日本のグローバル化に伴い、大学や専門学校、日本語学校等で学ぶために多くの留学生が海外から来日しています。
しかし、貯金や自国からの仕送りのみで生活していくのは大変です。

そこで多くの留学生はアルバイトをしながら勉学に励んでいます。
しかし外国人留学生が日本でアルバイトを行う際には気を付けなければならない点がいくつかあります。

今回は外国人留学生のアルバイトについて解説していきます。

 

アルバイトをするための確認事項や準備とは?

留学生側の確認事項や準備

留学生の在留資格は「留学」です。
この在留資格では就労は認められていません。
アルバイトをするためには「資格外活動許可」の取得をしましょう。

またアルバイトを探す際には職種にも注意しましょう。
後述しますが、アルバイトには「やってはいけない仕事」もあります。

雇用側の確認事項や準備

外国人留学生を雇用する際には必ず本人が上記の「資格外活動許可」を得ているか、について確認するようにしてください。
「資格外活動許可」を得ている場合、留学生が所持している在留カードの裏面に許可の内容が記載されています。
出入国在留管理庁のホームページ上で記載例が確認できますので参考にしてください。(出入国在留管理庁 : 「在留カード」はどういうカード?


外国人留学生にも各種労働法が適用されます。
最低賃金以下で労働させないよう注意してください。

また残業も可能ですが、留学生は1週間にアルバイトできる時間数が決まっており、その時間数には残業時間も含みますので時間の管理には注意が必要です。

 

資格外活動許可とは

在留資格以外の活動を許可してください、と申請を行うのが「資格外活動許可申請」です。

留学生の在留資格は「留学」であり、この在留資格での就労は認められていないことは既述の通りです。
そのため「留学」という資格で認められていない「アルバイト」という就労活動を許可してください、と出入国在留管理局に申請を出すのです。


申請時には「申請書」在留カード、パスポート、必要に応じてどのような資格外活動を行うかを証明できる書類等を持参して留学生がお住まいの地域を管轄する地方出入国在留管理局に申請します。
申請書は法務省のホームページからダウンロードすることができます。(法務省 : 資格外活動許可申請

申請書は留学生の方が使用する書式と他の在留資格を有している方が使用する書式が違います。
使用する申請書書式を間違えないよう注意しましょう。
許可には申請から短くて2週間、長いと2ヶ月程度かかります。余裕をもって申請するようにしましょう。

 

留学生の就労時間について

留学生の方は日本の大学や専門学校等で勉強するために来日したのであってアルバイトのためではありません。
アルバイトばかりやっていて勉学が疎かにならないよう、留学生の就労時間には「原則1週に28時間以内であること」という制限がかけられています。

この「1週」というのはいつからいつまでを言うのでしょうか。
この点につき出入国在留管理局では平成29年に見解を出しており、「どの曜日から1週を起算した場合でも常に1週について28時間以内である必要がある」としています。

シフトを組んで留学生にアルバイトに来てもらう場合もあると思いますが、このあたりを考慮しながらシフトを組むと良いでしょう。


とは言え、雇用側としては忙しい時にはなるべく出勤してもらえるとありがたいですよね。
実は1週28時間以上働ける場合もあります。
それは夏休みや冬休み等の学校が定める長期休暇中なのですが、休暇中は1日8時間までのアルバイトが認められています。

しかし8時間×7日間=56時間ではなく、上限は1週40時間となりますので、注意しましょう。

また、就労時間の上限はアルバイト先ごとに決められるのではなく、留学生1人についての合計就労時間ですので、留学生がもし他の場所でもアルバイトをしていた場合、合計すると就労制限時間を超過してしまう可能性があります。

雇用側は外国人留学生がアルバイトを掛け持ちしているかどうか確認しておくことをお勧めします。
また休学中においては、たとえ資格外活動許可を取得していてもアルバイトはできませんので、注意してください。

 

留学生におすすめのアルバイトとは?

資格外活動許可を取得してアルバイトを探す場合、どのような職種でアルバイトをするのが良いのでしょうか。

おすすめのアルバイト

コンビニエンスストア

アルバイトの定番と言えるかもしれません。
18歳以上であれば深夜や早朝など時給が高い時間帯に働けば短時間でもある程度の収入になるでしょう。

工場やスーパーのバックヤードでの軽作業

荷物をパック詰めや段ボール詰めにする軽作業であれば日本語があまり得意ではない留学生の方でも就労可能です。

レストランや居酒屋のホールやホテル等

お客さんからの注文を聞き取れる日本語力があれば飲食店のホール業務も良いでしょう。
日本語も上達しますし、まかない付きのバイト先であれば食費も浮くかもしれません。

また自国の外国人観光客が多い地区であればホテルの受付業務もおすすめです。
言葉が分かると重宝されるでしょう。

事務スタッフや家庭教師等

パソコンが使えるのであれば企業で事務員としての勤務も可能でしょう。
また外国語を教える語学教師や家庭教師としてのアルバイトも良いですね。
時給が高いうえに日本人との接触が多く日本語を覚えることもできますし、外国の言葉が話せるという留学生としての強みを十分生かせるアルバイトと言えます。

やってはいけないアルバイト

資格外活動許可を取得しているからと言ってアルバイトが何でもできるというわけではありません。

留学生は「風俗営業等の規則及び業務の適正化等に関する法律(以下「風営法」という)第2条第1項にいう「風俗営業」に該当する業種ではアルバイトができません。

具体的には性風俗店、パチンコ店、ゲームセンター、バーやキャバレー等が該当します。
例え客の接待を担当していなくてもこのようなお店では働くことができないので、皿洗いや清掃業務のみであっても禁止です。アルバイト先を探す際には注意しましょう。

 

法令違反をしたときのペナルティとは?

そもそも雇用している留学生が資格外活動許可を取得していなかったり、他でもアルバイトをしていて制限時間を超過してしまったりした場合、留学生本人のみならず不法就労助長罪として雇用者側にも3年以下の懲役若しくは禁錮若しくは300万円以下の罰金というペナルティが課せられるので十分注意してください。

留学生本人については留学の在留資格について期間更新が出来ない、学校を卒業して就労ビザに変更しようとしても認められないばかりではなく、在留資格の取消処分をうけ自国に帰国しないといけない状況になる可能性もあります。

最悪の場合、退去強制(強制送還)となり帰国すると今後5年間は来日することができなくなってしまいます。

少しくらいなら大丈夫、という軽い気持ちで長時間就労させたり、必要な確認を怠ったりして働く資格のない留学生を雇用してしまったりすると留学生本人のみならず雇用主側にとっても取り返しのつかないことになるかもしれません。十分気を付けましょう。

 

留学生を雇用する際の流れについて

留学生をアルバイトとして雇用する場合、基本的には日本人のアルバイトを雇用する場合と同じです。

留学生にも日本人アルバイトと同様、日本の労働法が適用されますのでそれに準じて手続きを行うようにします。労働契約の締結も忘れないようにしましょう。


しかし留学生をアルバイトとして雇用した場合の特別な手続きとして最寄りのハローワークへ「外国人雇用状況の届出」があります。

すべての事業者は外国人労働者を雇い入れたとき、またはその外国人が離職をしたときに、該当する外国人の氏名、在留資格等の必要事項をハローワークへ届出することが義務付けられています。

この届出を怠ったり、虚偽の届出を行ったりした場合には30万円以下の罰金が科せられますので、必ず行うようにしてください。

届出はハローワークの窓口でも行うことができますし、インターネットから行うことも可能です。
厚生労働省のホームページに届出の概要や届出事項の様式についての解説が掲載されていますので、参考にしてください。
(厚生労働省 : 「外国人雇用状況の届出」は、全ての事業主の義務であり、外国人の雇入れの場合はもちろん、離職の際にも必要です!

 

社会保険はどうなるのか

採用時から退職時までの手続きは日本人アルバイトを雇用したときと基本的には同じであることは解説しましたが、社会保険はどうなるのでしょうか。

健康保険や厚生年金

まず健康保険や厚生年金ですが、1週間の所定労働時間が40時間の事業所の場合に加入義務があります。
しかし、1週28時間以内の労働しか認められていない留学生は要件を満たさないため加入対象外となります。

雇用保険

雇用保険ですが、「昼間学生」に該当する留学生は加入対象外となります。
しかし、労災保険については留学生も「労働者」に該当するため保険加入の対象となりますので、注意してください。

 

面接や採用時の注意点

アルバイトの面接の際には必ず在留カードを確認することが大切です。
在留資格、在留期限や資格外活動許可の有無についてしっかり確認してください。

他にも面接時にはパスポートや学生証も持参してもらい確認してください。
また面接時には日本語の能力や他にアルバイトを掛け持ちしていないか、などを確認することをおすすめします。
自社で雇用した際に任せたい仕事が出来るのか、どれくらいの時間であれば勤務可能なのかの判断材料となるからです。

雇用する側からも任せたい業務の説明や労働条件をきちんと説明しておきましょう。
入社後のミスマッチを防ぐためにも留学生に提示する書面には平易な日本語を使用する、漢字にはフリガナをふるなどの配慮をしておくと良いでしょう。

 

まとめ

人手不足で求人を出してもなかなか応募がないと嘆いている事業者も多いと思います。

様々な制約はあるものの、法令や届出義務をきちんと守って雇用すれば、留学生は人手不足に悩む事業者の強い味方になってくれるかもしれません。

留学生の有効な労働力を積極的に利用し、事業の活性化を目指していくのも良いかもしれません。