グローバル化が進み、日本にも多くの外国人が訪れるようになりました。
また、観光客以外にも、日本の会社に就職したり、事業を始めたりする人も多くなっています。
日本で働く場合、「就労ビザ」(身分系の在留資格を除く、就労可能な在留資格のことを本記事では就労ビザとします)という資格を取得しなければなりません。
その「就労ビザ」にはいくつかの種類がありますので、詳しくご紹介します。
在留資格と就労ビザの違いとは?
まず、在留資格と就労ビザの違いについて、明記しておきます。
在留資格とは、簡単に言えば、外国人が日本に在留できる根拠となる「資格」のことです。
その「資格」には、仕事を根拠とするものと、家族関係を根拠とするものとがあります。
この中の仕事を根拠とするものが、「就労ビザ」と言うことになります。
在留資格は全29種類
日本に滞在することができる資格を「在留資格」と言います。
これには全部で29種類ありますが、その中には就労、つまり日本国内で仕事をすることが認められているものと、そうでないものとがあります。
就労できない資格
日本に滞在することができても、働くことができない資格は、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族、特定活動の7種類です。このうち、日本の大学,短期大学,高等学校,専修学校等に入学する学生が対象です。
ただし、留学生が許可された活動以外の就労活動(アルバイト)を行いたい場合には、資格外活動許可を得る必要があります。
この資格を取得した場合でも、就労時間は1週間28時間以内(長期休業期間の場合は、1日8時間以内)に限定されています。
この就労時間を守らなかった場合には、在留資格「留学」の在留期間の更新が、不許可になることもあります。
また、風俗営業(キャバレースナック等)、店舗型風俗特殊営業(ソープランド、ファッションヘルス等)などのアルバイトは禁止されています。
地位に基づく資格は全4種類で活動に制限はない
永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者の4種類は、身分・地位に基づく在留資格で、活動に制限がありません。
従って、この資格を取れば、就労することができます。
就労できる資格は全19種類
日本に滞在することができ、さらに働くことができる資格は、外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、特定技能、技能講習の17種類です。
これらに仕事を行うために日本に滞在するには、「就労ビザ」の資格を取得する必要があります。
就労ビザの条件
就労ビザの資格を得るには、以下の条件を満たす必要があります。種類別に説明します。
なお、就労ビザは、1人1種類ですが、在留中に変更することもできます。
変更する際には、「在留資格変更許可申請」を行う必要があります。
この場合、在留期間満了前に、申請書、パスポート、在留カード、活動を証明する資料等を出入国管理局に提出しなければなりません。
外交
外交官、領事官、またはこれらの人と同一の世帯に属する家族です。
また、条約、国際慣例によって外国使節と同様の特権・免除が規定されている人、またはこれらの人と同一の世帯に属する家族です。
在留期間は、「外交活動の期間」です。
公用
外国政府、国際機関の公務に従事する人等、またはこれらの人と同一の世帯に属する家族です。
従って、日本政府が承認した外国政府、国際機関の公務に従事する人とその家族、が対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年、3ヶ月、30日又は15日です。
教授
大学、高等専門学校等で教授等として迎えられる人です。
従って、日本の大学等で研究、あるいは研究の指導や教育を行うことができる人が対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
芸術
作曲家、作詞家、画家、彫刻家、工芸家、写真家等、収入を伴う芸術上の活動を行おうとする人です。
従って、少なくとも外国で芸術上の活動において生計を立てている人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
宗教
外国にある宗教団体から日本に派遣されて布教等の宗教上の活動を行おうとする人です。
従って、外国の宗教団体から派遣される宣教師等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
報道
外国の新聞社、通信社、放送局等の報道機関との契約に基づいて、日本で取材などを行おうとする人です。
従って、外国の報道機関に所属し、報道活動を行っている人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
経営・管理
投資・経営や管理事業を行おうとする外国人で、事業規模等で一定の規模を満たしている人です。
従って、事業の経営又は管理に実質的に従事している人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年、4ヶ月又は3ヶ月です。
法律・会計業務
法律・会計関係の職業のうち、日本の法律上の弁護士等の資格を持っている外国人です。
従って、外国人であっても日本の弁護士資格等を有している人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
医療
医療関係の職業のうち、日本の法律上の医師等の資格を持っている外国人で、待遇で一定の要件を満たす人です。
従って、外国人であっても日本の医師免許等を有している人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
研究
国、地方自治体等の機関との契約に基づき、試験、調査、研究等に従事しようとする外国人で、経歴や待遇面で一定の要件を満たす人です。
従って、政府関係機関や私企業の研究者が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
教育
小・中・高等学校等において、教育活動に従事しようとする外国人です。
従って、日本の教育機関で語学教育等を行う人が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
技術
自然科学(理学、工学等)の分野に関する技術・知識を必要とする業務に従事しようとする外国人で、経歴や待遇面で一定の要件を満たす人です。
従って、機械工学等の技術者等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
人文知識・国際業務
人文科学(法律、経済等)の分野に関する技術・知識を必要とする業務に従事しようとする外国人で、経歴や待遇面で一定の要件を満たす人です。
従って、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
企業内勤務
外国になる日本の企業の子会社・支店等から、日本国内の本店等に転勤する、または外国にある本店から日本国内の支店等に転勤し、技術・人文知識・国際業務に該当する活動を行おうとする外国人で、経歴や待遇面で一定の要件を満たす人です。
従って、外国の事業所からの転勤者等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
興行
演劇、演芸、歌謡、舞踊、演奏、スポーツ等の興行関係の活動を行おうとする外国人で、経歴や待遇面、興行形態で一定の要件を満たす人です。
従って、俳優、歌手、ダンサー、プロスポーツ選手等が、対象となります。
在留期間は、3年、1年、6ヶ月、3ヶ月又は15日です。
技能
日本の産業上の特殊な分野に属する熟練した技能を要する業務に従事しようとする外国人で、経歴や待遇面で一定の要件を満たす人です。
従って、外国料理の調理師、スポーツ指導者、航空機の操縦士、貴金属等の加工職人等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
介護
介護福祉士の資格を有する外国の方が介護施設等との契約に基づいて介護(又は介護の指導)の業務に従事するための在留資格です(※平成29年9月1日施行)。
従って、日本の機関で介護の業務に携わる人、あるいはその介護士を指導する人等が、対象となります。
在留期間は、5年、3年、1年又は3ヶ月です。
就労ビザを取得するには?
就労ビザを取得するには、申請人が以下の必要書類を出入国管理局に提出します。
・在留資格認定証明書交付申請書 1通
・写真(縦4㎝×横3㎝) 1枚
※申請前3か月以内に正面から撮影された無帽,無背景で鮮明なもの
・パスポート、及び在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含む)の提示
・返信用封筒
※定形封筒に宛先を明記の上、380円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの
・履歴書
・資格を証する書類
・実務経験を証する書類
・推薦状
・活動の内容、雇用期間、報酬、地位などの待遇を記載した雇用契約書、採用通知書の写し、辞令など
・会社の概要を明らかにする資料(パンフレットなど)
・招聘理由書
※本人の理由書、入管専門家の指導方針等を記載する
※なお、就労ビザの種類によって、必要書類が多少異なりますので、外務省のホームページで確認しましょう。 URL : 就労や長期滞在を目的とする場合
なお、外国人が本国にいて、日本での就労ビザ取得する場合には、日本にいる代理人が、外国人に代わって申請を行うことになります。
出入国管理局で審査を行いますが、審査期間は、個々の案件によって異なり、平均で1ヶ月、場合によっては、2、3ヶ月かかることがあります。
就労ビザが許可されたら、「認定書」が交付され、代理人が外国人に送付し、それを持って外国にある日本の大使館や領事館で、「査証」を申請し、「査証」を発行してもらいます。
もし、出入国管理局で不許可となった場合には、不備となっている箇所を修正し、補正、もしくは再申請することになります。
就労ビザを取得する際には、どの在留資格に当てはまるのか、そのための条件は何か等を十分に理解し、必要書類の不足がないように注意しなければなりません。
なお、申請の際に、行政書士等の申請取次者に依頼する方法もありますが、この場合、報酬は必要ですが、申請の漏れや間違いを回避することができます。
転勤等をした場合は?
日本で就労ビザを取得している外国人が、転勤、転職、退職した場合は、速やかに出入国管理局に届け出る必要があります。
転職によって仕事内容が変わった場合には、在留資格を変更する必要があります。
また、退職した場合には、たとえ在留期間が残っていても、そのままの就労ビザでは、在留することができません。
従って、そのまま日本に在留したい場合には、家族に日本人がいれば、在留資格「日本人の配偶者等」へ変更する、あるいは就労可能な在留資格を持つ外国人の配偶者や子どもであれば、在留資格「家族滞在」へ変更するなどの方法を取ることになります。
不法就労とは?
不法就労には、大きく分けて2つあります。
1つは、認められている就労ビザ以外の仕事を行っている場合です。
例えば、就労ビザ「教授」を持っている外国人が、たとえ弁護士資格を持っていても弁護活動を行うような場合です。
2つ目は、在留期間を過ぎても、更新手続きを行わずに、そのまま就労している場合です。
もし、不法就労した場合には、外国人本人に対して、本国への強制送還の措置が取られます。
また、不法就労者を雇用していた会社等は、「不法労働助長罪」に問われ、3年以下の懲役、または300万円以下の罰金、あるいはこの両方の罰則が科される可能性があります。
まとめ
海外に比べて、日本は外国人の受け入れに消極的でした。
しかし、人口減少が始まり、将来生産人口も減っていくことが予想される日本では、今後は今まで以上に、外国人の労働者を受け入れることになってくることでしょう。