号では、基本人数枠のみですが、2号では、1号の基本人数枠の2倍までが上限となります。
さらに、優良適合であれば、1号は基本人数枠の2倍、2号は基本人数枠の4倍を上限とすることができます。

 

新たな技能実習制度について

平成29年11月1日に技能実習法が施行され、それまで入管法令で行われていた旧制度から新制度になりました。

旧制度では、監査体制の問題や間接的な規制しかなく、受入れ企業などの法令違反、実習生に対する待遇の悪さや、高額ブローカーの問題などが起こったため、新たに法律を制定し、制度の見直しが行われました。


新制度では、認可法人外国人技能実習機構が創設され、実習計画の認定が行われるようになりました。
さらに、監理団体が許可制となり、適正な監理体制がとれるようになりました。

また、優良の管理団体、実習実施者への優遇もされるようになりました。
日本で技能を学ぼうと来日する外国人技能実習生が安心して来られるような新制度になっています。

 

まとめ

外国人技能実習制度は、受入れ企業にとっても、外国人技能実習生にとっても、それぞれメリットのある制度です。

ただし、制度自体は複雑で、容易に実施できるものではありません。
その仕組みをしっかりと理解して、準備し、受入れ企業にとっても、実習生にとってもよりよい実習になるようにすることが大切です。